第一話 ジョウ・ブラッディ
ユーラス大陸の西に位置する巨大都市「フィルメリア王国」
その首都「ロンド」
その中心に位置する「神聖アルストテリア王立学院」
そこは、冒険者を育成する為の養成学校であり、ここの「卒業資格」がなければ、冒険者として認められない
資格を持たない冒険者はこう呼ばれる…
「ドロップアウト」と
この学院、入学自体は驚くほど簡単だ。
しかし卒業するとなると、その難易度は一気に跳ね上がる。
ここに一人…漆黒の髪をなびかせ、瞳に紅玉のような煌きを宿す少年がいた…
俺、『ジョウ・ブラッディ』は今日からこの学園に入学する。
本当なら、片田舎でまったぁりと過ごすつもりだったんだが、ウチの両親からいい加減仕事に就けと半ば強引にこの学園に押し込まれた。
最後に聞いた言葉は確か…
「冒険者になるまで、戻ってくるんじゃあないッ!!」
だったか?
そんなこんなで入学前の魔力測定と魔法適性検査が終わり…
新入生のクラス分けが張り出された巨大な掲示板の前
「(やったぜ!!)」
俺は内心、天を突くほどの力強いガッツポーズをした。
示されたランクは『F』ッ!!
つまり、S、A、B、C、D、E、Fと続くこの学園の階級制度において、最下層のクラスって訳。
ククク…**『計算通り』**ッ!!
そう、俺は『目立ちたくない』のだ。
俺はとある異能を持っているのだが、その能力は極めて「特殊」…
誰にも知られていない状態こそが最も威力を発揮する。
ゆえに、入学前の『魔力測定』と『魔法適性検査』の際、ちょろぉ~と細工をしておいたのだ
計画が思い通りに進んだことで、知らず知らずのうちに笑みが浮かんでしまっていたのだろう…。
不意に、横に立っていた男が話しかけてきた。
「なんだぁ?やけに嬉しそうじゃあねぇか、初手から『Aランク』でも引き当てたってぇのか?」
ソイツは俺と同じくらいの背丈だが、やけに整った顔立ちに、オレンジがかった
髪を遊ばせている男だった。
「いや、俺はFランクだぜ」
俺が答えると、ソイツは一瞬困惑の表情を浮かべた後、何かを理解したように軽く笑い
「ハハッ、なるほどな。『諦めの笑顔』ってわけ、か」
ポンッ、と俺の肩を叩き
「俺も同じ。正味絶望してる」
どうやらコイツも俺と同じ『Fランク』らしい…
するとクラス分けの結果を知った周囲の連中も騒ぎ出した
「おい、マジかよ…!!お前Fランク!?じゃあ卒業は絶望的じゃあねぇか!!」
「クソッ!!最初のクラス分けで少しでも上のランクになることが重要だってぇのによぉ!!」
「俺は少なくとも5回『昇格戦』に挑まなけりゃあいけないのかぁ…」
「お前、Sランクを見たことあるか?一回見ただけでも分かるぜ…昇格戦でアイツらに触れるのは『不可能』って事がよぉ!!」
ふーん…『Sランク』ねぇ。
…どうやらランクを上げる為の『昇格戦』ってやつでソイツらに触れる必要があるらしいが。。。
この学院が公式に定めているルールなんだ。できねぇって事はないだろ
だとしたらこの学院、留年者ばかりになるぞ…?
そんな事を考えながら、俺は本校舎から少し離れたFランクの教室がある別館へと足を進めた。
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「うげっ!?」
Fランク教室に入るや否や俺はこの学院の恐ろしさの片鱗を味わうことになる。
どうやらこの学院、ランクによって待遇も違うらしい。
我らがFランク教室は昼間なのに薄暗く、天井の魔灯石は半分切れかけ、椅子や机はボロボロ、窓も半分空いたまま。おそらく建付けが悪くなっており閉じる事が出来ないのだろう。
教室の生徒の雰囲気もなにやらどんよりとしていた。
これが王立学院の姿か…?
俺は仕方なく空いている席に腰掛ける。
ギシィッ…!
椅子が、まるで断末魔のような不快な音を立てやがった。
「お、見ねぇ顔だな?新入りか」
くるり、と振り返ると赤っぽい髪の、顔つきは親しみやすそうだが、その瞳の奥にはどこか拭いきれない『諦め』がこびりついている青年が、じっとこちらを見つめていた。
「あぁ、俺はジョウ・ブラッディ。お前は?その口ぶり、結構ここにいんのか?」
「俺は『アレン・サンド』だ。ダブってる」
ニヤリと自嘲気味に笑いながら、2本の指を突き立ててみせた。
「今日からよろしくな」
その言葉にはどこか…
今から始まる地獄への『哀れみ』とも『同情』とも取れる感情が乗せられているような気がした
「お前ら、席に就け」
しばらくして扉を豪快に開き現れたのは、
ガタイの良い白髪交じりのオールバックのイカツイ男だった。
「さて、もう全員揃ったと思うから挨拶させてもらう。」
「俺がこのFランククラスの教官を担当することになった。『オルグ・シルバー』だ。」
「今日からお前らにはみっちr
バゴォォォーーーンッ!!!
