残夏、秋の風 1
朝晩に、秋の気配を感じさせる風が吹く頃。
劉晟と瑶月は、三白州を去ろうとしていた。
二人の身を包んでいるのは、北玄国から送られてきた衣だった。
北玄国は冬の厳しい国柄ということもあり、景国や朔国とは衣の造りも異なっている。
男女を問わず胸元はしっかりと覆われ、首元も詰まっている。
衣は胸元で布を重ねて留めるような造りになっており、首元から右肩にかけて、宝石や金銀などの金属で作られた丸い釦がいくつも施されていた。
光を受けるたびに釦がきらりと輝き、厚みのある衣に華やかな彩りを添えている。
劉晟の衣は、武将としての動きやすさを重視した造りになっていた。
裾の左右には深めのスリットが入り、腰には少し太めの革製の帯が巻かれている。
そこには細かな装飾が施され、腰に佩いた武具ともよく馴染んでいた。
細い腰が、かえって強調されている。
足元には、細やかな刺繍を施した長靴。
手首には、袖口を留めるための腕当ても付けられていた。
そして、衣の色は――黒。
黒地には同色の糸で細かな刺繍がふんだんに施され、その中へ時折、朱色の糸が差し込まれている。
派手すぎるわけではない。
けれど、近くで見れば見るほど、その衣にかけられた手間と贅沢さが分かる。
久しぶりに見る黒衣の劉晟は、三白州で纏っていた柔らかな色の衣とは、また違う雰囲気を漂わせていた。
その隣に立つ瑶月は、白を基調とした衣に身を包んでいた。
白い衣には、裾へ向かうにつれて淡い藤色の刺繍が施されている。
細い糸で描かれた花や蔓が、白地の上を流れるように伸び、歩くたびに裾が揺れる。
そして、何より目を引くのが――
襟元から肩、胸元へと広がる雲肩だった。
雲肩は、本来なら襟元や肩を覆い、衣の汚れを防ぐためのもの。
けれど、瑶月が身につけているものは、ただの実用品とは到底思えないほど美しかった。
白を基調とした雲肩には、淡い青、藤色、若菜色、紅色――さまざまな色の糸で、細やかな刺繍が施されている。
花の間には小さな葉や蔓が絡み合い、ところどころには金糸まで織り込まれていた。
肩から胸元へと広がるその装飾は、まるで色とりどりの花々が雲の上に舞っているようだった。
控えめな白い衣に華やかな彩りを添えながらも、決して瑶月自身の美しさを損なわない。
むしろ、その姿をより一層引き立てていた。
それは、瑶月によく似合っていた。
そんな瑶月の姿を――
劉晟は、ただ静かに見つめていた。
しばらくその姿を目に焼きつけるように眺めた後、ふっと視線を逸らす。
一方、瑶月もまた、ふと劉晟へ視線を向けた。
広い肩幅に、細い腰。
久しぶりに見る黒い衣に包まれた彼は、いつもとはまた違う雰囲気を纏っていた。
「……」
瑶月は、しばらくその姿を眺めていた。
その時、劉晟がこちらへ顔を向けようとする。
「……!」
瑶月は、そそくさと目を伏せた。




