第十四話 路地裏で女の子が襲われてたら助けるしかねぇだろ!!
俺達は走っていた。
『ブラック・アップル』を目指し、ペタペタとまぬけな音を出す蛸みたいになった足を必死に動かす。
触手が何本もあるんで足の運びを少しでも間違えたらずっこけそうになる。
そりゃあもちろん周りを歩いている連中からは奇異の目で見られまくったぜ。
中には「魔物だーっ!!」って騒ぎ立て、騎士団を呼ぼうとする奴まで居やがった!!
『ピストローネ・ミシュラン』…!!
一体あの料理に何を入れていたんだっ!!
俺達が雑踏を掻き分け、道を進んでいると
ガシャンッ!!
ふと路地裏から奇妙な音が聞こえた。
俺は立ち止まったが
「おい!!ジョウ何してんだよっ!!
はやくピストローネさんの所に行かねぇと、俺達一生このまま『触手型魔人』として生きていかなきゃあならねぇぜ!?」
青ざめた顔でアレンは触手をペチペチさせながら、慌てる。
表情と身体の動きが釣り合っておらず、思わず吹き出しそうになった。と同時に俺は少し冷静になった。
「なぁアレン?一つ思ったんだが、どちらにしろ『ブラック・アップル』には行くんだ。
…だったら少しばかりこの身体を楽しんでもいいんじゃあねぇか?」
そういって俺が指し示したのは、路地裏で巨漢二人に襲われている、薄着の女の子。
俺とアレンは見つめ合いニヤリと笑い合う。
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「ヘーイ!!こんな薄暗い場所で女の子をいじめるなんて良く無いんじゃあないの?」
「それも二人がかりってよぉ。そりゃあ男のする事じゃあないぜッ!!」
俺達はビシッと奴らを指し示し言い放つ。
女を拘束し、今にも身ぐるみ剝がしそうな勢いだった男らが振り返る。
「あぁ、なんだぁ?テメらぁ」
「ガキじゃあねぇか―」
「って」
「「何だお前ら!!」」
どうやら奴らは気づいたらしい。
俺たちのこの奇妙な姿に
―だが、もう遅いぜ!!
俺達は触手と化した腕を奴らへ向ける。
「ヒィィィィィィ!!な、何なんだぁー!!その手はー!!」
「お、お前らまさか魔人なんじゃあ!?」
男ら二人は恐怖に慄き、後ろへ後ずさる。
「おい、アレン!俺は結構この身体も馴染んできたんだがよぉ、お前はどうだ?」
「俺はまだだね。うっかり力加減間違えて絞め殺しちゃうかもなぁ…」
ジリジリと男たちに詰め寄る俺達。
「その子を放しなっ!!放さないってんならよぉ…」
「この俺達の触手がじっくりとテメェらを蝕むぜっ!!」
すると、さっきまで怯えていたソイツラは何を思ったのか
急に不穏に笑い出した。
「…ククク、これだからガキはよぉ」
「俺達は魔物とやり合うのなんて日常茶飯事なんだぜ?テメェらのその制服。
あのクソ学院の奴らか?
やっぱり噂は本当だったみてぇだな。生徒の命も顧みない危険な教育をするってのはよぉ」
「お前らも可哀そうだな。真面目に正規ルートで冒険者になろうとしたらそんな身体になっちまうなんてよぉ。どうせ鬼畜授業の影響だろうよ。」
「テメェら…まさか『ドロップアウト』か!?」
ドロップアウト…
それは神聖アルストテリア王立学院の卒業資格を持たずに冒険者活動をする輩の事…!
「そうだよ!!だがそれが何だ?所詮、冒険者とドロップアウトの違いなんて国が勝手に決めたルールに過ぎない!!」
「アイツラはわざと冒険者になるハードルを上げて、活動を統制し資源を独り占めしようって魂胆だろうよ!!」
「俺達は元から自由!!冒険者活動をしてはいけないなんて国が勝手に言ってるだけだぜぇー!!
だからなぁ、何をしようと勝手なんだよぉ!!」
はぁ…やれやれコイツらをブチのめす理由がまた増えちまったよ。
俺はウネウネと蠢く触手に意識を集中させ戦闘態勢を取る。
それはアレンも同様のようだ。
「テメェらクソガキには現実ってモンを教えてやんよぉー!!」
そういって巨漢の内の一人が俺に突っ込んできた。
手には小型のダガーを持っている。
このまま時を止めるのもいいが今回は触手を使って楽しませて貰うぜ。
「アレン!やるぞっ!!」
俺が声をかける前に
「うげっー!!」
突っ込んできた男は俺の目の前に滑ってきた。
おお。
アレンが既に地面に自身の触手を這わせて、奴の足を引っかけたらしい。
二ヒヒとこちらを向いて笑うアレン。
よし俺もやるか。
この触手結構馴染んできたって言ったが、今俺は手の様に操る事ができる。
地面に伏してる男へと触手を伸ばす。
ヤツの身体に巻き付けて、ぐっと力を入れてみると、
(これは…!!)
