種族編2:エルフ族・竜人族・その他
【エルフ族】
寿命は千年以上。
個人差はあるが、おおよそ十代前半から二十代半ばで老化が終息し、そこから数百年の時間を経て、再び緩やかに老化が始まるため、エルフ族からしてみると数年から数十年は誤差であり、『また外見の老化が始まったし、私も年を取ったんだなぁ』くらいの感覚のようだ。
老化の終息、再開などを含めて個人差が極めて激しく、年齢に関する興味を持たない種族のため、本人が実年齢を覚えていないことの方が多い。
排他的なエルフ族が多い中、近所で暮らす社交的で素敵なエルフのお姉さんも言っていた。
「ふふ、あら、私達に年齢なんて意味はないわよ? そもそも幾年を生きたかよりも、限られた時間の中で何を残したかが重要なのよ。坊や、あなたは人族にしては不思議な体質を持った子のようだけれど、それにもきっと意味がある。生物にとっては子孫を残すことが最重要だけれど、坊やならそれ以上の何かを残せるかもしれないわね」
平均身長は一七○センチメートルと、現代の地球人に近い。
肌は白く、艶のある金色の髪と宝石の如き緑色の瞳を持つ者が多いため、一般的には『美の種族』とも呼ばれている。
神々が最も時間を掛けて造形したとも謳われるだけあって、私が初めてエルフ族を見た時の印象としては、生物というよりも、感性の鈍い者ですら息をのむであろう美術品というものだった。
全種族の中で最も魔法を得意とし、エルフ族にしか扱えないものもある。
基本的には森の奥深くで暮らし、あまり他種族との交流はしないため、スキルを使って侵入した結果、八つの一族が八王家と呼ばれ、それぞれの管轄の地域を治めているようだった。
読者諸君、前述した近所のお姉さんに尋ねれば良いのでは? と思っただろう?
残念。多くのエルフ族は他種族を見下すような側面もあるが、その一方で芯は誇り高く、王族に対する敬意や風習を忘れることはない。
分かりやすく説明すれば『緊急事態でない限り、他種族に歴史や文化の情報を漏らさない』という風習を守っているということだ。
故郷を離れて他種族と共に暮らす様になっても、そこだけは譲らないというのは、まさしく己の種族に対する誇りと誠実さが見て取れる。
恐らくは『他種族との交流は禁止する』という王族からのお触れが出されていたとしたら、近所のお姉さんの様な社交的なエルフであっても、己の欲望を抑えて、しっかりとそれを守っていただろう。
他種族を見下す一面の裏には、どの種族よりも気高く生きてみせるという信念と自負が隠されているということだ。
この先、あなた方がエルフ族と交流する際、どこか鼻につく場面はあるかもしれないが、自分は良いけれど人は駄目というブーメラン使いはもちろん、地位の高い家に生まれだけで他者を見下すような存在とは違うということを理解してほしい。
【ダークエルフ族】
平均的な身長と瞳の色はエルフ族と変わらないが、銀色に近い髪と褐色の肌をもつ者が多い。
地域によっては『黒曜族』、『ブラックエルフ族』とも呼ばれる。
また、とある国ではダークエルフという言葉は『蔑称』とされて一時的に禁止されていたが、皮肉にも地球の差別や動物愛護関連にありがちな『正しい知識を持たず、憶測と偽善だけで声を上げるだけの無関係な第三者』によるものであり、そのことを知った当人たちは『全く気にしていない。そもそも光と闇は表裏一体。どちらも世界には必要なものだろう』と苦笑気味に明言したため、結果的にダークエルフで落ち着いたという。
【竜人族】
寿命は五百年から数千年と開きがある。詳細は不明だが、身体に流れる竜の血の濃さで差が生まれるようだ。
平均身長は約一八○センチメートル。
髪の色は赤や黒が多く、肌の色はもちろん、瞳は赤、金、黒など多種に渡る。
前述したように、その理由は『竜』にあると思われる。
竜人族の起源については魔物の竜に深く関係するため、詳細については魔物編の項での説明とするが、竜は知性の高いものが存在し、更に人に化けることが出来る。
故に人と結ばれる話ことも各地に残っており、祖先にあたる竜の血の種類によって肌や瞳の色が異なるのではないかとされている。
ちなみに翼については普段から生えているわけではなく、魔法扱いとして考えて良いだろう。
使用する場合は、肩甲骨の付近に二つの円形の魔法陣が浮かび上がり、そこから魔力で形作られた翼が生える。
しかし、言うなれば『飛行魔法の一種』であり、魔力の消費量も燃費が悪いため、普段はあまり使用しないということだ。
ちなみに精霊族と同じく排他的な種族ではあるが、前者と異なる点は拒絶からは入らないことにある。
こちらが何を目的として訪れたのかを伝えると、しっかりと審議をした後、可能と判断すれば会話や交流に応じてくれるため、あくまでも『子孫を残す』という点においては排他的といったところだろう。
そして、その点についても明確な理由が存在する。
これはとある竜人族の族長が聞かせてくれた話だ。
