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魔物編2:竜種

 地竜と飛竜に分かれており、種類によって固有名称が定められている土地は少ない。

 翼がなければ地竜、翼があれば飛竜。

 それがリヴァンに住まう大多数の認識だ。

 会話の中でも『緑色の地竜がいた』、『赤い飛竜がいた』という色を含む程度だ。

 他の魔物にも言えることだが、詳細な種類分けについては膨大な数になるため、この項では基本的な生態について説明する。

__________


 << 地竜 >>


 頭部に角を持たず、四足歩行する竜種。

 体長は六〇〇~九〇〇センチメートル、体重は四~六トン。オスの方が大きい。

 鱗は弾力こそあるが頑強とは言えない硬さだが、魔装を扱うと密度が高まり、まさに鋼と化す。

 一度の出産で四つから五つほどの卵を産み、オスとメスが交互に温め、孵化した後はオスが狩りを行う。

 通常は果実類やキノコ類を主食としているが、雑食の魔物であり、繁殖期に入ると通常よりも多くの栄養素を必要とするためか、一時的に肉食性が強まる傾向がある。

 地球においても、一般的に草食だと思われていても実は雑食の生物というケースは少なくないため(キリンなど)竜種に限らず、接近には注意が必要となる。

 十数頭からなる群れを作ることが多いが、単独で行動する個体も存在するため、イヌ科のアルファと呼ばれるリーダーを基準にしたような生態ではないことは確かだ。

 更には群れに危険が差し迫った際には特殊な鳴き声を上げ、それを聞いた遠方にいる別の群れや個体が救援に向かうなど、まさしく絆とも呼べる繋がりを持ち、それは魔物の中でも極めて特殊な生態と言えるだろう。

 群生は種の繁栄に重要だという考え方も間違ってはいないが、病が蔓延した際には群れだからこその滅びを迎えることもあるため、臨機応変に対応するというのは、極めて賢い群生の在り方であり、ある意味では人族などの在り方に近いのかもしれない。


 【危険性】


 温厚な個体こそ多いが、繁殖期には群れに近付くだけでも襲われることがある。

 身籠った個体が存在する場合、そのメスを中心にして仲間達が円陣を組む様にして守るため、その辺りの判断は容易だろう。


 【戦闘能力】


 突進。基本的に食事以外で牙や爪を用いることはない。

 ゾウよりも巨大な体格と時速八十キロメートルという、二倍近い最高速度から生み出される衝撃は、並みの防御手段では貫かれてしまうため、距離を取って戦うか、地竜が疲労するまで回避し、魔装が切れるまで耐え凌ぐしかないだろう。

 前世の私は交通事故を目撃したことはないため、人が吹き飛ぶ姿を見たのはこの突進が初めてのことだった。

 竜種の卵及び雛の捕獲は法律によって禁止されているが、裏では違法な取引がされることもある。

 上空から血液と臓器を撒き散らしながら吹き飛ばされ、母様に買って貰ったお気に入りの外套を汚してくれた存在もまた、卵を狙う盗賊の類だった。

 とにかく、卵を目的にした場合に限らず、竜種には近付かない方が良いだろう。

__________


 <<飛竜>>


 頭部に角を持ち、二足歩行する竜。

 手と翼が一体化したワイバーンではなく、ティラノサウルスに翼を生やしたような、まさにドラゴンという姿をしている種類の方が多い。

 一般的には仲間扱いされているが、角や翼の有無、食性が地竜と異なるため、仮に起源は同じ魔物だったとしても、太古の昔には系統が分かれたと考えられる。

 体長は約二〇〇センチメートルと地竜の三分の一、翼を広げても七〇〇センチメートルほどしかない。

 思っていたよりも小さいという感想が浮かぶかもしれないが、基本的には高山地帯や森林地帯に分布しているため、上空から木々の生い茂る場所にいる獲物を狙うには、これくらいの大きさが妥当だろう。

 地竜に比べて移動速度は遅いが、特筆すべきはやはりその背中にある翼だろう。

 地球では理論上、羽ばたいて飛行できる体重の限界は約三○キログラムとされていたが、この世界には魔力がある。

 飛竜の動きを観察している中で気が付いたのは、魔力を纏った彼らが翼を羽ばたかせる度に身体の下方と後方に不自然な空気の流れが生まれるということだ。

 そこで飛竜の翼の下に向けて大量の砂を詰めた袋を投げ込んだところ、螺旋状の気流を描いた砂が散っていった。

 つまり、飛竜は『翼に魔力を通すことで、風魔法を発生させている』ということだ。

 ただ、その性質上、膨大な魔力と体力を消費するらしく、数百体の個体の飛行持続時間を調査したところ、最長でも十五分だった。

 その時点でも目に見えて疲労していることが窺えたため、仮に命の危機に瀕して逃走する際に限界まで飛行したとしても、持続できるのは五分ほどだろう。


 【危険性】


 群れで行動する点においては地竜と同じだが、基本的に縄張りから動くことは少ないため、その範囲内に入らない限り、襲われることは滅多にない。

 肉食性だが、よほど空腹でない限り、人を狙うことは少ない。

 何故なら先述した通り、飛行を維持するには膨大な体力と魔力を消費するため、群れで大型の魔物を襲うことが最も効率的だからだ。

 素早く移動する相手に時間を使うほど、飛竜には余裕がないのだ。

 もちろん、全ての個体が同じとは限らないため注意は必要だが、基本的には注意深く行動していれば問題はない。


 【戦闘能力】


 飛行と風魔法、それだけを聞くと地竜よりも多彩な攻撃を行うと思えるだろうが、基本的に噛みつくのみ。

 ただ、極度の混乱、興奮状態に陥った時、ひたすら翼を羽ばたかせて暴れ回ることがあり、とてつもない被害を及ぼすことがある。

 翼が生み出した風魔法が弾き飛ばした石や砂の威力は、まさに散弾銃を乱射しているようなものだ。

 生半可な魔装では蜂の巣にされかねない。

 

 極端な例だが、注意喚起のためにも『バルニアの悲劇』を紹介しておこう。

 かつてバルニア王国の強欲な王族が飛竜を捕えて兵士として利用することを考えた際、閃光弾のような道具を用いた結果、複数の飛竜が狂乱状態に陥り、散弾銃を乱射。

 その土地は火山地帯だっため、岩とマグマの散弾銃、否、大津波が発生し、夥しい死者数を記録した。

 魔法以外は弱い。

 ゲームやマンガの影響でそう考えてしまうかもしれないが、その先入観は間違いだ。

 ファンタジーであろうとも一定の速度を持った物体は凶器だ。

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