お別れ(中編)
『兄ちゃん、なんか考えがあるの?』
『あぁ。さすがに今回は魔力切れになるわけ行かないからな。策にはめて効率よく倒そうと思う。』
『そっか。じゃあ兄ちゃんに任せるね。』
『任せてくれ。』
そして待つこと約30秒で山賊たちは追いついてきた。
相手は10人いた。俺の前を囲むように立つ。一人の男が話しかけてきた。
「おいガキ。お前一人か。他にもいただろ。どこ行った。」
「さぁね。自分で探せば。」
男は俺の発言にイラッとしたみたいで顔をひきつらせている。
「威勢のいいガキじゃねーか。お前みたいなやつ嫌いじゃないぜ。」
さて、まずはその余裕そうな態度を改めさせてやるか。
「俺はお前みたいによくしゃべるおっさんは嫌いだぜ。」
山賊の隊長らしき男の顔が一気に赤くなった。相当頭に来ているようだ。そこに畳みかけるように言い放つ。
「さっきから顔芸してるみたいだけど、それおもしろくないからな。やるならもっと本格的にやらないと今の世界、顔芸だけじゃ食っていけないぞ。えっ?顔芸じゃないって。これが本来の顔だって。そんな・・・。なんかごめんな。」
山賊に意図が伝わったみたいで一気に表情が恐ろしくなる。
「てめぇら、こいつを殺しちまえ!」
山賊の声が森中に響いた。手下がその命令を聞いて俺に向かい走ってくる。
最初に駈け出してきたのは二人の手下だ。二人は「こいつは俺の獲物だ。」とながら走ってくる。しかし、俺と1メートルくらいの距離に近づいた時だった。
バキバキッ!
そんな音が聞こえると急に大きな穴が二人の前に現れて二人は落ちていった。
これは俺が先頭前に仕掛けていたものだ。魔法で深さ10メートルくらいの穴を掘ると底に土のとげを作り、表面を薄い土で覆い人間くらいの重さのものが乗ったら壊れて穴に落ちるという仕掛けにしていた。落とし穴の中を確認すると落ちていった二人は串刺しになって息絶えていた。
山賊どもは俺がこれを仕掛けたのだと直感で悟り、急に距離をあけた。
「なるほど。俺を挑発して落とし穴に落とす作戦だったのか。油断ならねぇガキだな。おいてめぇら。絶対になめてかかるんじゃないぞ。こいつは魔法を使えるみたいだからな。」
隊長のおっさんが冷静になっていた。
考えていた作戦は半分成功って感じかな。相手はあと8人か。よし、次の作戦に移るか。
俺はすぐに魔法で土の階段を作ると木の上に上り、山賊たちを上から見下ろす。
山賊たちは警戒しているようで木を登ってこなかった。
しかし、一人が弓を取り出し矢を放とうとしていた。そんなことお構いなしに山賊たちを囲むように土で四角い箱を作る。8人全員がその土の箱に包まれている。
「なんだこれは?これは土か?おい、てめぇ。正々堂々と勝負しろ。
あれ?おい。なんか臭くないか?」
山賊のくせに何言ってるんだか。いやセバスさんが騎士が変装してるって言ってたからこういうのに慣れてないのかもしれないな。
あっ。その変なにおいは君たちの足元に俺が火をつけたせいだね。
もちろん草に火をつけた程度なので人を焼き殺すことはできない。しかも土の箱の中を俺は見入ることできないのでその中に魔法を発動させることはできない。どうやら酸素がなくなり始め火が消え始めている。
このタイミングだな。
土の壁の上部分の半分くらいを崩れ落とした。
土の塊が山賊たちを襲う。そして火が付いた状態で密閉され、中の空気がなくなった空間に急に酸素が入っていく。そのため山賊の足元で消えかけていた火が一瞬で土の箱いっぱいに広がった。
「なんて言ったっけな。え~と。そうだ、バックドラフト現象だ。前テレビで見たのを覚えててよかった~。」
『兄ちゃんすごいよ!』
煙を上げながら、山賊たちを焼き尽くしていく炎。
ん?煙を上げながら・・・。って、やばい。俺がここにいるって知らせるようなものじゃないか!
俺はそのまま奥へ走っていこうとした。その時、横から剣がふり下ろされる。
その瞬間に俺はベルと意識が交代し、ベルの反射神経によってなんとか剣をよける。しかし、その後横腹を蹴られベルは吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。再び俺とベルは代わると、回復魔法で横腹を直しながら状況把握に努める。するとさっきの隊長のおっさんが全身に魔法を纏いながらこっちに向かってきていた。すぐさま『バースモード』に入る。と近くにあった。山賊の剣を相手の攻撃を受け止める。
「なんだ、お前、剣術は全然じゃないか。話では剣もなかなか使うって聞いてたんだがな。」
なんでそのことを?レイナさんか。たぶんあの人が俺のことも伝えていたんだな。やってくれるぜ、あの女狐が。
俺たちは剣で数回戦ったが、しょせん素人の剣術なのですぐに俺の方の分が悪くなる。
『兄ちゃん剣術なら僕が代わりに戦うよ。』
『でも相手は身体強化してるぞ。いけるか?』
『やるしかないでしょ。まかせて。』
俺とベルの人格が入れ替わる。
何とベルは騎士団の部隊長レベルの男と互角に戦い始めた。
相手が剣を振り下ろすのをベルはギリギリで見切ると、振り下ろした手を狙って切りかかる。ただ、相手も一筋縄ではいかず横から切りかかってくるベルの顔面に頭突きをくらわせる。そしてベルがふらついているところに追撃を仕掛ける。ベルは、すぐに体勢を立て直し、迫ってきている相手の鎧をつかみ、力を利用しながら投げ飛ばす。しかし、相手は受け身をとってすぐに間合いを開ける。
「おい。さっきと動きがまるで違うじゃねえか。それも魔法のおかげか?」
「教えるわけないだろ。」
俺はベルの強さに純粋に驚いていた。こいつこんな強かったんだな。
2人はお互いに出方をうかがっている。
どちらも何かを待ってるかのように全く動かず向き合ってる。その時、さっきの火からバチッと音がなった。
それが合図かのように二人が距離を詰める。
敵は渾身の突きを放ってくる。ベルはそれを躱す。相手の突きがベルの顔の横を通り過ぎる。頬が少し切れて血が出る。しかし、ベルは気にせず相手の腕を狙う。
ブシュッ!
鮮血が相手の腕から勢いよく流れ出る。ベルが相手の腕を切り落とした。
「くそったれが!」
相手のおっさんは足で砂をすくいベルの目にかける。
「うわっ!」
ベルは相手の土が両目に入り、相手が見えていない。
敵は残っている手で剣を拾うとベルに切りかかる。
ベルは気づいていない。というか見えてもいない。相手のことを見えるのは意識の中で見ていた俺だけだ。俺はすぐにベルと入れ替わる。もちろん入れ替わると俺も目が見えないが、おそらく相手は俺を殺そうと一直線にやってくるだろう。相手がいたほうを思い浮かべそっちの方に特大の範囲魔法を発動させる。
『サンダーストーム』
風と雷の複合魔法だ。雷を纏った竜巻が相手に襲い掛かる。
「なんだと。ここで魔法か!くそが!グハッ!」
どうやら相手は攻撃をくらって吹き飛ばされたようだ。
複合魔法は魔力を多大に消費するため前のように、俺は意識を失っていく。
今日中に終わらせたいです。




