魔物編3:ゴブリン種
ゴブリン種。
世界中の山や森に分布している魔物。
同郷の者であれば、肌が緑色の人のような魔物という姿を想像するところだろうが、実際は緑色の体毛のチンパンジーだった。
平均体長はオスが一二○センチメートル、メスが一○○センチメートルとチンパンジーよりも三・四○センチメートルは大きいが、これ以上ないほどにチンパンジーだ。
初見は随分と意表を突かれたものだが、とにかくゴブリンの観察を開始した。
幾つかの地域で観察を行ったところ、その多くは五十体ほどの群れを形成していた。
群れのボスは胸元辺りから獅子のタテガミの如く、立派な白い毛を生やしているが、どうしてそのような目印を持つのかを考えていたところ、奇跡的にその瞬間を目撃した。
現在のボスゴブリンが、とあるゴブリンに挑まれ、その結果ボスゴブリンは敗北した。
すると、降格した旧ボスゴブリンの白毛が抜け落ち、新たにボスとなったゴブリンの胸元から白毛が生えたのだ。
まさしく生命の神秘。
とはいえ、リヴァンよりは現実的な生物の多い地球においても、一般人が聞けばまずは嘘だと疑い、学者が頭を悩ませる生態を持った生物はいるため、まぁ、そういうこともあるのだろうと私は受け入れることが出来た。
そして、全ての個体が同一の進化をしないことは、群れの中での争いを避けるためにもなる。
気になるのは旧ボスゴブリンと新ボスゴブリンが行ったのは、命を懸けるような戦いではなかったことだ。
両者が咆哮し、何度か掴みかかるような動作をしたものの、傷を負わせるようなものではなく、単純な力比べを行っているように見えた。
実の親子とは限らないが、旧ボスゴブリンは随分と年齢を重ねているような印象を受けたため、ボスの立場を賭けた争いではなく、儀式というべきなのかもしれない。
【危険性】
通常は木の実を主食としているが、基本的に雑食性のため、人や他の魔物を襲うことがあり、冒険者の討伐の対象となることも多い。
ファンタジーのやられ役のような印象を受けるゴブリンだが、群れの数が減ると異常に繁殖が早くなると同時に産む子供の数も増えるという生態を持ち、更に身体能力と知能が高いこともあり、『人類の天敵』とも評されることがある。
攻撃方法は主に石による投擲。
剣と魔法の世界において、投擲というと大したことはないと思えるかもしれないが、魔物とは『魔力を持った生物』だ。
彼らも人々と同様に魔装で腕力を上げ、投擲を行う。
更にそれは群れの縄張りの中に侵入した場合だけではなく、ネコ科の動物と同じく『遊び』や『狩りの練習』で殺生を行うことがある。
常に命がけの世界だからこそ、命の尊さを知っているフリーベルの人々は遊びで命を奪う者は一部の異常者だけだが、地球出身者としては耳の痛い話だ。
とにかく、ゴブリンの遊びで茂みの向こうから魔力で強化した腕力を用いた投擲が行われるという恐怖は尋常ではない。
【対策】
森に近寄らない。
というのは巨大な街であっても、塀の外は大自然が広がるフリーベルにおいては厳しいだろう。
だからこそ、まずは魔物だけではなく、森という環境の危険性を理解し、移動の際は木々を盾にすることで攻撃される可能性のある方向を絞る。
ファンタジー小説ではやたらと自然界の中で雑談をする場面が多い。
創作物の性質上、そうせざるを得ないのは仕方がないが、魔物が存在する大自然の中で周囲の音や気配を意識しないのは愚かにも程があるので注意が必要だ。
ゴブリン種は知能が高いとはいえ、音を立てずに忍び足で移動するという芸当までは行わないため、ある程度の距離まで近づけば鳴き声や気配で存在を捉えることができる。
あなた方も魔力が扱えるようになり、身体能力や感覚もリヴァンの水準になっているため、その気になれば先に攻撃を仕掛けることも可能だろう。
無意味な殺生を推奨しているわけではないが、『遊び』で攻撃してくる魔物に対して『今は気付いていないようだから』と安易に見逃した場合、状況や目的によっては悲劇を招くことになるため、しっかりと思考する必要がある。




