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マレビト来たりて 前編  作者: 安積
間章2
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真昼のお茶会

 学校に通い始めて暫く経ち、ようやく休日を寝て過ごさなくても済む位に慣れた頃、ギルドにある依頼が寄せられた。


「私に指名の依頼、ですか?」


「そ。しかも流石にこれには断っても良い、とは私からは言いにくいわね。」


「拒否不可ということは、ギルド(ここ)からの依頼でもなく、バルドゥク家からの依頼でもない、と?」


 拒否不可の依頼なんて滅多にあるものじゃない。ギルドは常に中立で公平であり、依頼者と受諾者は対等である、というのが建前だ。あくまで建前でしかないが、有名無実というほどではなく、それなりに効力を持つ建前であり、例外とみなされることはほとんどない。だから基本的に、指名された仕事でも請けるか請けないかを決めるのは当人の裁量に任される。それでもたまにはどうしても断れない仕事というのも発生するわけだけれど、そういうのは例えば街が危機に瀕している、とかそれを請けないことで多大の損害が発生すると予想される場合などだと言われている。だが、当然のことながらそういうのは熟練者(ベテラン)向けの依頼であって、私みたいなヒヨコどころかまだ卵といっても過言じゃないような新米に来るような話ではない。


「そういうこと。ヴァシーもフェクトに手がかからなくなったお陰で最近は依頼に来ないしね。うちも今はそんなに忙しくないし。」


「私が今までしてきた仕事って、家事手伝いが主だと思うんですが。どうして拒否不可、なんてことに? 通常そんな依頼、私みたいな新米に来たりしませんよね?」


「そうね、普通はそんな依頼来るわけないわ。 でも、貴女だから。」


「……マレビトだから、というわけですか?」


 実際マレビト見たさに私に指名の依頼が来ることはよくあるが、というか多分今も何枚か依頼書が来ているはずだ。だが、そういう興味半分の依頼に関してはギルドは請ける必要がないと言ってくれているし、私も受けるつもりはなかったから請けたことはない。なのに、今回に限りどうしてだろうと聞いてみれば、クレオさんはため息をつきつつ心底呆れた顔でその依頼書を差し出した。


「――説明するより見て貰った方が早いわ。どちらにせよ拒否はほぼ不可だから見て頂戴。」


 渡されたのは、何の変哲もない依頼書。ちょっとばかり紙の質が良いような気がするけれど……紙の一番下にある見知った名前のサインに頭を抱えたくなった。


「アカシェからの依頼、ですか。」


「内容は書いて有るとおり簡単な荷運びよ。これを依頼した当人に届けて欲しいって。」


 これ、とクレオさんが示したのは綺麗に包装された、掌サイズの小さな包みだ。


「報酬は破格の金貨一枚。今日から三日間、毎日昼までに届けて欲しいって。」


「……は!? 金貨? 銅貨どころか銀貨でもなく?」


 銀貨でさえ普通の生活の中で見かけることはないというのに、あろう事か金貨とは。


 通常一食にかかる金額が半銅貨一、二枚、つまり六~十二ベクといったところ。たとえるなら半銅貨一枚ならファーストフード店の安めのセット、二枚ならファミレスとかラーメン屋で一食、といった感じだろうか。大分物価にバラつきがあるから確かなことは言えないけれど、半銅貨一枚は五百円くらいに例えても良いかも知れない。

 そして、金貨一枚、一ユナの貨幣価値はそんな半銅貨の凡そ六百倍弱。単純計算するだけでも日本円にして約三十万円の報酬という事だ。たった三日、しかも仕事は簡単な荷物運びで、この金額だ。これを破格といわずしてなんといおうか。


