第四話 ギリギリ魔法演習
「へぇ~、あの二人が、ね」
ペロリと舌なめずりをして、『例の奴』がビリリと身体に電気を纏わせ始めた。
――だが
「おい、落ち着けッ!!落ち着けェー!!」
なんと慌てた様子でオルグがエレナを羽交い絞めにして拘束した。
「おいっ!!離せッ!!筋肉野郎ッ!!」
「馬鹿か!?あの二人を前に校則違反でも犯してもみろ!!お前は一瞬で退学だぞ!!」
ゴクリ…!!
あの伝説の男、オルグさえもビビり散らすとはどれだけ凄まじいんだ?『Sランク』。
するとまた、アレンが聞いてもいないのにSランクうんちくを語りだす。
「おいジョウ、聞くところによるとだな…Sランクの奴ら、ここの教師よりも権力が高いって話だ。実際今の見ただろ。あの教官の慌てよう…たしかに噂は”ガチ”っぽいなぁ」
癪だが、アレンの言う通りだぜ…教師でさえもSランクには逆らえないってことか。
てかこれ、ランク昇格は無理ゲーに近いんじゃあないか?
そんな絶望の中、唸るエレナに噛み付かれたままオルグが指示を出す。
「今日はどうやらSランクが授業を見学してるらしい。だがお前ら、気にせずいつも通りやれや。もしかしたらお前らの姿が目に留まるかもしれんぞ。ガハハッ!!」
オルグは引きつった不気味な笑みを浮かべ、授業を進めた。
(顔が笑ってないぜ…おっさん)
――だが
かくいう俺も、冷や汗が止まらねぇ。
俺の能力『時間停止(束の間の休息)』をどうにかSランクの奴らにバレないように使用しなけらばならない…!!
「なんだぁ、自信ねぇのかジョウ?昨日エレナをボコしたあの『瞬間移動』じゃあ魔法は飛ばせねぇもんな!!んじゃ、俺が手本を見せてやるよッ!!」
ドヤ顔で、いかにも「俺を見ろ」と言わんばかりの態度で、アレンは的の前に立つ。
「では、始めっ!!」
オルグの号令の後、アレンは右手を的の方に突き出し、詠唱を放つ。
「俺の属性は”土”!!ナニモノにも動じない強い意志だッ!!いくぜぇ!!喰らえッ『ストーンエッジ』ッ!!」
ゴゴゴッ
アレンの手の平が金色に輝きだす。
ググッ
ちょうど演習場に落ちている大きさ程度の小石がアレンの手先から出たかと思うと
シュンッ
的の方に飛んでいった。
コツンッ
その魔力で出来た小石はなんとも微妙な場所に当たり、そのまま地面に落ちた。
「ヘヘッ。と、まぁこんなもんよ」
アレンは鼻下を掻きながらこちらにピースを掲げてくる。
(これは…凄いのか?)
「おぉ~」
それを見ていたクラスの連中が湧き始めた。
「的に当たるだけでもスゲェ!!」
「あんなに魔法が飛ぶなんてっ!!」
どうやら凄いらしい。
なるほどね。
Fランク生徒として振る舞うにはさっきのアレンの魔法を基準に演出をすればいいって訳か
「ふぅー…」
深く息を吸い、的の前に立つ
「がんばれよぉー」
言われなくてもやってやるさ。
見てな…今、考え付いた俺の策を…!!
俺はまるで戦闘前の格闘家のような構えを取る。
腰を落とし、右手右足は突き出し、左手にぐっと力を込め、踏み込む。
――そして
「身体強化魔法『四肢』ッ!!」
今まさにその魔法を使ってますよといわんばかりに詠唱する。
これで合ってるか?
そして、足元に転がっていた小石を拾い上げ投球の構えを取る。
「ぜぇあっ!!」
石を投げ飛ばした。
―その瞬間
””時間停止(束の間の休息)””
時を止める。
そのまま、先ほど投げた空中で停止している石を、的の前に持ってきてコツンッ。と軽く叩く。これで前に進む力は働くはずだ…
そして急いで先程の石を投げたその場所に戻る。
―時間停止解除。
アレンと同じように石が的の微妙なところに当たり、跳ね返って落ちた。
「お、おぉ~!!」
「無属性魔法はああすれば良いのか!!」
周りの反応…これはやったか?
「ゴホン。まぁ合格点だ」
教官が顎髭を触りながら答えた。
(ふぅ~危ない危ない。冷や冷やしたぜ)
「やるじゃねぇか、ジョウ!!俺の見本が効いたな!」
アレンが手を差し出し、お互いハイタッチをかわそうとした瞬間
プッ
「ギャハハハハハハ!!おい、黒髪ィ!!なんだぁ~そのへぼ魔法はァ~!?そんなんで良くわたしを倒せたなぁ」
「なに?」
いつの間にか教官から抜け出したエレナがずかずか歩いてくる
「どけ!!わたしが本物の手本を見せてやるッ!!」
俺はエレナに押し出された。
またコイツが暴れんのか
ビシィ
「そこで高みの見物してる上級気取りどもッ!!」
「よぉーく見てなぁ~!!」
エレナはSランクを指さし堂々と宣言。
こいつに恐怖という感情は無いのか?
「教官、止めなくて良いんですか?」
「もう俺は知らん・・」
教官の諦めにも似た横顔を背に、エレナは力を溜めだした。
「昨日は室内だったから、できなかったけど
屋外ならこんな事も出来るゥ!!!」
ジリリリリリリリ
エレナは先日と同じように雷属性魔法を自身に蓄える。
(なんだぁ?また超電荷か?)
―その時
ゴロゴロ…
なんと先ほどまで晴天だった空が急に曇り始めた。
ま、まさかっ!?…コイツっ!!
「ハハハァ!!見てるかぁー!?雑魚どもォォォォ!!
わたしは天候すらも操れるんだぞぉぉぉぉおぉ!!」
馬鹿野郎ッ!!
確かにお前の力はとんでもない。しかし、そのままいくとお前…
「学院を破壊するつもりかぁぁーーーー!!」
オルグがさすがに冷や汗ダラダラで叫ぶ。
俺もマズイと思い「力」を使おうとした瞬間―
ゴォ・・・
「ッ!?」
周囲の気温が急激に下がった。
「な、何だ!?」
スタッ
「ふぅ・・・間に合いましたか・・・」
目の前に現れたのは…!?