「竜の『血』はとても特殊なものであり、赤子に強い影響を与える。我々としてもいつ『竜人族』という存在が生れ落ちたのかは不明だが、少なくとも今現在の我々の血は薄まってしかるべき……しかし、我々は見ての通り、その特徴や能力をそのままにしている。途中で新たな竜と交わった者もいるかもしれないが、大半はそうではない。つまりは『竜』という存在はそれほど異質。かつては他種族との間に子を産んだ竜人族も少なくはなかったが、残念ながら『奇形』として生まれてくることが多く、仮に外見上の異常はなくとも原因不明の発作や魔力異常を起こして息絶えてしまった。まともな生を送れるのは、それこそ数十人に一人か二人だろうな……そういういった歴史があり、我々は他種族との間に子を残すことを禁じたのだ」
隠しているわけではないが、同時に世界に向けて宣言するようなことではないため、交流がある者や種族、歴史に詳しい学者なら知っている程度の知識であり、エルフ族と同じように種族としての矜持からくる拒絶と勘違いしている者の方が遥かに多いだろう。
異なる種族と結ばれることが難しいとなれば、何れ滅ぶ可能性が最も高いと言えるが、私自身も何らかの解決策を模索している。
【巨人族】
身長は三、四メートルとされているが、骨の化石が発見されているのみであり、出会える範囲での最も長命であろうエルフ族の老人すら『自身の祖父母からの伝聞』という情報しか持っておらず、起源については不明であり、そもそも『人種』という括りであるのか迷う。
各種族の文明が生まれる前の時代に生きていた生物としか言いようがない。
地球でも証拠のある最長記録は二七二センチメートル。
その他の二四○センチメートル以上の人物は活動限界を超えており、杖がなくては歩行できなかったようだが、魔法があれば話は異なる。
しかし、発見された骨の形を考えると、通常はゴリラのような四足歩行の魔物だったのではないかとも考えられる。
巨人族については謎が多いため、今後も調査が必要となるだろう。
【小人族】
体長は一○○センチメートルの魔物。
そう、魔物なのだ。
一般的には小人族と呼ばれているが、実際は妖精種の一種。
本来子供がいるはずもない危険な地域で目撃された際、小人族なのではないかという噂が広まって行ったと思われる。
しかし、多くの妖精種は掌に乗るような体長のため、そう勘違いするのも無理はないだろう。
実際にそのことについて彼らに問いかけると、
「えっ、普通に魔物だよ?」
「そうだよ?」
「僕達、小人族なんて名乗ってないもーん!!」
という返答がきた。
妖精種の中では無害であり、基本的に興味と本能で生きているため、人の社会に紛れ込んでいることが多い。
地球の怪談でもありがちな『遊んでいる友達の中にいる知らない子』の部類は、大体彼らなのかもしれない。
【魔人族】
身長は不明。正体も不明。
魔王と呼ばれる存在の目覚めと共に生れ落ちるとされているが、その一方で魔力が際立って高い者への呼称でもあるため、非常にややこしい存在。
更に各地の伝承や噂話を辿ると、『魔人族』というのは何か災いが起こった時の原因とされていることが多い。
宗教が根付いている国や旧時代の人間達が災厄を『神の怒り』と表現するのと似たようなものだろう。
また、魔女裁判の様な酷い冤罪も度々起こっているようだが、地球のように悲惨な結末と異なるのは、個の力が群を上回ることが多いことだろう。
事件については別の項で記述するが、一つの歴史を記しておこう。
今から二百年ほど前、自由歴(この世界では統一された暦がないため、文明が記録されている時代から筆者が勝手に作った名称)九○二一年、アルオル大陸のハサクという農村で原因不明の死亡事故が重なり、魔女裁判ならぬ魔人裁判が発生。
裁判とは名ばかりのもので、村人達が魔人と疑われた青年とその家族を捕縛し、そのまま彼らの家に火を放って殺害を試みる。
しかし、『魔人』と呼ばれるだけのことはあり、青年は鎖を破壊、家族を救いだし、村人達の会合場所を急襲。
最終的には、彼に悪い感情を持っていた村長の息子とその仲間達が起こした事故であり、その罪を青年に擦り付けたと自白。
そこで終われば良かったのだが、村長と一部の者達は隙をついて青年を殺害し、今回の事件を闇に葬ろうと企む。
しかし、不意を突いたところで勝てるはずもなく、結果的には村長を含めて二十四名が死亡。
そして、青年の家が新たな村長となり、今現在は『村長達こそが魔王の使いたる魔人であり、青年は勇者だった』という話として語り継がれている。
【神人族】
神々の使いとして認められた存在。
転移者や転生者が多く、逸脱した能力を与えられる。
察しの良いあなた方なら、どのような存在を意味するか、語るまでもないだろう。
この他にも未知の種族や絶滅した種族も存在するかもしれないため、情報が入り次第、更新してゆく必要があるだろう。
地球の生命においても、科学では解明できていない生物も多い。
そこに『魔力』という謎の力が加わることで更に難解なものとなっているため、もしかしたら私が存命している間にも他の種族が誕生する可能性もあるというのは、何ともロマンだ。