俺の全身に力が溢れてきた。代わりに男の身体はみるみる萎んでいく。
(生命力を吸収しているのか?)
これはもしかしすると、あの食材に使われていた魔物の力が一時的に使用できているのかもしれない…!!
さて、もう一人の巨漢に目をやると、
顔に汗が垂れているソイツは
追い詰められて何か策を弄するつもりなのか、その使い古された古着のポケットから何かを取り出そうとしている。
「アレン!!気を付けろッ!!何かして来るぞッ!!」
奴がポケットから手を出すと同時に俺達の周囲に黄色い粉塵が飛散した。
どうやらポケットに何かの粉袋が仕込んであったらしい。
思わず口と鼻を塞ぐ。
しかし俺の触手がそれに触れた瞬間、体が硬直した。
「これは痺れ粉だ。安心しろ人間には何の影響も無い魔物専用だ。
おっとテメェらの触手部分は魔物だから効果があるんだったな。失敬失敬。」
悪びれた素振りをわざとらしく見せ、ヘラヘラと笑う。
「冒険者だったら誰もが知ってる必需品だぜ?
制度を守って学院に引きこもってるお前らじゃあ、知見が浅いから知らなかったようだがなぁ!!」
(クッソ…しくったな。四肢が硬直してるからその場から動けねぇぜ)
ソイツは、ギラリと光るダガーを取り出し、俺達の方へ駆けてくる。
「テメェらよくも俺の相棒をやりやがったなぁー!!」
こりゃあ、誰が見ても終わり。
そこら辺のゴロツキだと舐めてかかったのが運の尽きだったかな…
―だがっ!!
「アレンッ!!土属性魔法だ!!」
「え?」
俺と同様に粉を浴び硬直しているアレンが困惑の症状を見せる。
「お前の岩は手からしか出せねぇのか!?」
「いや一応、身体からも出せるが、アイツに向かって飛ばすのは手からしか出来ねぇよ!!
その手が今は無い!!」
「いや、十分だ!!できるだけデカいヤツを一つ頼む!!」
「は?…分かったぜ!!このまま死ぬのは御免だしなッ!!」
顔を真っ赤にしアレンは力む。
すると体がほんのり黄金色に光り、先日の魔力訓練で見せた小石よりはデカい石がポトッと身体から落ちる。
「出したぞ!!ジョウ!!」
俺はというと、さっき突っ込んできた奴が持っていたダガーを口で咥え
――自身の触手を一本ぶった切った。
「…ッ!!」
ぶしゃあ
緑色の気持ち悪い血のような何かの液体が飛散した。
当然、激痛も走る。
何せ触手と言っても自分の身体だからな。
「痛ってぇな…!!」
「ジョウ!!何してんだよっ!!」
「ハハハ!!テメェ!!馬鹿だぜ!!」
――しかし
ぶった切った箇所
触手の断面、そこに意識を集中させる。
「―フンッ!!」
力を込めて、脳内を触手が一気に伸びるイメージで一杯にする。
―すると
ググンッ
斬られた断面からは、新しい触手が勢いよくピチピチと音を立てながら伸びてきた!!
そしてすぐさまアレンが出した石を掴み、奴が走っている足元へと設置する。
ズガッ
「ずぼぁ!!」
ズサー
もう一人も俺の足元に流されてきた。
「クソっ!!なぜ…」
「新しい触手に粉はかかってねぇからな。この通りピンピン動くぜ。」
――そして
「さっきお前は学院生は知見が足りねぇとか言ってたがよぉ…
触手型モンスターの触手はぶった斬っても、生命力を使えばすぐに新しく生やせるって教えてもらったのは学院のおかげなんだよなぁーーーーーー!!!」
そういって俺は倒れてる奴の首筋に触手を突っ込み、生命力を吸い取る。
奴の身体も同じようにミイラのように骨と皮だけになった。
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しばらく経って、俺達の身体の痺れが溶けてきた頃
「あの…」
不意に可愛い声をかけられる。
おっと、激戦で忘れていたがそういえば俺達はこの女の子を助けに来たんだった…
「おぉっとゴメンね。戦闘に巻き込まれて怪我とかしてないかい?」
その時ちょうど、薄暗い路地裏に光が差し込み、彼女の姿が良く見えるようになる。
ついつい、俺は下から上に舐めるように眺めてしまった。
ふむふむ、遠くで見たときに思ったがやはりセクシーな衣装をしているな。
足もスラっとしていて、お尻あたりから黒くて細いしっぽが生えている。
胸は控えめだが、服の上からでも分かる形の美しさ。
背中から蝙蝠みたいな羽が見え、顔立ちは整っていて思わず目に吸い込まれてしまいそうだ。
頭に角も生えてるなぁ…
って、よく見るとこの女『淫魔』じゃあねぇかっ!!




