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あなたへ~山川と詩音  作者: 遥風 悠
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敵は増えるもの、味方と幸せは増やすもの 終




 「ポスティング、予約、配達~?弁当の販売底上げの為に~?山川、お前はいつから総菜部の人間になったんだ?」

山川の企画書に目を通した店長がにこやかに声を上げた。馬鹿にした風ではなく、やっぱりきたか、思ったより早かったな、と。

「コンビニが苦手としている項目がこの3点だと考えて一ます。コンビニのビジネスモデルでは利益を捻出する為に、人件費をギリギリまで抑制します。店内に1人、多くて2人。そうすると、外に打って出るということができないのです。店に納品された商品を見せのレジで売る―まぁ、当たり前の事なんですが、それ以上のことが難しいはずです。そこでウチとしては予約獲得を強化したり、配達、ポスティングで潜在客に訴求すべきだと考えます。そこに一番適しているのが弁当です。全アイテムを乗せることはできませんがメニュー表も作成します。」

企画書について熱を込めて補完していく山川。伝わらないはずはない。

「なるほど・・・な。分かった、少し時間をくれ。」

「はい。宜しくお願いします。」


 配達車というのは名目だけで実際にその用途で使われるのは月に1回とか、2ヶ月に1回。あるいはもっとずっと使われていない。ほとんどは店舗間の商品移動とか、雨天時のアルバイトの送迎なんかに使われていた。正直な話、9割5分は駐車場に止まっている。そりゃガソリンも減らんわな。

 店にお客が来てくれる。それであれば店内体制に資源を集中すればいい。それで利益が上がる。いいじゃないか、来店客にはそれでいい。お店に来てくれる客には―商圏を広げよなんて簡単に言うが一般敵なスーパーが遠方の客に来店の動機を提供することは難しい。そこで商圏内の自店を普段利用していない客へのアプローチを試みる。他店を多く利用している者、訳あってなかなか外へ買い物に行けない者、重い物が運べない者・・・・・・まだお客様と呼ぶことのできない潜在客を取り込むべく動き出した。

 配達にはヒトが要る。店の外に打って出るということは言わずもがな、現状以上に余分に人員が必要だということ。そしてヒトを増やすにはもちろん金がかかる。配達サービスを開始しますので配達要員を確保します、とはいかない。そもそも配達需要が眠っている保証もない。そこで店長から、曜日を決めてはどうかという意見が出された。まずはサービスの存在を認知させるべく曜日を固定して訴求する。注文があれば確実に配達を実施できなくてはならない。今日は人がいないので対応できません、配達していませんということになれば、次回の依頼は遠退いてしまう。山川は弁当・総菜のメニュー表を作成し、そこに配達のご相談、承りますという文言も付け加えた。一方でそのチラシを配布するポスティングは諦めた。そもそも山川は一般商品部の人間であり、自分の部署の仕事がある。徐々に指導する機会も増え、会議用の資料作成も任されるようになった。メニュー表、作ったはいいが、どうしたものか・・・写真付き、頑張ってはみたが、仕方あるまい。

 

 そこに、救いの手はすぐに差し伸べられた。

「あら、山川さん。チラシ作るの、お上手なんですね・・・うん、うん、いいわ、これ。1枚頂いていいかしら。」

山川のチラシを救ったのは総菜部のリーダーだった。活かす道を作ってくれた。昼ピーク用の仕込みを終えると、事務所にて工作を始めたリーダー。厚紙と紐を使って小型のショルダーバッグの様なチラシ入れを瞬く間に3つ、4つと組み立ててしまった。売場で発注を済ませた山川が事務所に戻ってkると、

「こんなんどうでしょう。」

リーダーがチラシを入れたケースをお披露目した。

「これなら机にも、棚にも、レジにも引っ掛けられるでしょう。山川さんの言う潜在客の掘り起こしには結びつかないかもしれないけれど、店内のお客様には少しずつ伝われば、ね。」

山川は両の掌で、リーダーの両の手を包むように優しく握り込み、深々と頭を下げた。


                    【敵は増えるもの、味方と幸せは増やすもの 終】

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