第46話 山頂にて
お久しぶりです。
夏休みに入ってもこんな連載スピードでごめんなさい!
「うん、空気が澄んでて美味しい」
僕であっても涼しさを感じるほどの気温と髪を少し揺らすほどの強風・・・言っとくけど僕の髪の毛って無茶苦茶重いからね、だから強い風が吹いてるのは本当なんだよ。
今僕が立っている場所はザルディニア山脈の中でも標高が一番高いアケルドミア山の頂上だ。視界の下には雲海が広がり、少しずつ太陽が昇り始めている。富士山の上で眺める日の出とかもこんな感じなのかな?
「絶景だなぁ」
「そうですね。マスターがいるだけで風景に神々しさがプラスされています」
「それは無いと思う」
「あるんです!」
いや、皆もうんうんって首を縦に振らないでくれないかな!?僕が映っていたところで神々しさが増したりしないから!・・・いや、僕って種族的に神族だからあり得るのか?って、毒されちゃ駄目だ駄目だ!
「そんなことよりも椿はあとどれくらいで進化しそう?」
「感覚的に言うとあとSSランク十匹分くらいだと思います」
椿が風で靡く髪を少し手で押さえながら答える。
「そんなポンポン出会うような敵じゃないね」
この世界がSSランクの魔物が当たり前に跋扈する世界だったら、人類は余裕で全滅してると思う。猿人まで進化出来たらいい方なんじゃないだろうか?そもそも、この世界の人類って進化してここまで来たのかな?神様が想像したとかだったら進化とかないかも。
「という訳でサナ、解説よろしく」
「承知しました」
今ので理解できたの!!?いくら感情が表に出やすいからと言っても分かる範囲には限度ってものがあるでしょ!?
「マスターの事なら何でもお見通しです」
「いや、そんな自慢げにされても・・・」
「それにリリアナさんなら私と同じことが出来ると思いますが」
「まあ、『交渉術』はそれなりに高いから・・・だからご主人様の思考は読み易いとかそういうのじゃないのよ」
それは僕の思考が読み易いと言っているのと同じだと思う。下手な気遣いは心の傷を抉るだけだということは悪魔だから分かっているはずなのに・・・。
「ご主人様の考えてることって難しくて僕には分からないけど?」
「ラムさん、言いたく話ありませんが・・・貴方は馬鹿ですか?」
はい、おバカです。
「ム~!失礼だよ!」
事実なんだから失礼もクソもないと思うけど?ラムの知力は確実にこの中で最下位だ。・・・僕?流石にラムには負けないよ。下から数えた方が早いのは認めるけどね。
「そんなことよりも説明に移らせていただきます」
「そんなこと!?」
ラムの訴えは全員が鮮やかにスルーした。そして、サナが右手の指をピンっと立てて得意げに説明を始める。
「まず、端的に言うとこの世界の人類は進化ではなく神に創造されて誕生した存在です。創造と光を司る中位神アーケインが人族、風と植物を司る中位神シャレーユが森人、大地と道具を司る中位神トルニトが鉱人、水と命を司る中位神セルシレーナが魚人、火と意思を司る中位神リブルガルドが獣人、闇と破壊を司る中位神ディアーテが魔族をそれぞれ創造しました」
魔族を作った神だけマイナス的に捉えられる要素を持ってるものしか司ってないんだけど・・・。でも、司るもので判断するのはあまり良くない気もするし。
「闇と破壊を司っているディアーテですが性質は善なる神です。創造神アーケインの妻であり、対を成す存在であるがゆえに闇と破壊を司っています」
「ふーん、やっぱり司るものでその神の性格が大体決まるわけじゃないんだね」
「更に言うとディアーテはその身を賭して邪神を封印した神でもあります。ですから、女神教でも他の五柱とは違い邪神の呪いを受け魔に堕ちた神とされていません」
「えっ!?他の神って魔に堕ちてるの!?」
「いいえ、女神ルリナによる作り話です」
「あの阿婆擦れは自分の箱庭が欲しくて、元々居た六柱が邪魔になったのよ」
うわぁ、女神の事を聞けば聞くだけ性根が腐っているようにしか感じられない。だけど、女神ルリナもリリアナにだけは阿婆擦れって言われたくないと思う。
「リリアナ、女神様――いえ、女神も貴方にだけは言われたくないでしょう」
「あら、アリシア・・・やるの?」
「いいでしょう。あの時の雪辱ここで晴らさせてもらいましょう!」
「いや、落ち着こうよ!」
こんなところで喧嘩なんてされたらこの山脈が無くなるし、女神ルリナにも位置がばれるしで良いことなんて何もない。せめてダンジョンの深層でやってほしいものだ。あそこなら・・・多分、バレない。
「ではそろそろ休憩を終わりにして移動を開始しましょう」
「了解した」
椿の身体が光り、漆黒の毛皮を持つ巨狼が現れる。頭の位置が地上から七メートルくらいにあると説明すればその大きさも分かるだろう。椿も大きくなったねぇ。始めたあった時とは雲泥の差だよ。
〈主様、どうぞお乗りください〉
「分かった」
翼を羽ばたかせて椿の背中の上に乗る。リリアナは僕と同じ方法で乗って、アリシアとサナは魔法で飛んで乗り、ラムだけは飛び乗った。
〈ラム、お前も魔法の一つや二つ覚えたらどうだ?〉
「そうですね、いつまでも接近戦のみで戦わせるわけにはいきませんし」
「えー、面倒くさいよー。僕を殺せそうな存在居ないし、覚えなくても大丈夫じゃないかな?物理で何とかなるよ、多分」
〈はあ、ラム、お前という奴は・・・〉
いや、面倒くさいじゃないぞ!いくらこの世界でラムを殺せる奴がいないからって封印できる奴はそれなりにいると思うんだけど。それと・・・最近ラムが脳筋と化してきているのが本当に気になる。
「僕的には魔法を覚えてくれて方が安心できるんだけど」
「ねえ、サナさん、アリシアさん!僕に魔法を教えて!!」
「凄まじい掌返しですね。まあ、精霊神様の精神安定に繋がるなるならば、それに勝るものはありませんが」
「私としてもラムがやる気を出してくれて助かります。マスターの期待に応えるためにも厳しくしていかなくてはなりませんね」
静かに、そして激しくやる気を漲らせているサナとアリシア。・・・ラムが地獄を見ないか少しだけ心配になって来た。いや、流石にやる気をそぐレベルの厳しさにはならないだろうし、ほっておいていいかな。
「・・・ね、ねえ、何だか僕、悪寒が・・・・」
「まあ、頑張りなさい。私も応援してるわ」
〈茨の道のようだが・・・まあ、成るように成る〉
涙目で僕を見つめてくるラム・・・だが僕には目を逸らし、サムズアップしてあげることしかできなかった。きっと・・・多分・・・・大丈夫・・・・・かなぁ?
「ご主人様ぁ!」
「頑張って!」
「うー・・・分かった」
よし、納得してくれた!これでこの後ラムが泣き付いてきても心を鬼にして再び地獄へと叩き込むことが出来る!さてと、目的地まではあともう少しのはず!迷宮都市の近くまで行ったら、椿から降りて進まないと大騒ぎになっちゃう。・・・椿くらいの大きさならかなり遠くで降りないと気付かれるかな?『隠密』スキルがあるから大丈夫か。
「よし、それじゃあそろそろ出発しようか!」
〈承知しました!〉
椿が山の頂上から一気に駆け下り始める。迷宮都市ケラウルブス到着まであと半日。僕の動体視力を最大限に駆使して風景を楽しむとしよう。
次話でケラウルブス到着予定です。