「ごめんなさい、アトル。流石にギルドも離宮からの、しかも殿下御自らの依頼を断るのは分が悪いのよ。」


 殊勝なことを口にしながらも、クレオさんの視線は遠い。幾分げんなりした様子を見ると、彼女も神官長と同じく彼の人の被害に遭ったことがあるのかもしれない。


「……仕方ないんで、お請けします。」


 私も溜息をつきたくなるような気分で、そう告げた。




 ギルドから離宮までは私の足では、恐らく1時間弱程度だろう。歩いて行っても良いのだが、面倒なのと時間を考えると昼までに届けるには徒歩では間に合わない可能性もあったので、乗合馬車を利用することにした。神殿を中心にして、神宮大路と神殿大路で区切られた4区間をそれぞれ周回している、まあ日本で言うところの路線バスみたいなものだ。

 馬車とは言っても地球の馬とはどこか違った――例えば、麒麟のように脚に鱗があったり、蹄が偶蹄類のものだったり、角が生えていたりと様々だ――馬のような生き物や、大型の鳥類――ダチョウや絶滅した大型鳥類、恐鳥モアにも近いといえば近いが、首は細くはなく、全体的にはどちらかと言えば某RPGのチ○コボのようなかなりがっしりとした体格の鳥だ――などが車を引いており、それらを総称して馬車と呼んでいる。 街中に幾つかの停留所があるほか、呼び止めればどこでも止まって乗せてくれるし降ろしてくれる。まあ、その分スピードは遅いのだが、歩くよりは格段に早く運賃もそう高くはないので多くの人が利用している、との事だ。因みに、話を聞いたことはあるが、乗るのは今日が始めてだ。

 乗合馬車で離宮まで行ってみたいから乗り方を教えて欲しいと頼めば、神殿はこれだから教育が偏っている、と呆れながらもクレオさんは詳しく教えてくれた。都合の良いことにギルドも離宮も停留所があるので、初心者の私にも安心だ。まるで初めて一人でバスや電車に乗ったときのような気分で、ギルド前でクレオさんと一緒に話をしながら馬車が来るのを待った。


 やがてシャラシャラと鈴の音が聞こえ始め、続いてガラガラという馬車の車輪が音を響かせながら馬車の姿が目に入った。やってきたのは麒麟とユニコーンを足して2か3で割ったような姿の馬モドキに牽かれた馬車だった。停留所で止まった馬車から降りる人を待って、クレオさんに礼を言うと初乗合馬車へと乗り込んだ。

 馬車には幌はなく、代わりに屋根はあるものの、座席より上は転落防止及び用の柵があるだけで窓はなく吹き抜けになっている。雨の日はさぞ濡れることだろうと思いながらも、今日は快晴なので何ら気にすることなく見晴らしの良い窓際の座席に座った。20人くらいは座れるだろう座席も時間帯の影響か今は疎らだ。いつもは徒歩で行く道の、いつもとは違う視点、スピードを楽しみながら、初めての乗合馬車を満喫した。

 神殿通りを神殿に向かい東に進み、神殿からは神宮大路に曲がり、離宮へと北へ進む。普段行くことのない、高級商店街?やらを通り抜け、目的地である離宮前で降りた。ここまでの、というか周回馬車はどこまで乗っても運賃は変わらず一回一ベク、五円玉に似た青銅貨一枚だ。この運賃の安さが人々に広く利用される一番の理由だろう。帰りもまた馬車に乗ろうと思いながら、離宮の正門へと向かった。




 流石に離宮の人は私の顔を知っていたようで、依頼内容を告げると特に何の問題もなくすんなりと離宮内へと通された。そんな防衛体制で良いのか、と思わず聞いてしまいたくなるくらいに。衛士から連絡を受けた宮の人がやって来ると、下にも置かぬ扱いで離宮の奥の方へと案内された。

 ……正直言って、凄く居心地が悪い。慇懃無礼、というわけではない。まあ、慇懃だけれど。

 彼らからすれば私は神が遣わした存在なのだろうから、そういう扱いになってしまうのかもしれないけれども。ただの人間でしかなかった、しかもかつての災厄のある意味で遠因となっていた私にそういう態度をとられても……困る、非常に。これだったら、子ども扱いされる神殿や、時々拝まれることもあるけど気さくに接してくれる町の人たちの方がずっと良い。


