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いじめられっ子はイレギュラーな何か?に転生しました   作者: 福分茶釜
第三章 迷宮都市ケラウルブス
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第47話 人助け

お久しぶりです!

 アケルドミア山を下山した後、僕たちは森の中から街道に沿うように移動していた。流石に椿からは降りているが、全員がSSSランク級の魔物以上の強さを誇るが故に速度は落ちてはいなかった。無論、本気で走ればラムと椿が遅れを取ることになるが、元々周りに被害が出ないように走っているので問題は無かった。

 まあ、問題があるとするならば、僕が地面を走っていることに関して皆が不満に思っている点だ。だが、そんなことは問題とは言えないので大丈夫だ。・・・大丈夫って言ったら、大丈夫なの!

 森の中を突き進んでいると、先の方から血の香りが漂ってきた。うーん、これって人間の血の臭いなのかな?僕この世界は弱肉強食だから、もしかしたら魔物同士の戦いかもしれないし、僕はこの世界の人間にはあったことないからこれが人間の血の臭いなのか分からないな。


「ああ、人の血の匂い、人の苦痛と焦燥・・・好物ではないけれど久しぶりだから、良いわぁ」


「精霊神様、やはりこいつを滅しましょう!」


 悪魔という種族は総じて人間の悪感情、その中でも絶望や苦痛を特に好む。悪魔も細かく分類わけすれば、淫魔などのように人間を堕落させるのを主とするものも居るが、根本的に痛めつけるのが好きな者たちが多い。

 勿論、リリアナも例外ではない。それを証明するように人の血の香りと悪感情を感じ取ってウットリしている。まあ、そのせいでアリシアからは反感を買っているようだけど・・・仕方がない、かな?いや、なくないな。直させよう。・・・・気が向いたら。


「はいはい、そこの二人は仲良くしようね」


「「善処します(するわ)!」」


「・・・・これは処置なしですね」


「主様のお考えは分かりますが・・・こいつらを仲良くさせるのは諦めては?」


 椿に止められるだなんて・・・・諦め、ようかな。椿とサナが僕の肩に手を置いて諫めてくれる。そして、未だに二人は睨み合っている。はあ、本当にこの二人如何しよう・・・?そもそも、方や大賢者、もう片方は悪魔王ってどんな組み合わせしてるんですか!?この組み合わせ作った人馬鹿なんじゃないですか!?正義の味方×悪の親玉って、どう考えても水と油ですわ!!・・・まあ、この集団のリーダーは僕だけど。誰か~、この状況をなんとかしてよぉ。今なら、何とダークマターが付いてくる!・・・いや、この二人の間に入ろうとするおバカはいないか。

 そんなことを考えていたら、ラムが棒の服をクイクイっと引っ張って来た。


「血を流してる人間は助けなくても大丈夫なの?」


「あっ!」


 わ、忘れてたぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァ!!えっ、何?僕ってこんな記憶能力低かったっけ!?ああ、最近いろんな景色を見てたから感動を良く感じれるように『明鏡止水』を解除してた僕がバカだったか!

 僕は気配に集中する。Bランク上位の魔物―ブラッドワイバーンかな?―が五匹、人間側はAランク冒険者並みが一人、Bランクが三人、Cランクが二人、Dランクが七人、あと守られてそうなDランクとAランクの人が一人ずつ・・・・人間たちだけで何とかならないかな?いや、ならないね。Aランク冒険者は確かにBランクを一対一で討伐する力量があるけど、倒すのに時間がかかり過ぎる。その間に他の人は全滅して数で押されて負けちゃう。守られてたAランクの人も注意が逸れてた間に前に戦闘に参加したみたいけど、時間の問題って感じかな。どうにもならない絶体絶命な状況ってことだね。まあ、サックと倒しちゃおうか。


「『空間波ディメンション・ウェーブ』」


 『空間波』は対象のみに空間の揺らぎをぶつける魔法で広範囲殲滅型でありながら味方を巻き込まないという利点がある。ただし、消費魔力が多すぎてこれを単独で使用できる人類は一握りのようだ。よし、気配の消失を確認。おろ?何か死にそうになっている人が四人ほどいるなぁ。これくらいなら『高位範囲回復エリア・グレート・ヒール』で足りるかな?消費が高いけど、無詠唱でいいや!ほい、お終い!さあ、旅路を急ごう!


