第八話 Sランクの凱旋1
~翌朝~
今日は休日だってのに朝っぱらからアレンに叩き起こされた。
まったく、昼まで惰眠を貪るのが休日の在り方だろうが…
「おいおい…一体何なんだ?」
俺は眠気眼を擦りながら息切れで興奮気味のアレンを見つめる。
アレンに開けられた窓からの日差しが俺のトロつく意識を覚醒させる。
「ジョウ、寝てる場合じゃあ無いって!!
聞いて驚くなよ?
あの『Sランク』の奴らが帰ってきたらしいぜッ!!」
「Sランクだぁ~?」
やれやれ…
コイツ本当に『Sランク』好きすぎじゃあないか…?
だがこの『Sランク』への熱中っぷりも納得できる理由がある。
それはここ数日この学院で過ごして分かった事なのだが、
『Sランク』ってのはどうやらこの学院において最上位のエリート集団としてだけではなく
ある種、『ヒーロー』や『アイドル』的側面があるらしい。
アレンだけじゃあなく、この学院の連中、
FからAまで分け隔てなく、Sランクのファンが多いとの噂だ。
『昇格戦』で倒すべき相手を神格化するのはどうかと思うが…
まぁ、超えるべき壁であると同時に憧れでもあるってことか。
そこで俺はアレンに何気ない質問をぶつける。
「帰ってきたって今までどこ行ってたのよ?生徒会長とか書記は学院に居るよな?」
「いいか?ジョウ。Sランクっつってもいろんな奴がいてだな…
真面目に学業を修めてる奴もいれば、全然出席しない奴。はたまた校外で既に冒険者みたいな活動をしてる奴もいるんだぜ」
「はぁ!?おいおいそんなのアリか!?
ここの卒業証書が無いと冒険者として依頼は受けれないんじゃあねぇのかよ」
「それもSランクの特権だ」
アレンが諦観にも似た表情で呟く。
(Sランクの奴らにはどれだけの特権階級があるんだよ…)
アレンは首を横に振って表情を戻し語り続ける。
「話を戻すがな、今回はSランクの内何人かが近頃噂になっている『魔王復活祭』の調査に出向いてたんだぜ。それの帰還って事だ。しかも今日はレイナ会長直々に新入生への挨拶と激励も行われるらしい。
ジョウ、お前はツイてるぜ?何故ならSランクが集まる事なんて滅多に無いんだからな。」
「こうしちゃあいられねぇ。さっさと校門に行くぞっ!!」
「ちょ!?おい待てよぉ!!」
アレンに引っ張られ半ば強引に学院の校門前に赴く。
そこには既にこの学院の在校生全員を集めたんじゃないかと思われる程の人だかりができていた。
「おい!!どけよ!見えないだろ!」
「キャー!!Sランク様よ!!」
「すげぇ!!本当に存在したのか」
お互いの所属など関係なくSランクの姿を一目見ようと今か今かと観衆は待ちわびる。
「凄ぇ人気だな」
「あぁ、ダブってる俺ですらSランクが集まるのは数える程しか見たことがねぇからな」
アレンは何故か、涙ぐんで眺めていた。
すると学院を囲む壁、その一角
校外に出るための大きな城門が上がり、いくつかの高級そうな馬車が歩いてきた。
馬車には金の装飾や重厚な鎧があしらわれており、いかにも貴族御用達な感じだ。
それら馬車を囲むようにして群衆が集まりだす。
このままじゃ馬車から身動き取れないんじゃあ無いか?と思った矢先。
覚えのある嫌な感覚の冷気が会場全体に伝わってきた。
周囲のざわつきが僅かに収まったかと思うと、
「皆さん。静粛に」
なんとあの生徒会長『レイナ・クリスティア』が校舎から姿を現した。
横にはいつもの様に『ティアナ・フォークランド』がにこやかに佇んでいる。
レイナはコツコツと靴音を鳴らしゆっくりと歩みを進め、
「下がってください。危ないですよ」
と馬車付近の生徒に警告した。
周囲の気温が一段と下がる。
それでも聴衆は、レイナを見れた興奮なのか警告が聞こえていないのか分からなかったが、その場から動かなかった。
しかし、レイナが馬車に向かって手をかざし魔力を練りだすとさすがにヤバイと思ったのか身を引き出す。
聴衆が居なくなったそこには一本の道ができた。
すかさずレイナはその道に氷魔法を放つ。
ズアッ!!
出来たのは
レッドカーペットならぬ、ホワイトカーペットだった。
「おぉ」
「あれがレイナ様の魔法…なんて美しいの!!」
「危ねぇ…あと一歩前に出てたら足が氷漬けになってたぜ…!!」
周囲の聴衆が再び騒ぎ出した。
と、同時にそのホワイトカーペットが指し示す一台の馬車から
一人の男が降りてくる。
「おいおい。会長サマ?まさか俺まで凍らせるつもりじゃあ無かっただろうね?」
にこやかな顔で現れたのは、スラッとした背丈のハンサム。
しかしどこか底知れなさを纏っているそんな感じの男だ。
その男は馬車から降りるや否や、周囲を囲む生徒達一人ひとりに応えるように、笑顔を振りまく。
その様子を見ていたレイナはやれやれといった様な表情で頭を抑える。
「はぁ…早くしてください。後がつかえてます。」
「ハハッ。いいじゃないか、久しぶりに皆の前に出れるんだ。サービスはしておかないとね。」
そういってその男は笑顔だけではなく、ウィンクや投げキスまで飛ばし始めた。
(生徒会長と書記以外で初めて見たSランク、またもや、一癖も二癖もありそうだぜ…)
これから出てくるであろう
続くSランクの奴らに、俺は期待と不安を抱かずにはいられなかった。