 (マレビト)でこれなのだから、アカシェ(神の裔)はさぞや大変だろう。ほんの僅かな時間いるだけでもそう思うに余りある場所だった。離宮(ここ)はとても居心地が悪い。アカシェはだから時々ここを抜け出してくるのかもしれない……。




 恐らく、離宮の中でも執務を行ったりするのとは異なる、公よりは私寄りだろう応接室へと通されて、監視なのだか護衛なのだかよく分からないけれど警護の人と二人で残された。……気まずい。この部屋まで来る途中、たいていの人には慇懃に対応されたけれど、通りがかりに睨み付けてくる文官らしき人も居たりで、漸く部屋で落ち着けるのかと思いきや何も言わない人と々部屋に閉じ込められるとか……。これ、実は嫌がらせだったりするのだろうか。

 向こうは仕事だから当然なのだろうけれど、私にだけお茶が出されているのも気まずさに拍車をかける。フィクションではそれなりに読んだり見たことのある光景だけれど、その中に自分がいるとなると違和感は半端ない。結局、出されたお茶に手をつけることもせず、微妙な緊張感を孕んだ空気の中で、動くに動けず、自分で呼んだんだから早く来やがれアカシェ、と念じ続けた。

 果たして願いは通じたのか、否か。硬直した体が凝りを訴え始めそうになった頃、閉ざされていた扉は開かれた。




 扉を開いて現れたのは、相変わらず無駄なまでに輝かしい美貌を携えた人で、慣れぬこの場所で唯一といっても良いほど見慣れたその姿に、緊張していた体がほっと解けた。いつもと違い、しかつめらしい顔でその場に現れたアカシェは警護と思しき人に何事かを告げると、微動だにすることなく直立無表情を維持していたその人は、一瞬ためらうような表情をした後に退室した。部屋に二人だけになると、アカシェはいつもの夜のように気さくな表情を浮かべた。仕事中だからなのか、若干疲れたように見えるのは気のせいだろうか。


「久しぶりだな、アトルディア。」


 アカシェは向かいのソファに腰を下ろすと、元気にしていたかと聞いてきた。


「お久しぶりです。私は元気ですよ……アカシェは少し顔色悪そうですね。まあ、それはさておき早速本題ですが、どうぞお届けものです。」


「……少しは気にかけて欲しいものだな。」


「こんなふざけた呼び出し方する人にはこんなもので十分かと。あ、受け取りのサインお願いします。」


 自分で自分宛に荷物頼むとか、全くの無駄としか思えない。しかも中に何が入っているのか知らないが、掌サイズでとても軽い。せめて形だけでももう少しもっともらしいものはなかったのか。


「まあ、待て。せっかくだ、茶でも飲んで行け。」


 さっさと受け取りのサインを貰って帰れないかな、と思ったがやはり無理なようだ。予想はついていたが、恐らくこちらが本題か。


「出来ればここ、早く帰りたいんですけど……。」


 それでも一応悪足掻きをしてみたが一蹴された、と言うか私の発言を無視して渡したばかりの小包を手に入ってきたのとは別の扉を潜っていってしまった。戻ったときには湯気を立てるちゃ道具を盆に載せて運んできたから、給湯設備かなんかが隣の部屋にはあるのだろう。漂ってくる香りは、いかにもな豪奢な内装のこの部屋に似合わない、最早アカシェとの茶会では定番のツェフじい御用達の徳用茶葉のものだ。……もしかして。


