第二十二話 この場を切り抜ける方法
「奥義:絶対零度…
範囲をできるだけ絞ったのですが、やはり調整が難しいですね。
ロビーから階段の方まで凍結させてしまいました。」
やれやれといった感じで呟くレイナ。
(そうか、凍結範囲の円周上だから俺はまだ凍結が甘かったのか…)
「さて、ところでエレナちゃん…まだ続けますか?」
レイナに問いかけられるが、エレナは既に虫の息。
うんともすんとも答えない。
―いや、答えられない。
と言った方が正しいか。
「返事が無い。という事はしょうがありませんね。
皆さんお願いします。」
後ろに合図を送ると何人かの生徒がぞろぞろと前に出てくる。
ソイツらはレイナの凍結フィールドに口を押えながらやってくると
ジュゥゥゥゥゥゥゥ…
その氷を溶かしだした。
どうやら炎属性魔法を扱う集団らしい。
「おえっ、、、ごほっ、、ごほっ」
身体の凍結が解けたのか、エレナがせき込み
力なく動き出した。
「私達は学院に居ないと報告があった三人
『ジョウ・ブラッディ』
『アレン・サンド』
『エレナ・イエロー』
を探しに学院を出立しました。
その際、大きな音が街中で聞こえ
気になり、駆け付けてみると運良くアナタを見つけたのです。」
レイナはグイっとエレナの顎を持ち上げ、
「で、エレナちゃん。
他の二人が何処に居るか知ってます?
聞く所によるとアナタはあの二人と仲が良かったと聞いてますが…」
その言葉を聞いた瞬間
ぐったりとしていたエレナの身体がビクリと反応した。
「…ハァ!?誰だよっ!!んな事言った奴はっ!?
わたしがあのクソ共と仲良しな訳ねーだろ!!
どこをどー見たらそう見えるんだよッ!!
…イテテ」
「ちょっとエレナちゃん。暴れないでください。傷が痛みますよ。」
「ハァ?元はテメェが付けた傷だろーがっ!!」
エレナはレイナを蹴ろうとするが、周りの生徒達に抑えられてしまう。
そしてこの俺、ジョウ・ブラッディはというと
さっきの炎魔法で俺の身体からも霜は降りていた。
その点は安心して良いが、これからどう立ち回るかという難題を突き付けられているのだ。
一番の懸念点はエレナの野郎が俺たちの存在をバラスことだ。
逆に今まで、何故存在を隠してるのかが不気味だが…
まぁ奴の事だ。
理屈は単純で頭の中は『強者』と戦う事しか考えていない。
あの場で俺達の存在を明かして、レイナの意識がそっちに向く事よりも
挑発して自分に意識を集中させたかった。といった所かな。
―って事は、レイナと闘うという目的を達した今。
エレナは俺達の事を隠す理由が無い!?
(マズイ…!!)
―――――いや待てと。
エレナは言ってたな
「わたしの性格をまだ理解ってないんじゃあないの?」って。
考えろ。奴が今何を考えているのか。
それが解れば俺もアレンも、そしてルシアたんも救う事が出来るはずだッ…!!
アイツは戦う事が好きだ。
その相手が悪か正義か、立場がどうこうだとかそんなの関係ない。
―そうだ…!!
俺の頭の中でピコーンとアイディアが浮かんだ時。
ガチャリ
廊下の奥の扉が開く。
「うひ~」
「!?」
フラフラと歩いてくるそれは、精気を完全に吸い取られ干からびたアレンだった。
(テメェ!!こんな怪獣大決戦が起きてるってのに一体ナニしてたんだよ!?)
アレンに続くように個室から出てきたのはメリッサ。
メリッサは満足げに舌なめずりしている。
その体はどこか艶っぽい。
そして遠くで倒れている俺とルシアの様子に気付いたのか、顔を青ざめこっちに近づいてくる。
「ちょ、ちょっと!!その傷どうしたの!?
…そんな『プレイ』ウチは許可してないけど。」
「…!!何言ってるんですか!?
違いますよ!!ほらアレ見てください!!」
俺は店の入り口の方のレイナ達を指さす。
そして散乱する店の様子や、廊下に転がっている淫魔や客たちに気付き、事態がタダ事ではない状況に気付いたようだ。
「メリッサさん、今からあの化け物達を納得させ、この店を救って見せます。」
そういって俺はルシアをメリッサの胸に預け、
ズキュゥン
「…ウホッ!!」
アレンに触手を突っ込んで精気を注入した。
「…!!ジョウどうしたんだ?ってか俺は何を」
「黙れ。今から奴らをどうにかするからお前には付き合って貰うぞ。」
「なんでちょっとキレてるんだよ。」
別にお前だけ楽しみやがって、とか思ってないぞ。
本当に。
「…エレナッ!?それに生徒会長まで居るじゃねぇかッ!?」
ようやく事態のヤバさに気付いたらしい。
「さぁ、行くぞッ!!」
「おい!?まだ何も説明されてないんだが!?」
俺達は、確かなる覚悟で店の入り口に続く階段を下りる。
きっと、メリッサさんには魔王に立ち向かう英雄の後ろ姿のように映っていただろうよ。




