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ベル・クライフの成り上がり  作者: エイト
ベル~奴隷編~
22/24

記憶


「レッドベアって言ったらたしかAランクのモンスターだったよな。」


バジルがアレンに問う。


「そうだよ。レッドベアは基本的にはブラッドベアっていうモンスターの仲間なんだけど、こいつは口から炎を吐くんだ。しかも普通のよりも身体能力も上がっていてね。正直さっきのサーベルタイガーよりもたちが悪い。」


アレンがレッドベアの説明をしているが、俺の耳には届くことはない。

俺は頭に感じる痛みに苦しんでいた。


いたい。頭の中に何かがいるような感じがする。


「ぐあああ・・・ああ・・・。はぁ。はぁ。」


俺が急に苦しみ始めたのを気にしてアレンが俺に話しかけてくる。


「ベル君。大丈夫かい。もしかしてさっきの戦いでどこか怪我したのか?」


しかし俺には応える余裕がない。


頭の中が真っ白になっていく。



するといきなりどこかの草原に俺は立っていた。

どこかはわからないがなぜか見覚えのある家が丘の上に立っている。


ここはどこだ。


家の中から二人のおそらく夫婦であろう人達が出てきた。

黒髪の男性と金髪の女性だ。


なんでだろう。

合ったことないのに胸が変な気持ちでいっぱいになるようだ。


女性は赤ちゃんを抱いてあやしている。

俺は二人に近づいて話しかける。

しかし返事はない。

というか聞こえてすらいないように見える。

家の中からもう一人少女が出てきた。

三人で何か話しながら抱いている赤ちゃんを見て微笑んでいる。

なぜか胸がいっぱいで涙があふれ出してきた。



すると急に景色が変わった。

次に現れたのは5歳くらいの子供が道場らしきところでさっき見た黒髪の男性と向き合っている。どうやらこれから試合でもするようだ。


あんな小さな子がそんなことして大丈夫か。

怪我でもしたら大変だぞ。


しかし俺の考えを裏切って少年は男性相手に善戦した。

とても子供の動きとは思えない。

その少年は男性に褒められてうれしそうにしている。


また先ほどと同様に景色が急に変わる。


こんどはどこかの小道のようなところだな。


道の真ん中で子供たちが一人の女の子をいじめている。


助けてあげたいけどどうしようもできない。くそっ。


すると道の向こうから先ほど道場で見た少年がこっちに歩いてきた。

彼は一瞬彼女の方を見たがすぐに通り過ぎてしまう。


こいつ強いくせになんで助けない。最低なやつだな。


するとその少年は急に立ち止まる。

少し立ち止まって何かつぶやいていたかと思うとすぐに振り返って少女のところへ向かっていく。

少年はいじめていた子供たちと何か話していたが、急に子供たちは青い顔になり走ってい逃げていった。

少年は少女を助けて回復魔法をかけてあげていた。


俺と違ってあの歳で回復魔法を使えるのか。

しかも剣もあそこまで使えるなんて絶対に将来が楽しみだな。


また景色が変わっていく。

次はどこか森のようなところだった。

さっき見た少年が森の中で熊と対峙していた。


あれは…レッドベア!!