「主様、やはり我々のうちの誰かを御身の脚として使う気はありませんか?」


「ない!」


「・・・承知しました。ですが、お疲れになられたり、歩くのが面倒になった場合は我々にお申し付けください」


 椿が他のメンバーの方い視線をやれば、全員うんうんっと頷いている。・・・揺れてるね、何処がとは言わないけど。僕の仲間ってない人からは呪いを掛けられるレベルだね。


「分かってるよ」


 申しつけることなんてないと思うけど。なんて余計な言葉は口は出さなかったが、僕はアリシアの封印迷宮でほとんどできなかった、地面を歩くという行為を満喫するのだった。やっぱり、人間歩けるなら歩かなくちゃね。


-sideシエラ・フォン・ドルーチェ-


 私はコーデバルト王国の誇り高きドルーチェ公爵家の長女だ。今年で十六歳即ち、成人となった。と言っても私には婚約者が未だいない。理由としてはお父様が私を気持ちが悪いくらい溺愛していること、珍しいことにドルーチェ公爵家に匹敵する爵位を持つ家に同年代の令息がいなかったこと、最後に最も重要なのが私に勝てる男性が未だに現れていないことだ。

 せめて、魔法か剣術のどちらかで私に勝てる同年代は居ないのか!?そう思い、私は冒険者の集う場所迷宮都市ケラウルブスへと足を運ぶことにした。私を溺愛していたお父様は保有する私兵団を狩りだそうとしていたが、そんな馬鹿なことは私とお母様で止めたが・・・。

 ともあれ、私には結局13人の護衛と専属メイドの一人が付いた。まあ、出来るだけ抜けても問題ない様に護衛を出したため、精鋭部隊と比べれば見劣りするが、Aランク一人、Bランクを三人も部隊に入っている時点でAランク冒険者と同じ程度の実力を持つ私を護衛するなら過剰戦力と言えた。というよりか、Aランク冒険者を護衛する必要など本来は存在しないのだ。故に、私はこの旅が無事で終わるだろうとそう感じた。いや、そう()()()()()

 そして、今、私はなぜもっと護衛を強化しなかったのだろうと後悔している。『世界にはなぁ、理不尽が溢れてるんだよ!ボンボンが!』数年前に討伐した盗賊の一味の言葉が脳裏をよぎった。女神様が見守っておられる世界で何をっと鼻で笑ったものだが、目の前の光景はまさにこの世の理不尽を体現しているようだった。


「クソッタレ!幾らなんでも数が多すぎだろうが!?」


「ええいっ!お嬢様の前で汚い言葉を使うな、ブラット!喋っている暇があったら、ブラッドワイバーンを一匹一人で相手をしろ!!」


「そ、そんな!ドルク隊長、お、俺が抜けたらこいつらが「逝って来い!」「俺たちは何とか持たせてみせる!逝って来い!」「ああ、俺たちは他の連中と合流するから気にするな!」この裏切り者ー!!」


「・・・・」


 ・・・集中だ、今は目の前の敵に集中するんだ。一刻も早くこのブラッドワイバーンを倒して次のブラッドワイバーンを倒しに行かなければならない。今はまだBランクを中心とした三チームと私、ドルクで抑え込めているが特にCランクがいないチームはあと十分も持てばいい方だろう。


「ガアッ!!」


 ブラッドワイバーンがその赤黒い鱗に覆われた肉体を宙で翻し、最早一撃で町の外壁を砕く程の尾の一撃が降ってくる。私がそれを左に大きく避けると、先程まで私がいた場所の地面をブラッドワイバーンの尻尾が砕いた。私が剣を構えなおした時には既にブラッドワイバーンは口の隙間から赤黒い炎をちらつかせ、ブレスの体勢に入っていた。


「ッ!『世界に溢れし水よ、神々の祝福を受け、凍てつきながらもその身を変えず、災いを遮る聖なる壁と成れ!蒼水の聖壁アッズーロ・アクア・サクロ・ムーロ』」


「ゴアァァァァ!!」


 私の目の前に青白い水の障壁ができると同時に赤黒い炎が障壁と激突した。ブラッドワイバーンが吐くブレスは闇と火の二属性の複合、対して私の魔法は聖・氷・水の三属性複合、それも上位魔法だ。破られるはずもない、それどころか炎を受けながらも依然周囲に冷気を放っている。徐々に勢いが収まっていく炎。ここだ!!