「さっきの荷物はこれですか?」


「ああ、そうだ。先日街に降りたときにギルドに頼んできたのだ。」


 堂々と言うことじゃない、とも思うが、仕方ないと諦めてアカシェのお茶に付き合うことにした。


「なんだって、こんな回りくどい真似を……。」


 そう尋ねれば。


「夜行っても、このところずっとお前は寝ていただろうが。」


 ……なるほど、最近来ないと思っていたが私が気付かなかっただけだったのか。


「……あー、そういえば、最近は学校に慣れるのに精一杯で夜は熟睡してたかも?」


 ということは、事を大袈裟にしたくない、と言っていたアカシェにとって、これが次善の策だったというわけか。


「それはお手数をおかけしまして。」


「全くだ。まあ、代わりにツェフのところに入り浸っていたがな。」


 ……神官長、憐れな。あとでお菓子を買って帰ってあげよう。意外にあの人は駄菓子系が好きだと知ったのは最近の事だ。きっと喜んでくれるだろう。

 とりあえず、ここに呼ばれた理由が一応は判明したが、聞きたいことはまだある。


「それにしたって、金貨一枚って何ですか。こんなことに血税使わないでくださいよ。」


「安心しろ、それは政務以外で稼いだ私財だ。私事に公費を使うほど愚かではないぞ。」


「私財、ですか……。でも、だからって、いくらなんでもこの金額はないでしょう?」


「何だ?少なかったか?」


「アホか!多すぎだっての!!」


 思わず、素が出てしまったのは私が悪いわけではない……はずである。て言うか、政務以外で稼いだ私財って一体……相変わらず得体の知れないところがある。


「ははっ、冗談だ。」


「金貨一枚でも冗談かと思いましたよ。」


 そう半ば本心からぼやけば、すまん、と笑う声が聞こえた。そうまでして私と話がしたかった、と言うわけでもないだろうが、幾分疲れた様子を見てしまうとこれ以上文句を言う気も失せた。私には無茶するな、と言った本人がこれでどうするんだか。




「さあ、話を聞かせてくれ。色々と楽しんでるのだろう?」


「は?荷物運びだけの仕事じゃないんですか?」


 事実、依頼書に書かれていたのは荷物の運搬、それだけだ。暇つぶし、気分転換の相手に慣れて置いうことは記されてはいなかった。まあ、話のほうがメインだとは分かっているので、これはある意味での意趣返しみたいなものだ。


「ついでに茶を飲んでいけ、と言う話だ。」


「全く、書かなかったのはわざとですね?」


 ギルドの依頼書には、依頼内容の概要さえあれば、詳細を書かなくても良かったりする。これが討伐系統の危険性が高いものとなるとそうもいかないが、街中での仕事では家事手伝いと言われて行ってみれば子守もだったり、またその逆もしかりと言う感じでかなり融通が利くといえば利く。


「まあな。書いたら何かしら理由をつけて断ったろう?お前は。」


 取り繕いもせず、あっさりと認めてしまうその態度に思わず嘆息が漏れる。流石は同類、私の性分をよく分かっていらっしゃる。


「はぁ。どおりで文官の方々に睨まれるわけですよ。」


 途中の文官に睨まれたのは、恐らくそういう意味だろう。つまり、アカシェをサボらせてんじゃねーよと言う非難の視線だったという訳か。訳も分からず睨まれて気分が悪かったのは確かだが、分かってみれば何のことはない。マレビトとして慇懃に接せられるより、ある意味ではマシと言えた。

 勤勉な文官さんたちには悪いが、まあ、今日から3日間だけは諦めてもらうとしよう。神族だって、疲れが溜まったら少しくらい休養が必要だろうから。




「私が王都に、ですか?」


 話を聞く前に、言っておくことがあったと前置きをしてアカシェが告げたのは、王都へ行く気はあるか、というものだった。旅行や観光ではなく、拠点を王都に、しかも王宮へ移す気はあるか、という問いだった。彼自身、苦虫を噛み潰したような表情をしながら口にしていたので、彼の意思によるものではないのだろう。私がこの世界の神々を嫌っているということを知っていて、それでいて、アカシェとは違うまさに神族の鑑とでもいうべき堅物の王がいる場所へ拠点を移すつもりがあるかを聞くだなんて。そんなの聞くまでもなく答えが決まり切っていることなど分かっているだろうに。それでも、直接聞かねばならなかったというのなら、それが彼に課されたものであったということか。

