第十五話 一筋縄ではいかないぜ
俺とアレンが困惑していると、その淫魔はトテトテと俺の横に小走りで近づいてきた。
そして
「この触手、凄く…好き」
なんと、その淫魔は俺のこの触手に頬ずりしてきた。
「あ、おい!!ジョウずるいぞ!!」
(なんだコイツはぁ!?)
半ば嬉しさもあるが、ひとまず冷静に処理することに。
「あのー、ちょいと手が動かしづらいんですが」
「わわっ!!すみませんそういうつもりじゃあ無いんです。」
そういって、淫魔はパパパッと手を振り否定する。
淫魔
昔話で聞いた話。
深夜、寝ている男性の枕元に現れ精気を吸い取って去っていく。
まさに一晩の忘れられない淫夢。
そんな、男の憧れであり、全男性の羨望の対象。
しっかし、何で淫魔がこんな街中に居るんだ?
騎士団の連中は何やってんだよ。
するとその淫魔は、尻尾を振って嬉しそうに話しだした。
「あの、私淫魔の『ルシア』って言います。驚きました。
この王都に私達以外の同種が暮らしているなんて!!」
「「え?」」
今、なんて言った?
私達以外の同種?
もしかして俺達魔物と勘違いされている?
「さっきは物珍しさにあの人達に乱暴されそうになっていたのですが…
助けていただきありがとうございます!!」
深々とルシアは頭を下げる。
「これささやかですがお礼の品です。」
そう言って、その薄着のどこから取り出したのかは分からないが、照れくさそうに両手でちみっと何かの紙を渡してくる。
そこに書かれていたのは…
―――――ピンク・サンドイッチ―――――
アナタに永遠の忘れられない夜の体験を…❤
――――――――――――――――――――
(―――ッ!!)
こ、これは
大人のお店の招待券だっーーーーー!!!
隣でそれを覗いたアレンはブフォと鼻血を吹き出した。
「では、今夜待ってますね❤︎」
ルシアは俺の耳元で囁いて飛び去った。
その囁きだけで脳が溶ろけそうになり、股の付近が熱くなるのを感じた。
―コレが淫魔の力?
「おい、ジョウ、こりゃあとんでもなくハッピーじゃあねぇか?」
溢れる鼻血を抑えながらアレンが言う。
「おい‥‥アレン、本気か?俺達まだ子供だぜ?」
「だからこそだよ!!こんなチャンス滅多にねぇよ!!
普通のガキだったらこういう店には入れねぇが、今の俺たちは魔人だ!!
今夜は楽しもうって!!」
凄い気迫でアレンは迫る。
「まさか、ハッピーストリートに淫魔が働く夜の店があったとはなぁ〜」
頭に腕を回しながら歩くアレン。
もう既に空想の世界に入っちまってるらしい…
(コイツお気楽に考えすぎじゃね?)
しかし、さっき囁かれたあの感覚が脳に焼き付いて離れない。
思い出すだけでも心臓の鼓動が早くなり、下腹部が熱くなる。
‥‥スカしててもしょうがねぇ!!
俺も男の子だからな!!
「じゃあ、今夜行くぞっ!!」
俺とアレンは肩を組みながらウキウキでハッピーストリートを後にした。
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俺達は、ハッピーストリートを少し出た川の土手の辺りで作戦会議をすることに。
「そうなると、この姿を維持するために『ブラック・アップル』は後日行くことになるが…いいか?」
「おうよ!ピストローネさんは大体あそこにいるからすぐ会えるさ!!」
「じゃあよぉ、学院の門限はどうする?」
神聖アルストテリア王立学院の学生寮にはもちろん門限が存在する。
門限は十九時。
つまり俺達は一度、寮に戻り学院内に存在を示した後で隠れて学院を抜け出す必要がある。
するとアレンは、クククと顔を暗くして笑い
「この学院に長くいる俺が、秘密の抜け道の一つや二つ知らないわけないだろ?」
(さてはコイツ頻繁に夜中出歩いているな?)
しかしこの時だけは、コイツから後光が差しているように見えた。
「この触手はどうするよ?たとえ戻れてもこの姿じゃあ怪しまれるんじゃあないか?」
「とりあえず、ほらよ」
アレンはそういって、懐から紙袋を取り出す。
「とりあえず、学院まではこれを被せよう。町の奴らに通報されたらたまったモンじゃあねぇからな」
どこで拝借してきたのか?
…とまぁ、今は疑問は置いておこう。
触手部分に袋を被せ、俺達はぎこちない動きで学院を目指す。
町を歩く奴らには、やはり奇異な目で見られたが少なくとも通報されることは無かった。
そして遂に学院の裏口へとたどり着く。
半分朽ちている壁に大きな丸い穴が空いていて、その周囲は草木で覆われている。
周りに人気も無く、どうやら本当に隠しスポットらしい。
「もう袋とっても良いだろ。中が汗だくで気持ち悪いぜ。」
そういって袋を取り、ペタペタと足音を立てながら排水溝みたいな場所を通る。
端から見れば確実に、学院に潜入しようとしてる魔人二人組にしか見えねぇ。
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「ふぅ、あと少しだな。」
天井から僅かに差し込む光が見え、無事に外に出れそうな事に安堵する。
「やったな!!後は寮にこっそり忍び込んで夜を待つだけだ。」
俺とアレンはハイタッチ(触手)をして
排水溝の天板に手をかける。
―その瞬間
―――ズドォォォォォォォン!!
俺の全身に重い衝撃が走った。
だが、初めてでは無い感覚だ。
今まで感じた事がある。
(重い衝撃の中に、ビリリと痺れる感覚…これはっ!!)
「「エレナっ!!」」
振り返ると、そこには電流を迸らせる少女がいた。
奴の身体が青白くぼんやりと妖しく光る。
暗がりだからか余計に、纏っている雷魔法が目を引く。
「なぁんで、こんな所に魔人が居やがるんだ?
‥‥まぁいいや。
わたしは今、虫の居所がワリぃんだよ。」
バチバチと音を立て威嚇してくる。
そしてニヤリと笑うエレナ。
「テメェらは今から、わたしのサンドバッグ確定だぁーーーーー!!」
やばい
今、一番会いたくない奴に出会っちまった…!!
エレナ(狂犬)再び登場…!!




