第十三話 おいしい料理には、毒がある
木製の円型の机の上に置かれている皿はざっと数えて十個ほど…
(さっきアレンの野郎が口にしたのは肉料理だったよなぁ)
つまりここで肉料理を選ぶのは得策では無い…か?
他にある候補としては海鮮料理や、薬草や果実を使った山菜料理、クッキーやケーキといったスイーツ系。
ってかそもそも、この料理全てが危険なのか?
ピストローネさんがどういう人かも良く知らねぇ…
こういう時用意している料理全てに細工をして悪意を持って人を攻撃するのが好きなのか、それともただ料理に対して真剣で本当に試作料理の結果が気になるだけなのか。
しかし、ここに来た時のアレンの口ぶり…この場所を頻繁に利用していたかのような口ぶりだったよなぁ。
もしかして全ての料理が危険な訳では無い…?
本当に全部爆発したりする料理を出されるとするともう二度とここには来ないはず…!!
それでも来るという事はやっぱり爆発してでも来たくなる何かが…ある?
それが美味しい料理を食べれる事だとしたら…
もしかしたら本当に一流の宮廷料理が食えるチャンスかも…!?
さて、普通の奴なら山勘でどれか一つを選ぶと思うが…
―俺には異能『時間停止』がある…!!
ただ…どうする?
さっきのアレンを見た感じ口に含んだ、つまり咀嚼した瞬間に『何か』が起こる、と仮定しよう。
ただ、これらの料理。
見た目だけでアタリかハズレかを判断するのは難しい気がする。
じゃあ、匂いや感触ならどうだ?
俺は料理に鼻を近づける。
スンスン
いや美味そうな、食欲をそそる匂いが鼻腔をガツンと刺激するだけだ。
(…チッ、やはり食ってみないと分からねぇって話だ…!)
ここで俺は、先程アレンが食べた『肉料理』に目をつける。
何が起こるか分からねえ新手の飯よりも、何が起こるか分かる肉料理の方が対処できるって話だ。
チラリと目をやると似たような肉料理がもう一つある。
おそらく二つ作ったのだろう。
見た目はほぼ一緒、使用されている食材も変わらない…はず!!
「じゃあ…これをいただきます。」
俺は覚悟を決めてそれを口に放ると同時に
―『時間停止』ッ!!
世界の空間が静寂し、時間が停止する。
その間に、先ずは食材を噛む。
(―ッ!!これはウマイッ!!)
なんて蕩ける肉だっ!!噛んでいるのにまるで飲んでいるようだっ!!
今まで俺が食ってきた肉は何だったのか…?
あまりの衝撃に足が震え、頬が落ちそうになるぜ!!
…しかし、今はそれどころでは無い。
俺は一切顔の位置を動かさないように気を付け、咀嚼に集中する。
(…そろそろか)
そして時が再び動き出す。
―と同時に
クイッ
俺は頭を後ろに思い切りそり返らせた。
バゴンッ!!
思った通り料理は爆発した!!
ただし、俺がさっき食材を噛んでいた口の位置で。
俺は顔の位置を後ろに動かし、爆発に巻き込まれる事無く食材を飲み込む事に成功したのだ。
「おぉ、やりますねぇ」
ピストローネさんが、目を見開き眉を上げて驚く。
「ピストローネさん、めちゃくちゃ美味いっすよコレェ!!
ただ、料理として出すにはちょっぴり刺激が強すぎて食べる人を選びますよこりゃあ」
「そうですねぇ…、私としては料理を食べた際の衝撃における爆発感を追求したのですが。…次からは胃の中で爆発するようにしましょうか」
(いや、何でそうなるんだよっ!!)
天才ってのは、やはり凡人には理解できない考えをしているらしい。
俺はその後、口に入れては時を止め一瞬で顔をのけぞり爆発を回避しながら食べるという技名『時止め喰らい』を使い、完食した。
「う~ん…」
しばらくしてアレンがむくりと起き上がってきた。
「お、お目覚めか」
アレンは目を擦りながら答える。
「食った瞬間から記憶が無いんだが、美味すぎて昇天しちまってたのかなぁ…?」
何が起きているか理解不能な顔をしているアレン、しかし俺が飯を平らげてるのを見て
「あ、おい!その『料理』!俺が目を付けてたのにぃー」
悔しそうに顔をにじませる。
「アレン、そう気を落とさずに。まだまだ料理はありますよ。」
ピストローネさんは、別の料理をアレンに差し出す。
おいおい、またアレンの野郎吹っ飛んじまうんじゃあねぇのか?
