灰燼の東州 3
東州城下に張り巡らされていた隠し通路。
それが誰によって造られたものなのかを調べるのに、それほど時間はかからなかった。
二十年ほど前。
北方に存在していた小国同士の間で、とある民族を巡る戦争が勃発した。
戦は五年にも及んだ。
やがて戦乱を制し、北方を統一したのが――北玄国だった。
だが、その混乱に乗じて領土を広げた国が、もう一つあった。
朔国である。
当時、東州は北玄国の領地だった。
戦乱の隙を突き、朔国がこの地を奪い取った。
そして――
今も東州の地下に残る隠し通路は、その頃に造られたものだった。
つまり。
この通路の存在を知っている可能性があるのは、
それを造った北玄国。
そして、その土地を奪い取った朔国。
その二国に限られる。
しかも、これほど大規模な地下通路の存在を知る者となれば、誰でも知っているわけではない。
国の中でも、かなり上位の者に限られるだろう。
劉晟は、見つかった通路の中で発見されたものへ目を落とした。
――景国でしか売られていない、お守り。
北玄国。
朔国。
そして、景国。
東州の地下に残された一本の通路から、三国すべての影が浮かび上がってきた。
「……」
劉晟は黙って考え込んだ。
東州を襲った山賊。
黒曜軍を装った所属不明の軍。
閉ざされた城門。
そして、誰にも知られていないはずの隠し通路。
そこに残されていた、景国の品。
あまりにも多くの思惑が、この屠城に絡んでいる。
だが――
一つだけ、確かなことがあった。
誰が何のために動いたのか。
その全容は、まだ見えない。
それでも。
この惨劇を起こした者たちが、何を望んでいたのかだけは分かる。
東州を。
沈家を。
そこに生きていた人々を。
徹底的に消し去ること。
そして、徹底的に消し去りたいほどの何かがここにはあった。
それが何かはまだわからない。




