第九話 Sランクの凱旋2
その男のファンサにより女子達から激しい黄色の声援が飛び交う。
「キャー!!」
「こっち向いてー!!」
「今、目が合ったわ!!」
盛り上がっているガールズ達から野郎どもは端に追いやられ、なんだか蚊帳の外だった。
間が空いたので横に居るアレンになんとなく話しかける。
「あの男、女子生徒からの人気が異常だな」
俺がボソッと告げると、アレンは何故か得意げに解説し始めた。
「お、そうか。
お前はSランクについてあまり知らないよな?いい機会だから説明してやるよ。
あの男は『ロキ・アベンチュリン』。
Sランク第三位だ。
見ての通り女子から特に支持されてる。
ちなみに、彼の能力は学園内の都市伝説の内の一つだぜ。実際、俺はあの人が戦ってるところを見たことが無い。」
へぇ~なるほどぉ、と解説を聞き流し再びその『ロキ』とかいう男に目をやる。
依然ロキは笑顔で囲いに対応している。
するとロキが出てきた馬車からもう一人、青い髪に眼鏡が光る妙に気品のある男が出てきた。
その男は馬車から落ち着いて登場するや否や、ロキの肩を掴み、早く移動するよう促した。
「ロキ。いつまで油を売ってるんだ?」
ソイツは眼鏡をクイッと持ち上げながら、周りの観衆を心底興味無さそうに見回す。
ロキは振り返り笑顔を浮かべながら、男の肩に腕を回す。
「ハインツ!君もやっていきなよ。皆と交流できるチャンスなんて滅多に無いぜ?」
「時間の無駄だ」
ハインツと呼ばれたソイツは、誘いの言葉を一蹴し、
引きずるようにロキを連れて行く。
それと同時に周囲を囲っている聴衆を自身の威圧で押しのけ、無理やり道を作る。
ロキは名残惜しそうに最後まで聴衆に向けて、対応を欠かさなかった。
「なんだかあの眼鏡野郎はロキと違っていけ好かねぇな」
俺はポツリと愚痴をこぼす。
アレンは半分、分かると言った顔で説明を始めた。
「ジョウ、お前がそう思うのもムリは無い。
彼は、『ハインツ・アルフレッド』Sランク第四位だ。
名門貴族アルフレッド家の嫡子で、どうやら俺達庶民の事は見下しているらしいぜ?
実は同じ名家出身のレイナ会長を敵視してるって話だ。」
アレンの話を聞き、先程のハインツの態度にも納得を感じていると、ロキ達が降りて来た馬車の後続が動き出す。
またまたSランクがお出ますらしい。
(この調子じゃあ残りのSランクもイロモノ揃いだろうよ…)
そんな不穏な考えを浮かべながら視線を動かすと、ロキの時とは違う野太い声が騒ぎ出した。
ざわざわ
次なる馬車に向かってなにやら、濃い連中が集まり出す。
ソイツらは手から魔力を練り始めると同時に、
奇妙な踊りと魔法の詠唱?のようなものを始めた。
「「「ミレア・ミレア・おーれのミレア!!」」」
(なんだぁ!?アレ!?)
その動きが次第に激しくなると同時にソイツらが囲む馬車が淡いピンク色の光を帯び始める。
「「「世界で一番愛してる!!」」」
踊りが最高潮に達すると魔力による光はハートの形となり花火の様に爆散した。
「どっドーン!!皆んなお出迎えありがとーう!!」
爆散した煙の中から元気よく登場したのは、
ピンクのツインテールがキュートな小柄な少女だった。
「おったまげたぜ…Sランクの歓迎がこれほど豪華なんてよ」
「ハハっ、ジョウ。ありゃあ特例だぜ。
あの女はSランク第五位の『ミレア・ヴァレンタイン』
踊ってる奴らは『ミレアファンクラブ』のメンバーだ。
親衛隊みたいなもんで、ああやって歓迎の儀をするのがクラブの習わしなんだ。」
「はぁ?学園アイドルが存在したなんて!」
驚きだ。
Sランクの層、厚すぎるだろ
ミレアはロキとはまた違った感じで、周囲のメンバーに愛想を振り撒いている。
周りの男達は興奮し、中には鼻息を荒くして奇声を発している者も居た。
会場の熱と混乱がヒートアップしていく中、またまた別の馬車から人影が現れる。
馬車から飛び出したのは筋肉質のスキンヘッド。
いかにも頼りがいのあるアニキ的な大男だ。
ロキにもミレアにも靡かなかった一般生徒達はその大男の元に集まりだす。
「アニキ、待ってました!」
「おかえりなさいっ!!」
「後で稽古お願いしますっ!!」
今までのSランクとは違いかなりまともな感情で従われているらしい。
アレンが興奮気味に語りだす。
「おぉ!!
あの人はSランク第八位の『ガロン・チャコール』!!
Sランクの中で唯一まともに会話ができるといわれ、我々学生からの信頼も一番!!
昇格戦の当たりともいわれてるぜっ!!」
(それ以外は話が通じねぇのかよ…)
俺の絶望をよそに、ガロンは白い歯を光らせ叫ぶ。
「野郎ども!!出迎えありがとよっ!!」
そう言いながらマッスルポーズを執った瞬間、周囲の歓声がドッと沸いた。
ガロンは満足げにその場を後にし、ズカズカと歩いて行った。
がレンの後ろ姿が遠くなるまで聴衆の歓声は鳴りやまなかった。
馬車の最後尾にあたるそれは、今までの豪華なモノとは違いやけに厳つく荒々しい装飾が施されていた。
黒い禍々しい鎧に、至る所に棘のようなものがあしらわれている。
その馬車は大きな音を立てて群衆の前に止まった。
中から現れたのは二人の柄の悪い男。
その男たちはお互いに向き合い騎士のようにキッチリと姿勢を正した。
ソイツらは腰に下げられたラッパを取り出し、勢いよく吹き始めた。
音を確認したのか、馬車の窓がガチャリと音を立て開いた。
窓を乱暴に開け出てきたのは、
ガロンと体格こそ似ているものの、明らかに人相の悪い男だ。
ソイツは不満げに周囲を見下ろした後、
「テメェら!!盛り上がりが足りんねぇんじゃあねぇか!?」
と、怒鳴りだした。
周りを囲む生徒たちからまばらに拍手が起き始める。
許してやる、といったような顔で群衆を押しのけながらソイツは歩いていく。
その背中には先ほどラッパを吹いていた二人がついていく。
おそらく舎弟だろう。
「なんなんだぁ、アイツは?今までのSランクとは訳が違いそうだぜ。」
俺は気になってアレンに聞いてみた。
「奴は『ゲイル・マッド』、Sランク第九位だ。
別名『岩の男』。アイツはSランクの中でも群を抜いて素行が悪い。
ジョウ、お前も気を付けておいた方が良いぜ。噂では自分より弱い奴を一方的に暴行したり、ランクが下位の生徒をいじめたりと黒い噂は耐えねぇからな」
解説をよそに俺は
ふと、気になった事をアレンに聞いてみた。
「ところで、学院の奴らはみんなお前みたいにSランクについて詳しいのか?」
「いいや、他の奴らはこうはいかねぇぜ。
俺は別名『歩くSランク辞典』と呼ばれているからな。
俺ほどSランクに詳しい奴はそうそういないんじゃあないか?」
「ははっ、どうりで」




