第二十一話 凍結する電気(フリーズボルト)
ビリリ…
ゴゴオォ…
エレナとレイナ
互いに一触即発の状態。
電気で空気がバチバチと弾けているかと思うと、冷気がヒヤリと首筋を撫でる。
俺は瓦礫の影で呼吸が浅くなっているルシアたんを抱えていた。
(エレナが俺の事をどう思っているかは知らねぇが、この機会利用させて貰うッ…!!)
おそらく奴の思考的に今はレイナの事しか考えてないはず。
あの戦闘さえ邪魔しなければこっちに構ってくる事は無いだろう。
(とにかくアレンと合流だ…!!)
こんな事態になっても出てこないアレン…
何やってんだよ…!!
足音を潜め、階段を上がる。
ドガシャーーン!!
「…ッ!!」
電気を纏ったエレナがレイナに突っ込んだ音だ。
バリバリバリバリ…
「…この突撃を正面から受け止めるとはさすがSランクねッ!!」
レイナは美しい立ち姿のまま、片手でエレナの身体を受け止める。
エレナの身体からは、絶えずにビリビリと電気が溢れている。
その顔は興奮が溢れ切らずに戦闘を愉しんでいる。
「やれやれ…本当に戦るつもりなんですね。」
レイナは一瞬ためらった表情を見せ
「…ハァ!!」
ピシャァァァァァァン!!
レイナはエレナを掴んだまま、あの演習場で見せた氷結を半径数メートル程度で生成した。
「…はぁ、これで少しは頭が冷えましたか?」
あの時と同じようにエレナは氷に閉じ込められる。
「…ッ」
何か言いたげだが、凍ってそれどころじゃ無さそうだ。
「ふぅ、皆さん。
ではガサ入れを開始してください。」
レイナは虫を殺した後のような
何事もない態度で後ろで待機していた生徒達に合図を送る。
しかし一人の生徒がレイナの後ろを指し…
「れ、レイナ様ッ!!」
ピシ…ピシ…
パリーン!!
先程、一瞬のうちに氷漬けにされたはずのエレナが、なんと氷から脱出した。
―そして
バリバリバリバリ…
バゴォン!!
「うがっ!!」
迸る電流を纏った右ストレートがレイナの顔面に炸裂した。
「ククク、なに勝った気になってんだぁ?この『タコ』ォ!!
『Sランク』だからって油断しすぎじゃあない?」
吹き飛ばされた衝撃で理解が追い付いていないのか
顔を手で押さえるレイナ。
「どんな勝負も一瞬で終わらせすぎて、勉強不足なのかしら
どれだけ天井に至っても向上心を忘れちゃあダメよ。」
「…一体何が起きたの
―まさか!?」
「そう!!
前は初見だったから対処できなかったけどさァ~
さすがに二度目となると対策考えちゃうよねェ~」
良く見るとエレナ、片方裸足だ!!
「へっへ~ん
わたしはまたあの攻撃が来た時の対策として
靴に砂鉄を仕込んでおいたの。
凍り付く直前に電気で足と靴の間に空間を作り靴だけを凍り付かせた訳ッ!!」
「一部分でも身体が動かせちゃあ、魔法は発動可能!!
その後は雷魔法の衝撃で氷を粉砕してやったわ。
―さて」
エレナは片手を構え再び戦闘態勢を取る。
「…続きといこうかしらねぇ」
バチバチバチバチ
電気の弾ける音…
パンッパンッパンッ
レイナは手を叩き、砂を落とし
ゆっくりと立ち上がる。
「確かに、少々見くびっておりました。
あの氷塊を破られてしまうとは…
エレナちゃんが言うように私もまだまだ勉強不足かもしれませんね。」
深く息を吸い込み呼吸を整える。
「…この技は周囲を巻き込んでしまうのであまり使いたくは無いのですが…」
そう言って周囲を見渡すレイナ。
「まぁ、周りには倒れてる人しかいませんし大丈夫でしょう。」
レイナの後ろで控えている生徒達は、急いでレイナから離れ口を押さえる。
「…あ?」
エレナは警戒するが、その場からは動かない。
すぅ。と息を吸い、体に力を込め
胸に手を当てるレイナ。
ゴゴゴゴ…
周囲の気温が一段と下がる。
(なんか、ヤバそうだ…!!)
階段でレイナとエレナの様子を眺めていた俺は、底知れぬ生命の危機を感じた。
ルシアを背負って早くは動けないが一歩でもこの場から離れようとする。
ヒュッ
―次の瞬間
目の前が一瞬白くなったかと思うと…
「…ガッ、、、ハッ、、、!!」
(呼吸が出来ないッ…!!)
何が起きたかは分からないが、俺の身体に起こっている事は、肺が凍り付いて上手く呼吸ができないという事だ。
ギギギッと動かない首を無理やり動かし、レイナの方を見る。
(…!?)
レイナの周囲の壁や床には透明な氷のベールが貼られており、天井からは氷柱が出来ていた。
まるで一気にその場所が氷の洞窟内になったような…
「カハッ…!!」
どうやら真正面から喰らったエレナは、身体を動かす事すらままならないらしい。
そう、肺すら動かせずに呼吸できないようだ。
レイナの前で倒れ伏し、ピクリとも動かない。
冷凍保存されている魚のように。
(良かった、この距離で…)
しかし、呼吸するだけで胸が張り裂けそうになる。
―これがレイナの奥義…!!




