第十六話 再びの決闘
「おい待っ―
エレナに正体を教えようとしたが
聞く耳を持たず、雷魔法を自身に纏わせるエレナ。
こうなるともう説得は無理だ。
説得するにしても、まずは野郎を落ち着かせないと。
俺とアレンは顔を見合わせる。
俺達の目的は、目の前の狂犬を『倒す』事に決定した。
(最悪だぜ…。この短期間で、二度もコイツと戦りあう事になるなんてなぁ…)
つい先日の『決闘』を思い出す。
あの時は水をあらかじめ準備しておいたが、生憎今は持ち合わせていない。
ここは排水溝のようだが、周りが湿ってるだけでコイツをショートさせられそうな量の水分は無さそうだ…
―しかし、今はあの時と状況が違うッ!!
俺には、仲間が居る。
一対二だ…!!
しかも俺達は普通の姿じゃあない…!!
この触手を使えばあの暴れ馬も止められる…ハズ!
「魔人は即殺だぁーーーーー!!」
電気を纏って突っ込んでくるエレナ。
(やっぱコイツは初手特攻するのが好きなんだな。)
さて、どうする?
①触手を伸ばして拘束する。
結果 エレナが掴まれた状態で放電し、そこから触手を伝って俺たちが痺れる。
②触手を伸ばして直接ぶっ叩く『ヒット・アンド・ウェイ』
結果 この不器用な触手使いだと、奴の素早さで全部避けられるかあるいは、掴まれてそこから触手伝いに通電…最悪ぶった斬られる。
(触手を伸ばす戦法はナシだな…)
ってかそもそもこの触手、人にぶつけても威力が出なさそう…
人体を破壊できるようなパワーはモンスターの筋繊維あってのモノ。
つまり時間停止で奴を拘束して、殴りまくっても効かない可能性があるか…
――――しかし!!
今まで考えた戦法はあくまで俺一人で戦う事を想定している…!!
そう、あの時とは違うっ!!
俺は一人じゃあねぇ!!
「アレン!!奴が近づいて来る前に早くッ!!石を出せっ!!」
「おいおいまたかよ!!でもよぉ…あの速さじゃあアイツを転ばせる事は出来ないぜッ?」
「いいから、俺を信じろっ!!」
「‥‥ッ!!わぁーたよっ!!やりゃあいいんだろ!やりゃあ!!」
アレンはまたまた、顔を真っ赤にして力み、デカい石を一つ生成した。
「っはぁ!!限界だ…もう動けねぇ!」
「十分だ!!」
今回は状況が状況なんで
コイツを使わせて貰う。
―『時間停止』―
瞬間―
周囲の空間が、あれほど高速で迫ってくるエレナすらも完全に静止した。
俺はというと
ガガガガガガガガガガガガガッ!!
アレンが出した石を、思いっきり殴りまくった。
(殴れるだけ殴ったが…)
―再び時が動き出す。
俺の時間停止の効果―
止めた時の中で蓄積された力は、時が動き出すと同時に一気に解放される。
バリンッ
そう、殴る力の一つ一つは微力だが、それが積み重なれば石程度だと粉砕する事が可能なのだ。
それは粉塵のように周囲に広がりエレナに降りかかる。
「んだコレは…?…『砂』っ!?」
しかし、勢いは止まらずエレナは俺達の方に突っ込んでくる。
「ヤバい!?ジョウ!!あの程度の目眩しじゃあ、アイツは止まんねぇよ!!」
「目眩しなんかじゃあねぇ」
―俺達の目の前に到達したエレナの体は、先程までのバリバリ迸っていた稲妻が嘘のようにさっぱりと消えていた。
「………まさか!!」
「あぁ、テメェの電気は周囲に分散させてもらいましたぜぇ!!」
「…ッチ!!」
エレナは目を丸くしてその場で立ち尽くす。
どうやら電気を放出したくても出来ないらしい。
(よし!おとなしくなってる今のうちに、触手でエネルギーを吸い取ってやる!!)
そうやって奴の首筋に触手を伸ばした瞬間―
ブチィ!!
伸ばした俺の触手が勢い良くぶった切られた。
「っ痛ってぇーーーーー!?」
(何が起きたっ!?)
恐る恐るエレナの方を見る。
「ヒッヒッヒッ…この程度でわたしを倒せると思ったのかよぉ?クソ魔人共ォ…」
コイツ…!?
そういえば…
何かコイツの魔法の特徴で忘れていることが…?
――――
「ぶごぁ!!」
そんな事を考える隙も与えず、俺の顔面に右ストレートが炸裂する。
「ジョウッ!!」
吹っ飛ばされながら奴の姿を確認する。
ビリリッ
青白く迸る閃光は奴の体内で流れているように見える。
「私の魔法はよぉ…外だけじゃなくて中にも流せんだよぉーーーー!!」
(ハッ…!!そうか雷属性魔法の身体強化への応用…!!)
「わたしの電気を封じたくらいで、なに勝った気になってんだ?このボケがぁー!!」
ドカァ
ボコォ
バキィ
抵抗する隙すら与えられず、俺はエレナに怒涛の殴る蹴るのラッシュを浴びせられる。
「今日はむかっ腹が止まらないせいか、いつもより雷魔法の調子が良いぜぇーーーー!!」
(し、死ぬッ!!)
「や、やめろーッ!!」
薄れゆく意識の中、俺を押しのけアレンが前に出る。
「ヒャハハ!!飛んでエレナちゃんに入る触手魔人ってかぁー!?」
ズドォン
アレンは蹴り飛ばされ、壁に吹き飛ばされた。
「アレンッー!!」
エレナは俺の服を掴み、顔をまじまじと覗き込んでくる。
「ヒヒヒ、冥土の土産にテメェの顔を拝んでおくよ。わたしは倒した奴の顔を記憶に刻んでおくのが好きなんだ‥‥って、えぇ!?」
(この狂犬…ようやく気付きやがったか)
「ジョ、ジョウ!?なんでアンタがこんな場所に居んのよ?ってかこの姿ナニ?」
先程までの殺人鬼フェイスはエレナから消え、興味津々の子犬みたいな顔になった。
「イテテ…だから最初から言ってるだろ。俺達だって」
「ごめんごめん、学院に潜入しに来た魔人かと思っちった。」
(まぁ、そりゃそうか)
「所で、何でこんな所にいんの?
私はさぁオルグに拘束された時の脱出ルートを模索してたんだけど。
あとその触手、キモいからやめてくんね?」
うげっとした顔で俺の蠢く触手を指さすエレナ。
「そうか…いや実はよぉ
王都にいった時に変な薬飲まされてさぁ、こんな姿になっちまったんだ。
学院の皆に騒がれないようにこっそりと医務室に行こうとした訳。」
そして俺は、壁際で伸びてるアレンに駆け寄る。
「おい、アレン起きろ。さっさと行くぞ」
俺はアレンを担いで、天窓を開ける。
「お前も大概にしとけよな。」
「うるせー」
(危ない危ない………『試合』には負けたが『勝負』には勝ったな)
思わずニヤケてしまいそうになる面を必死に抑えていた。
するとアレンが意識を取り戻し―
「俺はまだルシアたんに会えていないっ!」
(バカッ!!何してんだよっ!?)
奴が俺の腕の中で暴れた瞬間―
ヒラリ
俺のポケットから落ちてはいけない紙が落ちた。




