第45話 投擲と『城壁騒動』
お久しぶりです!
どうもー、お久しぶりです。今は移動開始から五日目、皆毎日何かを食べないといけないほど貧弱じゃないからノンストップで移動していて、地図によるとそろそろ樹海を出るところなんだよ!人の足で歩いて半年かかるところを五日だなんて結構すごいよね。何でもレベル50(前世だとヒーローになれるレベルの強さ)くらいの人が休まず歩いたらって前提らしいけど。
「あともう少しで樹海を抜けます。後はしばらく草原が続きますので、そろそろ隠密を発動させた方が良いですね」
〈む、了解した〉
「それなら僕も発動しとくよ」
上の人が隠密使わないとバレ易くなるからね。僕の隠密なら集団でも行けるし。・・・そういえば、僕が全力で走ったらどれくらいの速さになるんだろ?この世界なら上から数えた方が早いと思うんだけど・・・邪神とかを抜けば今のところ女神がトップなんだろうなぁ。僕もレベルアップし難くなってきたし。いつになったら追い抜けるかな?・・・地味に時間かかりそう。
「そろそろ、草原が見えてきます」
「・・・・ああ、うん」
そろそろっていうより、僕の視力だともう見えてるから反応し辛い。だんだん木々が視界から少なくなり、辺りが開ける。空を見上げればどこまでも青い雲一つない空、燦々と照り付ける太陽。うん、絶好の旅日和だ!
「はあ、太陽は相も変わらず忌々し「そうかな?暖かくていいと思うけど」くないわね!ご主人様の言う通り暖かくて気持ちが良いわ!」「・・・・」
何という清々しいまでの掌返し・・・!そこまでして僕の価値観に合わせたいの!?というより、普通に修正するには遅かったと思うよ。ただ、他の面子はリリアナに無言でサムズアップしてたから、間に合ったという判定なんだろう。解せぬ。
「椿お姉様の脚なら後三日ほどで迷宮都市に到達するはずです」
「おお・・・この世界的に言うと速い?」
「はい、速いですね」
まあ、そうだよね。それに樹海が五日しかかからないなら、ここと迷宮都市って結構離れてるんだね。何か暇つぶしに新しいスキルでも取得してみようかな。僕が取ってないスキルで移動中でも練習出来るスキルってないかな?
「それならば、『投擲』スキルなどは如何でしょうか?」
「・・・・ナチュラルに心を読まれても困るんだけど」
「ご主人様は顔に出やすいからねー!」
くっ、『演技』スキルを最大限に使用するんだ!そうすれば僕にだって!!
「マスター、言い辛いのですが・・・マスターの『演技』スキルのレベルですと私たちを相手に感情などを隠すのには役者不足です」
「精霊神様、現実を認めるのは上に立つものとして必要な事だと思われます」
「・・・・良いんだ、アリシアさん。サナの行動は臣下として正しいことだから」
ただ、僕の心が傷つかないとは言っていない!・・・・まあ、『明鏡止水』もあるし、あまり傷ついてないけど。
「それじゃあ、『投擲』スキルを取ってみようか」
「はい、取得完了です。試してみてください」
「りょうかーい!」
土属性魔法で小石を作る。ふむ、なかなかにいい出来なのではないだろうか?手触りも良いし、軽く放ってみたけどいい感じの重さだし。よし、投げるか!目標は西に見えるあの山で良いかな。
「あっ、言い忘れていましたが本気で投げるのはおや「せいっ!!」めくださいませ・・・」
「ん?何か言った?」
「・・・・いえ、特に何も」
「精霊神様、投げた結果を見なくてもよろしいのですか?」
「おっと、そうだったそうだった」
どれどれ・・・・・・あれ?地面抉れてる?もしかして、ソニックウェーブ?えーと、それがずーと続いて、山に・・・あー、ドデカい穴が・・・・・・よし、僕は何も見なかった!そういうことにしておこう!