オルグがオリエンテーションを始めようとした
まさにその瞬間!!
教室のドアが、何者かに蹴破られた
「おい!!この中に『強ェヤツ』はいんのかァーーッ!?」
扉の向こうから姿を現したのは、金色の髪を二つお団子に纏め、瞳が獲物の血肉を求める猛禽類の如く、完全にブッ飛んでキマッている、全身に微弱な電気を纏った少女だった。
ソイツはしばらく教室を見渡した後、俺に目をやる。
ん?…俺はアイツの事を知ってるぞ…!!
あれは魔力測定の時…
~~
(よし、細工は完璧、俺の手から一切の魔力が放出しないようにしたぜ!)
そう、俺が魔力を測定する『魔道具』へと手を伸ばそうとした、まさにその時!!
「ねぇねぇ」
「?」
そいつは唐突に俺へ話しかけてきたのだ。
そして、やけに爽快な、まるで試合前の戦士の固い握手を求めるが如く、その右手をスッと差し出してきたのだ。
「わたしは『エレナ・イエロー』!!君も新入生?同じクラスになれたらいいねッ!!」
「? あァ…よろしく頼むぜ」
そういって俺がソイツの手を握った瞬間ッ!!
ビリリリリリリリィィィィィィィィィィ!!!!
「うげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺の身体に100万ボルトはあるかのような電気魔法が流し込まれたッ!!
「なぁ~んだ、雑魚じゃん」
ビリビリと痺れブッ倒れている俺の事など、路傍の石っころほどにも気に留めず、そいつは小馬鹿にしたように鼻で笑うと、スタスタとその場を歩き去っていったのだ…
~~
ガタンッ
その忌々しい出来事を思い出し、俺は借りを返すかのようにソイツに殴りかかったッ!!
「あの時は世話になったなァァァァァァ!!」
スッ
「ちょいストップ」
俺の顔の前にソイツの右の掌が突き出される。
「わたしは抗議しに来たの」
今までのやり取りを眺めていたオルグが低く声を上げる。
「抗議?」
「そう!そうなんだよぉ~!!」
そしてソイツ、雷野郎は語りだした。
「入学前の連中に片っ端から電流を流してたからか分かんないけどさ、急に体調が悪くなっちゃってぇ~。魔力測定も適性検査も、わたしの『本来の力』がぜ~んぜん発揮できなかったのぉ!
だ・か・らッ!
もう一回、わたしを審査し直すように頼みに来たってワケ!!」
(な、何を言ってるんだ…このアマは!?)
あの電撃…俺だけじゃなく見かけた奴全員にぶち込んで、片っ端から、スタンさせていったのかよ!!
俺はコイツのイカレ具合に恐怖を抱きつつ内心突っ込む。
(例え実力が『Aランク』以上あっても、テメェの性格じゃあ、Fに逆戻りだぜッ!!)
するとオルグが声を上げた
「ちょうどいい。お前ら二人…その有り余る熱意『決闘』でぶつけてみる気はねぇか?」
「???どういうことです?」
オルグは何かあらかじめ考えていたかのように語りだす
「ジョウ…ちょうど今、テメェには『入試不正の疑い』がかけられていてなぁ」
「テメェが受けた魔力測定および魔力適性検査のデータに、ありえねえ『異常』が見つかったそうだ」
「上からの指示で、テメェが本当に『Fランク』なのかどうか調べろと依頼が来ていたところだ。ちょうどいい機会じゃあねえか。そこの血の気が多い奴と一戦ヤッてくれたら、俺としては一石二鳥ってわけだ。」
(な、何ぃ!?)
俺の完璧な細工がバレたッ!?
─────────なるほど。
俺は、目の前でチリチリと火花を散らしているソイツを見て…すべてを『理解』した!
あぁ…間違いねえ、きっとコイツのせいだッ!!
コイツからブチ込まれたあの想定外の電撃のせいで、俺の完璧な作戦に、わずかな綻びが生じたのだ!!
そう直感した瞬間、無性に俺の闘志が湧き上がる・・・
「…おい。テメェ『強ェヤツはいるか?』とか聞いてたな。教えてやる。いるぜ…」
「ここにな!!」ビシィ!!
初投稿です。
拙い文章ではありますがよろしくおねがいします。




