↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
164/184

紅葉の導くもの 2

白綾に隠されているはずの目。


 それなのに――


 瑶月は、そこから自分へ向けられる視線を感じた。


「……」


 瑶月は慕容へ向かって、一礼する。


 そして、ふと微笑んだ。


「あの節は助けていただき、誠にありがとうございました」


「おかげさまで、一命を取り留めました」


 見えるはずのない慕容の目へ向けて、瑶月は穏やかに微笑む。


「いえいえ。できることをしたまでですよ」


 慕容は、いつものように柔らかな声で答えた。


 劉晟もまた、瑶月に続いて一礼する。


「我が国の衣は、もう慣れましたか?」


「私はこれで見えませんが……きっと、お似合いでしょう」


 そう言って、慕容は自らの白綾を指先で軽くなぞった。


「おかげさまで、寒さを凌いでおります」


「そうか、そうか」


 劉晟の答えに、慕容は満足そうに頷いた。


「玉都まで、まだ一日ほどありますが――」


 慕容は、道の先へ目を向ける。


「少し先に、大きめの町があります」


「今晩は、そこで休んでください」


「……分かりました」


 劉晟は頷いた。


 そして、ふと慕容へ視線を向ける。


「慕容陛下が、ここまでお出迎えしてくださるとは思いもしませんでした」


 僅かに間を置いてから、続ける。


「歓迎していただき、ありがとうございます」


 そう言って、劉晟は慕容を一瞥した。


 慕容は、くすりと笑った。


「玉都にいても、暇ですからね〜」


 そう言って、何でもないことのように笑う。


 瑶月は静かに慕容を見つめていた。




 慕容は、自らの馬車へ瑶月と劉晟を案内した。


 三人が乗り込むと、馬車はゆっくりと進み始める。


 瑶月は、初めて乗る北玄国皇帝の馬車を見渡した。


 想像していた以上に、気品に溢れている。


 車内は明るい木材で統一され、所々に白亜の装飾が施されていた。


 座席には、ふかふかとした獣の毛皮が敷かれている。


 瑶月はそっと手を伸ばし、その毛並みに触れた。


 真っ白な毛並み。


 おそらく、白い狐か何かだろう。


 そう思っていると――


「虎ですよ」


「……え?」


 慕容が、にっこりと笑った。


 瑶月の手が、ぴたりと止まる。


「……虎、ですか?」


「えぇ」


 慕容は何でもないことのように頷いた。


 瑶月はもう一度、座席に敷かれた毛皮へ目を向ける。


 ――これが、虎。


 驚きを隠せない瑶月をよそに、慕容は穏やかな声で話を続けた。


「今晩、皆さんをご案内するのは、北河という街になります」


「北河……」


「えぇ。そこを治めてもらっている、趙王の屋敷にお世話になろうかと思いまして」


「……趙王」


 劉晟が、思わず呟いた。


 慕容は、ふと顔を上げる。


「あぁ、そうでしたね」


 そして、にこりと笑った。


「我が国は、景国とは少し事情が違うのですよ」


「……」


「約二十年前――」


 慕容は、静かに続ける。


「今の北玄国があるこの地には、五つの小国がありました」


「……」


「それらを一つにまとめ、今の北玄国となったのです」


 劉晟は静かに聞いている。


「その際、五つの国の王族をすべて廃するのではなく、四つの家には『王』の地位を残しました」


「つまり……」


「えぇ」


 慕容が頷く。


「今の北玄国には、私の下に四人の王がいるということです」


 景国では――


 「王」という称号が与えられるのは、皇族の血脈を持つ者だけだ。


 劉晟は淡々と尋ねた。


「それらの王は、北玄国が統一する以前の小国の王族ということですか?」


「えぇ、その通りです」


 慕容は、にっこりと笑った。


「今晩お世話になる趙王も、その四王の一人ですよ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。