出された料理は『海鮮料理』。
「おい、気を付け―」
俺の言葉が出る前にアレンはそれを口に含んでしまった。
(やばい…!!)
思わず目を覆ってしまったが
「うますぎぃ!!」
俺の不安に反して、アレンからは何も起こらなかった。
「おぉ、コレは成功ですねぇー」
ピストローネさんが嬉しそうにほほ笑む。
何だ。
やっぱり別に、全部が全部危険な調理をしてるって訳じゃあねぇのか…
そうすればさっきも思ったが、アレンがここへ通うのも納得って訳だ。
毎回爆発してたり、気絶してたりしてたらもう二度と来ないだろうしな。
安堵の気持ちが溢れる俺から不安な気持ちは吹き飛んだ。
俺は既に次の料理へと飛びついていた。
「ピストローネさん、『スイーツ』も頂いていいですか!?」
「はい、もちろん。」
うひょ~。
『スイーツ』
生まれてこの方、お菓子なんて嗜好品食った事がねぇ。
どんな味がするんだろう。
確か、実家のばあちゃんが一口食べるだけで極楽が見えるとか言ってたな。
パクリ
(??…何だ?)
あれ、目の前の視界が。
ピストローネさんが歪んでいく。
(…いやそれだけじゃあねぇ!!)
横でむしゃくちゃ食ってるアレンも、周りの景色が歪んでいく…!!
これはもしかして、マジに天国送りにされたって訳じゃあないか!?
「っっんまぁ~い!!」
アレンの一言で現実へ戻される。
なんだ今の?
「ピストローネさん、俺今、何か幻覚のようなものが見えた気が…!!」
「おーう、そのスイーツには最近採れた『ドリムコアキノコ』を使ってみたんですが、そんな症状がでるとはこれはナシですね。
ちなみに『ドリムコアキノコ』は幻覚作用だけでなく、極稀にですが意識を失う事もあるそうです。私としてはこの幻覚作用を上手く食事へと取り入れたかったのですがなかなか難しいものですねぇ。」
んだとぉ~!!
幻覚では無く、本当に極楽が見えていたのか。
確かに、実家のばあちゃんが一瞬見えた気がする。
死んでねぇけど
「おい、ジョウこれ食ってみろよ!!飛ぶぜ?」
ふらつく俺にアレンが差し出してきたのは、今まで誰も手を付けて無かったおそらく魔物の素材を使ったであろう『麺料理』。
麺料理である事は分かるんだが、麺が青いし隣に付けあわされてるウネウネ蠢いている謎のモノも気持ち悪い。
(うげー、正直気が引けるぜ)
でもアレンはそんな見た目を気にすることもなく一心不乱に食っている。
それを見てるとついつい手が伸びてしまっていた。
(―ッ!!)
「上手いっ!!」
何だこれは!!
見た目は正直、Fランクの料理よりも最悪だがさすが宮廷料理人の腕前っ!!
食べる手が止まらないぜっ!!
「おーう、ソレはかなり感触が良さそうですねぇ~。見た目の改善をすれば満点ですねぇ~。」
「はい!ピストローネさん。今日食べた中でこれが一番美味いっす!!」
「おう!これを毎日食べられるなんて王様は最高だなぁ~」
・
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そんなこんなで、出された試作料理を全て平らげた俺達。
「いつでも待ってますよ。でもたまには、私の本気料理を食べてくださいね。」とピストローネさんに見送られながら、『ブラック・アップル』を後にした。
俺達は、ハッピーストリートの名の通り、笑顔で帰路につくのだった。
「いや待て!!」
ジョウが急に大声を張り上げる。
何だ、忘れ物か?
「おい!!!俺たちの身体を見ろよっ!!」
ん?
そういって俺はすぐそばにあった、通りの店のガラスに反射している自分の姿を見る。
「何じゃこりゃあああああああああ!!」
俺の身体の四肢の先は、蛸のように触手がウネウネと動きまるで触手型の魔人のような見た目へと変化していたのだった!!