少年の勝てる相手ではない。


少年は魔法を放ちながら戦闘を有利に進めていく。

目の前で繰り広げられている戦いに目を見張る。

少年はその後大技らしきものを一発レッドベアに決めて仕留める。


なんて威力だ。

でもこの光景も見たことがあるのはなぜだろう。

どうしても思い出すことができない。


再び景色が変わる。

次は少年ががたいのいいおっさんに小屋まで連れていかれる。

そこでおっさんは布で包まれたものを少年の前に置き布を取り去る。

出てきたのは年端もいかない少女の血まみれの首だった。

気持ち悪くなり吐きそうになる。

少年は壊れたように泣き叫んでいる。

頭の痛みが出てきた。

少しずつこの状況が鮮明になってくる。


これは・・・もしかして俺の記憶なのか。


最初そんな気はしていたがそんなことありえないと自分の中で否定していた。

しかしこの光景に見覚えがある以上そう考えるしかありえない。

ただわからないことはどうして俺はこの目線でみえているかということだ。


するとまた景色が変わる。

今度はあたり一面真っ白な空間にいた。

目の前にひげを蓄えた爺さんがいる。


「やっと来たか。随分と時間がかかってしまったのう。わしはゼウスという。地球の神様じゃ。」


「ちきゅう?」


「そうじゃ。本当に何も覚えておらんとわの。あの時わしの力を与えといてよかったわい。」


「あの時っていつのことだ。というかここはどこだ。」


「そうじゃのう。まぁ思い出してもらう方が手っ取り早いかの。」


爺さんはそういうと俺に近づいて頭に手を置いた。

手が青に光りだす。

俺の頭の中に走馬灯のように今までの記憶が再生されていく。


そうか。俺は…。


全てを思い出した。

首にぶら下げているペンダントの裏を見る。

読める。


俺は子供のころ優人兄ちゃんに助けてもらったんだ。

でもあの後奴隷として捕まったんだ。

そうだ。そうだった。

くそっ。なんで俺はこんな重要なことを今まで忘れていたんだ。


「それは仕方ないじゃろ。それよりはよ戻らんとおぬしはなかなかやばい状況にいるぞ。」


忘れていた。

俺は今クルルを助けるためにモンスターと戦っていたんだ。

でも俺が今から言っても役に立つだろうか。


ふとそんなことを考える。


「なにを言うておる。おぬしは今子供のころの記憶と青井優人の記憶この両方を思い出したんじゃぞ。一度倒した相手じゃ。十分勝てるじゃろう。それに今のおぬしはわしの力でありえない量の魔力を保有しておる。さぁいくのじゃ。」


爺さんに勇気づけられる。

そうだ。あのとき兄ちゃんは6歳で勝ったんだ。

いける。やってやる。


そう覚悟を決めると白い世界が崩壊していく。


「そうじゃ、君に伝えておきたいことがある。君の家族は全員まだ生きておる。

あの少女の首は偽物じゃ。この世界のどこかで生きている。もし会いたいのじゃったら頑張って探すのじゃな。しかし優人の小僧は事由に生きろと言っておった。まぁおぬしの人生だ。好きに生きるといい。」


「ずいぶんドライな神様だな。」


「仕方なかろう。本来ならこっちの世界に介入すら許されないんじゃからな。必死で生きるんじゃぞ。」


その言葉を最後に神様も消えてしまった。







気が付くと目の前に地面が見える。

どうやら気を失っていたようだ。

顔を上げて状況を把握する。

するとアレンとバジルが全身傷だらけ、やけどだらけになりながらレッドボアと戦っていた。戦況はどう見てもアレンたちの方が悪い。

メイビルが高笑いしながら戦いを見ている。

体を起こし近くに落ちていた剣をとる。


「ベル!」


クルルが俺に気付いて叫ぶ。

その声を聴いてアレンとバジルもこっちを見てくる。

俺は足に魔力を纏う。

記憶を取り戻したことで魔法もしっかり使えるようになっている。

しかも兄ちゃん記憶もあるためいろんな魔法を頭に思い浮かべるができる。

足を魔力で強化したことでありえない速度でレッドベアにむかっていく。

一気にレッドベアの下まで行くと顔めがけて『ファイヤーボール』を放つ。

レッドベアは顔に攻撃をくらったことで俺から顔をそらす。

その隙に全身に魔力を纏うと攻撃を放つ。


『四の型・驟雨』


剣が6個に増え、そのままレッドベアの腹に突きが刺さる。

レッドベアの腹に大きな円の形の穴ができた。

そのまま倒れるレッドベア。


この場にいる全員がいきなりの展開に驚いている。

俺は強化した状態のままメイビルの後ろに行くと呪いが発動する前に心臓に剣を突き刺す。


「ぐはっ。」


メイビルは血を吹き出し倒れる。

近くにいたクルルを縛っている縄を切る。

するとクルルは俺に抱き付いてきた。


「ありがとうベル君。無事でよかった。」


泣きながらそういう彼女をしっかり抱きしめる。


「遅くなってごめんね。心配かけちゃったなぁ。」



アレンとバジルが二人でこっちにやってくる。


「おい、ベル。お前いつから魔法を使えるようになったんだ。使えるなら最初の奴もそれで倒してくれればよかったのに。」


「僕にまで魔法を使えることを隠していたのはどういうことだい。そんなに僕のことが信用ならなかったのかな。」


アレンは笑いながらそう言い近寄ってくる。

感動のシーンなのに空気の読めないやつだ。


「さっき記憶が戻ったんだ。それで魔法を使えることを思い出してな。別に隠していたわけじゃないんだよ。」


そういうと三人が驚いた顔になった。


「ようやく戻ったんだね。よかったじゃないか。」


アレンが自分のことのように喜びながらそういう。


「ああ、長かったけどようやく全部思い出したよ。さっきは急に倒れてしまって悪かったな。」


「いや大丈夫だよ。それよりもあんなに強かったとはね。驚いたよ。」


アレンに褒められて少し照れてしまう。

クルルもそろそろ落ち着いてきたようなので離してもらう。





そしてその後みんなでこれからのことを話し合う。


「これからどうなるんだろうな。俺がメイビルを殺したから奴隷の所有権がなくなって俺たちは自由だ。これからどうするかな。」


「とりあえずここから離れたほうがいいだろうね。彼の手下に見つかると厄介だろうし。」


「そうだな。確かここからかなり離れたところヘルンっていうにでかい街があったと思う。とりあえずそこまで行くか。」


バジルの言葉に全員がうなずく。


四人はヘルン目指して暗闇の中に走って行った。



遅くなってすみません・・・。

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