間話 変わりゆく色
瑶月は庭の木陰に置かれた寝椅子に身を預け、隣で書簡に目を通している劉晟を眺めていた。
今日の彼は、空色の衣を纏っている。
長い髪は下ろされ、白絹の飾り紐が髪に結ばれていた。風が吹くたび、それがさらさらと揺れている。
――綺麗だな。
瑶月はぼんやりと思った。
けれど、ふと気づく。
そういえば。
以前の劉晟は、黒い衣を着ていることが多かった。
それなのに、瑶月が目を覚ましてからというもの、黒を纏っている姿をほとんど見ていない。
空色。
藤色。
小豆色。
米色。
どれも柔らかく、以前の彼からは想像しにくい色ばかりだ。
瑶月は何気なく、自分の衣へ視線を落とした。
白を基調とした衣に、藍色の刺繍がふんだんに施されている。
これも、劉晟が用意してくれたものだった。
改めて見てみれば、自分の衣と劉晟の衣には、どこか似た色が使われている。
並んで歩けば、自然と馴染むような色合いだった。
「……ふむ」
瑶月は首を傾げる。
少し考えたものの、特に答えが浮かぶわけでもない。
「…好みが変わったのかしら」
そう呟くと、それ以上気にすることもなく、瑶月は目を閉じた。
木々の葉が風に揺れ、涼やかな音を奏でている。
隣では劉晟は変わらず書簡へ目を落としていた。
その横顔はいつもと変わらず、静かだった。
――ただ、その白絹の飾り紐が風に揺れるたび、どこか機嫌がよさそうに見えた。




