主と仲間
翌朝の早朝、俺とアレンはクルルをどうするか話し合っていた。
「とりあえず今回から僕が牢屋に入ることにするよ。
あそこにはトラウマがあるからあまり行きたくはなかったけどね。」
「悪いな。今回ばかりはアレンに任せるわ。」
今日からアレンが牢屋に入ることで話がついた。
起床時間になったのでみんなが起き始めた。
朝飯の配給に並んでいるとクルルが俺を見つけて走ってくる。
「おはようございます、ベルさん。」
「あ、ああ。おはよう、クルル。」
朝からハイテンションなクルルに若干引きながら挨拶を返す。
その後はクルルに付きまとわれていた以外特に何も起こらずに過ぎていった。
その日の夜、奴隷たちにとって月に一回のギャンブル勝負が開かれていた。
俺とアレンも参加している。
月に一度奴隷たちのモチベーションを維持させるために主が考えたらしい。
俺が参加しているのはポーカーだ。
ポーカーは5枚の手札を交換して役を作るゲームだ。
ここでは2回までの交換が許されている。
俺の手持ちには4のカードが4枚ある。いわゆる4カードだ。
恐らく勝てるだろう。
すると隣に座っていた男がいきなり話し始めた。
「みんな知ってるか?今度俺たちのご主人様がここの視察に来るらしいぞ。」
この場では賭け事と同時に情報の共有も行われているのでみんなたとえ独り言でもしっかり聞いている。
「俺もその噂聞いたぞ。確か三日後だったような……。」
向かいに座っている奴がそう言った。
三日後か…。
それまでに脱出は難しいか。
これはもう一回アレンと話し合って計画を立て直さないといけないな。
「そろそろ決めるぞ。全員カードを見せろ。俺は2ペアだ。」
「3カード。」
「ノーペア。」
「4カード。」
「「「「「おおおおおお。」」」」」
勝負は俺の勝ちだった。見物していた人から拍手と歓声が上がる。
この勝負の報酬は食事が多くなることだ。
ここの飯は少ないからこれで腹一杯食えるな。
その後も賭けを楽しみながら情報を集めた。
次の日の朝、今日も昨日に続いて話し合いをしていた。
「これは主様が帰ってからの方が安全かもしれないね。」
「ああ。さすがに主様が来る前に逃げたらすぐに手配されるだろうからな。」
「そうだね。まぁ、ほとんど穴は完成してるからあとはタイミングの問題だよ。今回はタイミングが悪かっただけ。」
「よし。じゃあ今日から目をつけられないように必死で働くかな。」
「君が必死で働くのは似合ってないね。」
「うるせぇ。」
結局、脱出は1週間後ということになった。
それから3日間俺とアレンはまじめに働いた。
そして3日が経った。
今日は主様が来る日だ。
飯を食べ終わると俺たちは採掘場の入口に向き合うように並べさせられた。
すると大きな馬が馬車をひいてやってきた。その馬車が止まると一人の男が出てきた。その男はすらっとした体格で髪を横に流し紳士のような雰囲気を纏っていた。
「おはよう。私があなたたちの主のメイビル・エル・スティンガーって言うの。よろしくね。さて、挨拶はこのくらいにして全員持ち場に行きなさい。無能なやつと無駄な時間が私は嫌いなの。」
全員が散らばるように持ち場に戻っていく。
あいつなんか気持ち悪いな。
あのしゃべり方といいなんかむかつくわ。
俺ももちろん自分の担当のところに行く。
それから特に何事も起こらず昼飯の時間になった。
俺を見つけたアレンが話しかけてくる。
「ベル、主様はどうだった?」
「どうって言われてもな。しゃべり方は気持ち悪かったけど、朝の時以外はじっと俺たちのことを見ているだけだったからな。何とも言えないな。」
「確かにね。僕のとこにも来たけどベルのとこと同じで特に何も言ってこなかったよ。もしかしたらそんなに怖い人じゃないのかもしれないね。」
そこへバジルが話に入ってきた。
「そんなわけないだろ。あの人のうわさを聞いたことがないのか。これだから田舎もんは。」
俺たちを見下したように見ながら近くにあった椅子を持ってきて近くに座る。
「噂?どんな噂が流れてるんだい、バジル?」
アレンはバジルの言い方を特に気にした様子もなく質問する。
バジルはそんなアレンが気に入らないのか舌打ちしながら答える。
