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月影に寄り添う

 劉晟の口から、ぽつり、ぽつりと語られていく。


 瑶月の知らない、兄たちの物語。


 瑶月の知らない、家族と劉晟の過去。


 彼女は、ただ静かに聞いていた。


 滄瀾が口にしていた「友人」。


 その相手が誰なのか。


 今なら、すぐに分かる。


 ――劉晟だ。


 兄は、この人と友だった。


 そして。


 何よりも瑶月の胸を締めつけたのは――


 劉晟もまた、あの日、大切な人を失ったのだということだった。


 自分と同じように。


 あの日に囚われ。


 あの日に何が起きたのかを知るために、四年間、真実を追い続けていた。


 瑶月の胸が、静かに痛んだ。


 この四年間。


 劉晟は「東州を屠った男」として生きてきた。


 何もしていないにもかかわらず。


 彼も失った側だったのにもかかわらず。


 それでも彼は、沈家を失った自分たちのために、真実を追い続けていた。


 どれほど苦しかったのだろう。


 どれほど孤独だったのだろう。


 瑶月には、もう分かる気がした。


 滄燼。


 その名を思い出す。


 沈家三兄弟の「滄」。


 燃え尽きた後に残る「燼」。


 かつては、沈家を滅ぼしたことを誇るためにつけた名だと思っていた。


 けれど、違った。


 それは、劉晟自身が背負った覚悟だったのだ。


 失った友。


 消えた沈家。


 東州の惨劇。


 そして、真実を必ず見つけるという決意。


 そのすべてを背負って、彼は「滄燼」という名を名乗っていた。


 瑶月は、ゆっくりと椅子から立ち上がった。


 劉晟は座ったまま、瑶月を見上げる。


「瑶月?」


 瑶月は答えなかった。


 静かに、彼の前まで歩いていく。


 そして――


 そっと、劉晟の頭を抱き込むように、両腕を回した。


 劉晟の額が、瑶月の胸元へ触れる。


 突然のことに、劉晟の身体がわずかに強張った。


 今までずっと。


 守る側だった。


 傷ついた彼女を抱き上げたのも。


 泣く彼女の前に立ったのも。


 彼女を危険から遠ざけようとしたのも。


 いつだって、自分だった。


 けれど今。


 自分が抱きしめられている。


 瑶月の腕が、静かに顔を包み込む。


 何も言わない。


 ただ、その温もりだけが伝わってくる。


 劉晟は、目を閉じた。


 そして瑶月は――


 彼を抱いたまま、静かに告げた。


「……ありがとう」


 たった、それだけだった。

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