 彼に嫌々でも言うことを聞かせられる人物なんて――寧ろその相手からだからこそ"嫌々"なのだろうが――、そんなのそれこそ神王か神そのヒト――呼称が"ヒト"なのはおかしいというのはこの際置いておく、それ以外に表現が浮かばないからだ――しかいないじゃないか。


「……遠慮しておきます。何かフラグ立ちそう。」


「フラグ、ね……。多分、別のフラグは立ったと思うが。」


 小声で零れた後半も耳ざとく聞きつけて告げる不穏な言葉に、否応なく嫌な予感というものが膨れ上がる。


「……別の?」


「まあ、いずれ分かるだろう。」


 聞きたくないけど、聞かなければ後悔する。そんな予感に駆られてあわてて尋ねるも、その答えは素気無いものだった。


「ちょ、すっごく気になるんですけど!?一体なんなんですか!教えてくださいよ!!」


「まあまあ、後のお楽しみ、というやつだ。」


「逃げるなぁ!!」


「さあ、これでも飲んで落ち着け。私自らが煎れた茶だ。有り難く飲むが良い。」


 そういって勧められたのは先ほど彼が持ってきた茶器だ。話をしている間に大分湯気は薄れてしまっていたが。


「貴方と飲むときはいつだって貴方が手ずからに煎れてくれたじゃないですか。今更有り難みなんてありませんよ。」


 神族を崇め奉っている人たちからしてみれば不遜極まりない言葉を吐きながらも、温くなってしまったそのお茶に口をつける。こういうところに来た時くらいは高いお茶を出してくれたって良いんじゃないか、と思いつつも、どちらにせよ自分にはお茶の良し悪しを見定めるだけの舌を持ち合わせていないという事実の前に、ならば何にせよ同じことかと諦めた。

 どうせ、こうなっては彼が決して口を開かないだろうことは、まだ長いとは言えない付き合いの中で既に学習している。言わないと決めたことは決して口を開かない、そして言いたいことだけ言っていくのがいつもの彼のやり方だ。いつものような愚痴の嵐でなかっただけマシでもある――ただ単に敵(?)も本拠で愚痴るのは憚られただけかもしれないが――。それに安物の徳用茶葉とは言っても不味いわけではないのだし、と頭を切り替えて、こちらは離宮用のものだろう街では見かけないちょっと高級そうなお菓子を頬張った。


 ……なんで私、この人自らがギルドに頼んだ茶葉を運んで、離宮(こんなところ)なんかで飲んでいるんだろうか。茶を飲みお菓子も食べて一息つくと、そんな問いが一瞬頭を過ったが、きっとそれは気にしたらダメなんだろう。お菓子を食べる私を、アカシェがまるでツェフじいが私に菓子をくれた時と同じような――つまり孫に菓子を与えてほほえましそうに眺めてる祖父のような――表情で見ていたのも、きっと気にしてはいけないことなんだと思う。


「さてと、嫌な話も終わったことだし、お前の学校生活とやらを聞かせて貰うぞ。随分と楽しいことをやっていると聞いたからな。」


「楽しいって、誰から聞いたのか知りませんけど、普通の……ではないかもしれませんけど、そう変わったものでもありませんよ。」


 おそらくツェフじいあたりに来たのだろうとは思うが。学校生活と言っても、週二日しか行っていないのだから、そうたくさん話すことがあるわけもなく、別段面白いとも思えないのだが、アカシェはそれを聞きたいようだった。


「その普通の学校生活が聞きたいのだ。私は経験がないからな。ツェフやナイルにしたところであれらも神官になるための勉強しかしていない。」


「……そういうことでしたら、まあ。そんなに面白いものでもないですからね?」


「ああ、それでも良い。聞かせてくれ。」




 結果的に、私にとっては何の変哲もないような話がアカシェには受けたようだった。そんなこんなで、毎日昼頃までに小包を届け、日が傾くまでアカシェに請われるままに話をする、そんな時間が3日間続いたのだった。

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