第二話 決闘
俺とエレナは、学園内にある荘厳な雰囲気を放つ闘技場に案内された。
クラスの連中もギャラリーとしてこのコロッセウムを囲む観客席にぞろぞろと座りだす。
「お前ら、どうせなら派手にやってくれェ!!」
アレンの奴が客席からヤジを飛ばしやがる。
どうやらこの学院『決闘』がエンターテインメントの一つになっているらしい…
「いいか、テメェら。今回の試合の目的は、あくまでお互いの実力を俺に見せることだ。ポイントは気にするな。武器、魔法、反則スレスレの手だろうが、なんでも使ってオーケーだ」
オルグは俺とエレナの間にヌッと立ち、右手を振り上げ試合開始前の構えを取る。
両者、一触即発の睨み合い。
「おい、お前。あんま早く『くたばって』くれんなよォ?わたしの『力』をそこのおっさんにアピールできなかったら…責任取って退学しろッ!!」
エレナは不敵な笑みを浮かべ、舌なめずりをしながらビリリッと威嚇してくる。
「テメェこそ、今のうちにできるだけアピールしておいた方が良いぜッ」
俺はエレナをビシッと指さす。
しんと、闘技場を一瞬の静寂が包んだ後…
「はじめえ!!!」
オルグの腕が鋭く振り下ろされた…
────────────瞬間
バチィッ!!
(なに、奴の姿が消えた!?)
エレナが立っていたはずの石畳には、少しの焦げ目とチリチリと燻ぶる雷魔法の残滓のみ…
(どこに消えやがった…?)
俺が辺りを警戒しようとしたその時
ズガァッ!!
背後に丸太がぶつけられたような重い衝撃が走った
「ガハァッ!?」
自らの意思とは反し、無様にも地面に身体が叩きつけられる。
見上げるとそこには勝ち誇った顔でニヤニヤと笑うエレナの姿があった。
「ハァーッハッハッハ! わたしの電気はただの『雷魔法』じゃあない!! この雷を『身体強化魔法』として己の肉体にもブチ込めるのさァ!! 筋繊維に電流を流しこみ、その運動性能を何百倍にも膨れ上がらせるって訳ッッ!!」
「チィッ、クソが‥‥!!」
反撃すべく、すぐさま体勢を立て直そうと地面に手をついた、まさにその時
ビリビリビリビリィ
「な、なんだぁ!?」
(身体が痺れて動けない…!!)
「おっとぉ、無理に身体を動かさない方がいいぜ。さっきの蹴りには、わたし特性の『雷』をたっぷりと纏わせておいた。時間差でアンタの身体を痛めつけるのさッ!!」
「そしてぇ!!」
エレナが、完全に獲物のトドメを刺す猛獣の『構え』を取る
バチバチバチバチバチィィィッ!!
ヤツの全身から迸る異常な高電圧によって、闘技場の空気が一変し周囲の空気が弾けだした
「ウォォォォォォォォォォォォォォォーーーッ!!」
凄まじい魔力の奔流。限界突破のエネルギーを受け、エレナの両の『瞳』が、そしてまとめ上げられた金色の『髪』が、 まるで超新星の如く目も眩むような強烈な閃光を放って輝き出す…!!
――しかし、俺はその隙を見逃さなかった。
「待ってたぜェェッ!!この瞬間をよォォォォォォォッ!!」
パチンッ
己の指を鳴らし、遂に能力を解禁する。
俺の能力は「時間停止(束の間の休息)」
時を5秒間止める事が可能だ。その後、1秒間のクールタイムが発生する。
さらに、止めた時の中での『力』や『衝撃』はすべて蓄積され、時が動き出すと同時に一気に解放される。
なんと、連続使用が可能
控えめに言っても…文字通り「反則」だよな
俺はあらかじめ仕込んでおいた、水筒を取り出し、奴の身体にその中身(水)をぶちまける
「やれやれ…テメェが『雷使い』だと分かった瞬間、この作戦がピーンと脳裏に浮かんだのさ。お前が最高出力の魔力を放出するその瞬間まで、、、な」
パチンッ
再び時が動き出す
ズドバァァァーーンッ
「ギァァァッァァァァァァァァァァァァッ!!」
闘技場にエレナの叫びが鳴り響く
己の最大出力の『魔法』が、全身に浴びせられた『水』を伝ってショートし、自らの肉体を容赦なく焼き焦がしたのだ
バタンッ
「く、くそっ!!な、何が、、、起き、た?…」
エレナは周囲に飛び散る水飛沫を見て激しい困惑の表情を浮かべた。
「み、、、『水』?で、、でも、、、ど、どこ、、から?」
俺は地面に這いつくばる奴を見下ろし、こう言い放つ
「魔法だよ。俺の『魔法』だ。」
そこへオルグが慌てた様子で駆け寄ってくる。
「おい!ジョウッ!!!!なんだァ?今のはッ!!」
「教官…報告し忘れていたんですが…俺、身体強化魔法のような高速移動、いわゆる『瞬間移動』みたいなことができるんです。それを利用して近場にあった水溜まりをエレナにぶつけました。」
(と、いうことにしておこう…)
そう。
俺の異能「時間停止(束の間の休息)」は誰からも知られていない状態が一番真価を発揮する。だから俺は目立ちたくないんだ。
「そうか…だがお前の魔力測定の数値は『0』で、魔法適性検査では『適正無し』と報告を受けているが…」
「タハハーッ‥そりゃあエレナに聞いてみてください…」
(おそらく魔力ゼロ細工作戦は失敗だな…)
「まぁいい、分かった。お前の報告書を修正して上に提出しておこう。ところで、その『瞬間移動魔法』の練度少なくとも『D』には上がれると思うがどうする?」
「いえ、試験の異常は俺の責任でもあります。しっかりとFからランクをスタートさせますよ」
「フンッ、ガッツがあるな…」
そういってオルグは視線を俺からエレナへ移す
「そして、『エレナ・イエロー』ッ!!確かにお前の魔力量、魔法の応用力、そして『雷属性魔法』の適性は見上げるものがある。しかしその性格ッ!!…貴様は『Fランク』だァッ!!昇格は無ァイッ!!」
「そ、そんなぁ~!!」
(結局、俺が突っ込んだことと同じ事をいわれてやがるじゃあねぇか…)
その場で子供のように駄々をこねるエレナを横目に俺はすっかり肩の力が抜けるのを感じた。
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闘技場から少し離れた高台…先程の決闘を見ていた影が二つ…
「見た?今の試合」
「うん。『雷の子』凄かったねぇ~」
「いや、そっちじゃなくて…
あの男の方、どんな『魔法』を使ったのかしら?」
「あぁ、そう?『水魔法』じゃなかった?すごく微力だけど」
「…あなたにはそう見えたのね。私は彼が瞬間移動したようにみえたけど」
「ってことは、無属性の移動魔法と、属性魔法を両方使えるのかしら?属性を複数使える子はかなり珍しいわよねぇ~」
「そうね。彼について少し調べてみましょう…」
この二人は一体…!?