「皆、僕らは何も見なかった。・・・いいね?」
〈「「「「はい!」」」」〉
「それではここから北東方向にある迷宮都市ケラウルブスに直進します!途中に山脈等もありますが我々にとっては大きな坂程度ですので、気にせず進んでください!」
〈了解だ!〉
「まあ、ここには人外レベルの存在しかいないし、気にする方がおかしいわ」
「僕はあまり暑いのとか寒いのとかは好きじゃないよー」
「貴方が寒さや暑さを感じる温度とは何度ですか・・・?」
それは僕も気になる。ラムが寒がる温度や暑がる温度になったら確実に世界の終わりが近づいてるからね。ラムの体内を温めるのはかなり無理がある。今こそ擬態で体表を人間の体温と同じになっているけど、スライムの体温って本来低いんだよね。
「うーん、分かんないや!」
「まあ、そうだろうね」
体験したしたこともないことについて知っていたら、そっちの方が驚くよ。サナじゃあないんだし。いや、サナはこの世界の記憶そのものなんだからそんなこともないか。
よし、旅を楽しむぞ!
一方その頃
-エルムス王国 カドラト辺境伯領 コーデヴァン山麓の森-
「クソッ!何でこんなところに『レッサードラゴン』なんているんだ!!」
三人の男女が一匹のレッサードラゴンに追いかけられていた。『レッサードラゴン』、『劣等竜』とも呼ばれるその魔物は『劣等』などと付いているがその強さはBランク中位、即ち小規模な街ならば滅ぼす力を持っている。それに対して彼らの冒険者ランクはC。絶望的と言っても過言ではない。
「うるっさいわねぇ!グチグチ言ってないで走りなさいよ!」
「分かってらー!!テメーこそサクサク走りやがれ!」
「こんな時に夫婦喧嘩は止して下さい!!」
「「誰が夫婦じゃ!!」」
意外と余裕そうである。
「グルアアアアアアア!!!」
「「「のわぁぁぁぁぁ!!!」」」
その態度が癪に障ったのか、劣等竜は三人に向かってブレスを放った。周囲の木々が燃やされ吹き飛ばされるが、モンスターをハントするハンターのように鮮やかな緊急回避を行い難を逃れた。
「「「げぶら!!」」」
若干一名、女としての尊厳が傷つくような声を出してしまったようだが被害の内には入らない。
「くっ、アルマ!立て!やるしかないぞ!!」
「分かってるわよ、そんなの!!」
「ねえ、アルマとゲイルはいつ結婚するんだい?」
「結婚どころか付き合ってすらいねーよ!?」
「そうよ!それならケビンこそいつレーネと結婚するつもりなのよ?!」
「これで生き残ったら・・・かな」
ここまで盛大に死亡フラグを立てたケビン君は果たして生き残る気があるのであろうか?
「グラァァァァァァァァァ!!!」
又しても癪に障ったようだ。この劣等竜の器が知れるというものだろう。そんなに頻繁に起こると寿命が縮むので控えた方がいい。
「一か八かだ!行くぞ、ゴラァ!!」
「おう!!」
アルマよ、女性としてそれはいかがなものか。
そのことは脇に置いておき、三人と劣等竜の死闘(片方にとって)が始まろうとしていたその時。
ゴウ!!!パン。
「「「えっ」」」
轟音と共に劣等竜は手足を残し、空中で爆散した。唯一救いだったのは血煙レベルまで細かくなったことによってあまりグロくはなかったことであろう。
「い、今の何・・・?」
「・・・僕には何とも」
「なあ、分かんないこと気にしてもしょうがないだろ?そんなことより落ちて来たレッサードラゴンの手足を回収しようぜ!」
ゲイルは脳筋である。重要なのでもう一度、ゲイルは脳筋である。決して彼が金に汚いわけではない。無いったらない!
ほぼ同時刻
-エルムス王国 カドラト辺境伯領 第三の都市ドートリオン-
ズン!!!
「うお!?な、何だ!!?」
兵舎にて昼食を取ろうとしていた衛兵長は突然の衝撃と轟音に危うく昼食を落としかけた。すると、兵舎に汗だくの衛兵が駆け込んできた!
「衛兵長、大変です!城壁に穴が!!?」
「な、何だとぉぉぉぉぉぉ!!!????」
今度こそ衛兵長は昼食を床に落とし、昼食抜きで事態の収拾に駆り出された。同じ様なことがこの都市の一直線上にある町や都市でも起こった。幸いなことに犠牲者は出なかったが、人々の間で『城壁騒動』と呼ばれ、世間を騒がせた。
新作『eternal fairy tale online~初めからユニーク種族=最弱地雷から戦闘狂は強くなる~』もよろしくお願いします。
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