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魔物編:序章

 魔物。


 それは魔力を持つ動植物全般を指す言葉であり、その生態は謎に包まれていることが多い。

 同郷の読者なら理解頂けるだろうが、地球の日本という国は比較的治安が良く、筆者が生きていた時代は平和だった。

 だからこそ、学者や研究者と呼ばれる者達も多く活動していたが、魔物の危険性は地球の生物とは比較にならず、少し街の外に出るだけでも武器を必要とする世界だ。


 そのため、どうしても実際に観察するという行為自体が難しく、リヴァンの熱心な学者達、もしくは魔物に探究心を抱いた者達の寿命は短い。

 研究機関のような組織が存在する国もあるが、一度の調査のためにかかる護衛の数や費用は馬鹿にならず、流石に限度があるため、災害にまで及びかねない魔物が出現した場合のみ、大掛かりな調査隊が組まれるという形がとられる。


 それでも同行できる研究者は数名。

 足手纏いが多いほど、全体の死者数の増加に直結しかねないのだから、こればかりは仕方がない。

 さて、地球出身、もしくは同じように『リヴァンと比較すれば無害な生物が多い』世界から訪れた読者諸君。

 幾つか覚えておいてほしいことがある。


 第一に『外見に騙されるな』


 これは危険性のある生物が少ない筆者の暮らしていた国でも通用するが、『可愛い』という罠。

 その罠があまりにも顕著だ。


 そして、『魔物の情報を大切にしろ』


 日本の名ばかりの動物番組では『可愛い』の中に気紛れに『捨てられて可哀想』な映像を流すことが主流であり、敢えてはっきりと言ってしまえば『本当に動物が好きな人間には歯痒かったり、虫唾が走る』内容が多かった。


 衝動買いや一瞬の同情からの飼育を煽り、結果的に捨てられる生物を増やすのだから性質が悪い。

 可愛いものを楽しむことを否定したいわけではなく、そればかりが垂れ流される現状に嫌悪感があるということだ。


 『可愛い動物だけを大切にする』タイプの自称動物好きは、根本的に自分が好む動物のことでさえも、その生態を考えず、ましてや興味を持たず、『人間と同じように接することが正しい』という偽善的な思考に囚われ、結果として『この子は私の家族だ』などほざきながら、気付かないまま虐待や差別を行う。


 何故こうも主語の強い言葉を使うのか。

 それは個人的な侮蔑の念もあるが、あなた方のためだ。

 そう、これを読んでいる、特に日本からの転移者、転生者の中には、自称動物好き(笑)がいるのであれば、さぞかし不快な気分になっていることだろう。


 しかし、リヴァンで生きてゆく以上、耳触りの悪い言葉を受け入れなければならない。

 このリヴァンにも犬や猫の様な魔物がいる。

 愛らしく寝転がり、会話するように鳴き、無垢なる幼子の様にすり寄ってくる。

 そして、あなたがそっと腰をかがめなら、その頭を撫でようとしたところで首元に食らいつてくる。


 そう、ある程度知能の発達した魔物達は知っているのだ。


『この仕草をすると、目の前の二足歩行の獲物は簡単に近寄ってくる』と。

 

 転移者や転生者でも、新たな異世界での門出、その当日に襲われて死亡した例も少なくない。

 犠牲となるのは平和ボケした世界で暮らしてきた私の様な者、無知な者、偽善者、子供。

 特に幼い子供の犠牲者は多く、その危険性を親から教えられていたとしても、可愛さに負けて近付いてしまったり、『この子は懐いている』と思い込んでしまうのだろう。


 無知な者と偽善者が犠牲となる事例は『怪我をしているところを保護した結果』に犠牲となる場合が多い。

 それはそうだろう。


 大半の魔物は本能で生きているため、救助や保護されたことなど理解できないこと、空腹となれば獲物を襲撃すること、どちらも当然のことなのだから。


 ここでも一方的な絆や美談を押し付けると酷い現実を思い知らされることになる。

 本当に愛するということは、相手との違いを理解し、恐れ、考え、その末に正しく一線を引くことにある。

 そのことを忘れてはならない。

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