「ちっ。あの人はここら辺一帯の統治をまかされている人でな、あの人に嫌われると奴隷になるまで絶対に許してもらえないらしい。10年以上前だがあの人に逆らった貴族が家族全員、斬首刑に処せられたなんてこともあったな。」
「さすがにそれは言いすぎだろ。そんなこと許されるわけないだろ。どっかの王様でもないのに。」
「あの人は王国に賄賂を流しているらしいぞ。だからあの人は絶対につかまらないんだ。それに俺はあいつのせいで奴隷にさせられたしな・・・。」
「どういうことだ?」
「おっと、話がそれたな。まぁあの人には絶対に逆らわない方がいいってことだな。さて俺は仕事再開までひと眠りするかな。」
バジルはそういうとさっさとどっかに行ってしまった。
その噂がもし本当なら関わったらめんどくさそうなことになりそうだな。
「よし、アレン。主様には基本的には関わらないようにしよう。」
「その方がよさそうだね。」
すると看守が仕事の合図を告げにやってきた。
みんな、その合図を聞いて仕事に戻る。
仕事が再開して大体三時間ほどたったころだった。
いきなり荷車が倒れる音が採掘所内に広がった。
音がした方を見るとクルルが荷車を倒してしまいあたふたしているのが見えた。最悪なことに、倒した場所が主の目の前だった。
おいおい、これはまずいだろ。
主様は看守に何かを告げている。
すると何人かの看守が走ってやってきてクルルに暴行を始めた。
泣きながら殴られるクルル。
周りの人は誰も助けようとしない。
俺ももちろん見て見ぬふりをしている。
関わるな。あいつに関わったら俺とアレンの計画が狂ってしまう。
しかし俺の脚は自分の意志とは逆にクルルに向かって走っていた。
「助けてください!ベルさん!」
彼女の叫び声が聞こえたとき俺は看守に殴り掛かっていた。
クルルを殴っていた看守たちを次々と倒していく。
毎日の筋トレが役に立ったな。
しかし、急に体が燃えるように熱くなる。
どうやら奴隷の紋章が発動したようだ。
体の痛みで動けなくなる。そこから俺とクルルは殴られ続けた。
俺が目を覚ますとそこは見慣れた牢屋の中だった。
周りを見渡すが俺しかいない。動こうとすると手枷がしてあり、自由に動くことができない。
俺はいったいどうなったんだ。クルルは無事なのか。
そんなことを考えているとこちらに向かってくる足音が2つ聞こえた。
牢屋の前に2人の男が立つ。
「助けに来たよ、ベル。」
見るとアレンとバジルが牢屋の扉を開けて入ってきた。
鍵を外しながら今の状況を教えてくれる。
「心配したよ。看守に殴り掛かったって聞いたからね。とにかく無事でよかったよ。
君はあの後殴られすぎて気絶したんだ。その後ここに連れてこられて今に至るというわけさ。」
「クルルはどうなった?」
「クルルちゃんは主様に連れていかれたよ。残念だけどその後のことはわかってない。」
「そんな……。」
クルルを助けられなかったことで、自分に対して怒りがこみあげてくる。
そこであることに気付いた。
「どうしてお前たちはここに来たんだ?こんなことしたらただじゃすまないだろ。」
俺そう聞くとアレンは少し微笑みながら答えた。
「確かにそうだね。でも僕たちがここに来た理由はベルもうすうす気づいてるんじゃないかな?おそらく君の考えていることで正解だよ。」
俺が今考えていること。それはクルルをどうにかして助けることだった。
つまり2人はクルルを助けるのを手伝ってくれるということだ。
「二人ともクルルを助けるのを手伝ってくれるってことか?」
「そういうことだね。」
俺はこの一言でかなり力をもらった。
信頼できる仲間がいるっていうのはいいことだな。
すると今まで黙っていたバジルがいきなり声を上げた。
「別にお前のためにやってるんじゃないからな。
勘違いするんじゃねーぞ。俺はクルルちゃんのためにやるだけだ。
勘違いするなよ。大事なことだから2回言ったんだぞ」
この言葉に俺とアレンは顔を見合わせた後二人して笑った。
バジルが顔を真っ赤にしながら怒鳴ってくる。
俺はこの時仲間の大切さを知ったような気がした。
感想など受け付けてますのでよかったら書いてくれるとうれしいです。
もちろん辛辣なコメントでも大丈夫です。




