新たな手がかり
劉晟は、目の前の瑶月を見つめていた。
――どこまで伝えていい。
四年間調べ続けてきたことを話せば、瑶月に危険が及ぶかもしれない。
それでも、何も伝えないわけにはいかなかった。
「四年間調べたが、まだ全容は分からない」
一呼吸置く。
「だが――其方の家族は、最後の瞬間まで民を守っていた」
瑶月の瞳が揺れた。
「……そうね」
どこか寂しそうに笑う。
「自慢の家族だもの」
しばしの沈黙。
やがて瑶月が、ふと思い出したように顔を上げた。
「もしかしたら、既に知っているかもしれないけど……」
「なんだ?」
「あの日、不明軍を率いていた男――」
瑶月は、静かに口にした。
「北幻珠を探していたわ」
「……北幻珠?」
劉晟の表情が変わった。
「それは何だ?」
「私も知らない」
瑶月は首を横に振る。
「それが何なのかも、どこにあるのかも」
少し考えてから、続けた。
「ただ……その名前を聞いたのは、あの日が初めてだった」
「……」
「不明軍の男が、そう言っていたの」
瑶月の瞳が、わずかに曇る。
あの日。
血と炎に包まれた東州で。
あの男が口にした、意味の分からない言葉。
――北幻珠。
「その後、一度だけ聞いたことがあるわ」
「いつだ?」
「長淵様と食事をした時」
瑶月は答えた。
「歌人が、北幻珠の歌を歌っていたの」
劉晟は黙って聞いていた。
「だから、名前だけは記憶にあるの」
瑶月は小さく首を傾げる。
「でも、それが何なのかは本当に知らないわ」
劉晟は言葉を失った。
四年間。
東州を調べた。
沈家を調べた。
不明軍を追った。
それでも見つからなかった、屠城の目的。
その手掛かりが、今になって初めて一つの名を持った。
――北幻珠。
だが。
それが何なのかすら、まだ分からない。
誰が知っているのか。
なぜ不明軍は、それを探していたのか。
そして――
なぜ、そのために東州と沈家を消す必要があったのか。
四年前の謎は。
ようやく、一つの名前を得ただけだった。