「『蒼水の聖壁よ、災いを振りまく魔を滅ぼさんがために、形をk』「「「「ぎぃやぁあああ!!!」」」」ッ!!」


 あれは、ブラットのチームのッ!!


「お嬢様ッ!余所見はいけませんぞ!!」


「あっ!!」


 しまった、制御の失敗で障壁が!!障壁が流れ落ちるように崩れたところをブラッドワイバーンがこちらに突撃してきた。前足と融合している翼を大きく広げ、大きなかぎ爪をこちらに向けてきている。魔法制御の失敗で魔力がごっそりと失われ、身体が鉛になったかのように動かし辛い。他の護衛達はブラッドワイバーンを抑え込むので精一杯だ。視界の一面に広がるそのかぎ爪は絶望を体現していた。ああ、こんなところで終わりだなんて・・・だが、戦いの中で死ねるならましか。

 ブラッドワイバーンの一匹を吹き飛ばし、こちらに武技の『瞬動』だろうか?それを使ってまでこちらに来ようとしているドルクの姿が何故かゆっくりと見える。ああ、やはりブラッドワイバーンの方が早い。私は現実を再度確認し、目を閉じる。


「お嬢様ァァァァァァァァァ!!!」


 死を覚悟していた私の身体を空間がぐにゃりっと曲がるような感覚が襲う。


 グシャ・・・。ブシャァァァァァァァァァァ!!


 静かな圧縮音から少し経ち、私を濡らす鉄臭いドロッとした液体が体に纏わり付く嫌悪感に私は目を開ける。そこには一枚の薄い紙と変わらぬ大きさになり、空中に固定された肉塊からは側面を除く全方位からそれが死にたてである証明のように吹き出していた。


「「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」」


 その場にいた全員が唖然とした。これは、なんだ?何が起こったんだ?私たちが混乱している中、逸早く混乱から抜け出したのか、ドルクがこちらに駆け寄って来た。


「お嬢様、ご無事ですか!?」


「あ、ああ、それよりもこれは、なんだ?」


 ドルクは私の質問に対して同じような惨状が広がっている他の五か所を横目に、口を開く


「・・・恐らく『空間波』かと」


「・・・・冗談を言っているのか?」


 『空間波』とは、空間属性の上位魔法だが、空間魔法はコントロールが難しく、また、消費魔力も極めて多い。代表的な転移魔法でさえ、失敗すれば地面や岩の中に埋まることとなる危険な魔法だ。それ故に意図的に空間の揺らぎを発生させる『空間波』は魔法の等級で帝王級に当たり、宮廷魔導士50人を用意て行う儀式魔法で国家最終兵器の一つと言っても過言ではない。しかも、それを味方への影響をこの程度に納められる程の魔導士は最早伝説に名を刻める人物だと言える。


「・・・冗談ではありません。私は一度これと同じ光景を見たことがあります」


「・・・ふむ」


 ドルクは確か今年で五十八だったか・・・その割には衰えを感じないが。しかし、儀式などを行えば、あのような状況だったとはいえ魔力の高まりは感じたはずだ。そして、それはブラッドワイバーンにも言える。ならば、我々よりも早く気が付いたはずだ。つまり、ここから導き出される答えは・・・!


「・・・フフフ、フハハハハハハハハハハ!!!」


「お嬢様?」


 おっと、いかんな。まだ私と同年代だと決まったわけではない。それに今は私の願望よりも優先すべきことがある。


「・・・いや、何でもない。それよりも、今は亡くなった者たちの供養が先だろう」


「そう、ですな」


「「「「勝手に殺さないでください!!」」」」


「「ぬわ!」」


 驚き、後ろを振り返ると何故だかブラッドワイバーンと戦う前よりも元気そうなブラットたちの姿が・・・。なるほど、如何やら見知らぬ者への恩がさらに大きくなってしまったようだ。私は戦友である護衛達の顔を眺めた後、機微を返し、歩き始めた。


「馬車に戻るぞ!それとケラウルブスに着き次第、このようなことのできるものに関して情報を集めておけ!」


『はっ!!』



 






 


 




 

シエラからの視点の方が長くなってしまった。

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