空しい祈り
長淵は、何度も天牢へ足を運び何度も、瑶月へ証言するよう説得した。
「瑶月。もう一度、考えてくれ」
「劉晟が謀反を起こしたと証言すれば、ここから出られる」
けれど。
瑶月の答えは、いつも同じだった。
「……できません」
それだけ。
何度尋ねても。何度説得しても。決して変わらなかった。
そして――
日が経つほど、瑶月の身体は目に見えて弱っていった。
頬は痩せ。
唇は乾き。
かつては長く艶やかだった髪も、今では乱れたままだった。長淵は、そんな瑶月の姿を見るたび、胸の奥を締めつけられた。今日も天牢を訪れる。
長淵は持ってきた水を、瑶月の口元へ運ぶ。
「……飲めるか?」
瑶月は僅かに目を開けた。
けれど。
水を飲む力すら、もう残っていない。唇に触れた水が、僅かに流れ落ちる。
「……」
長淵の手が震える。
それでも。日に日に弱っていく瑶月を見ることには、慣れずにいた。
「瑶月……」
呼びかけても、返事はない。長淵は水の入った器を握り締める。
「……これ以上……」
声が掠れた。もう、説得ではない。命令でもない。ただの願いだった。
「これ以上、意地を張るな……」
瑶月の瞼が、僅かに動く。
「……死んでしまう」
長淵の声が震える。
「頼むから……」
一度、言葉を詰まらせる。
「生きてくれ」
長淵の目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
けれど。
瑶月は、しばらくして小さく首を横に振った。その僅かな動きだけで、長淵には十分だった。
やはり。
彼女は、最後まで変わらない。
長淵は目を伏せた。自分がどれだけ願っても、どれだけ苦しんでも。瑶月の決意を変えることはできない。
だからこそ――
自分が変えなければならない。長淵は、静かに立ち上がった。
天牢を出る直前。一度だけ、瑶月を振り返る。
「……必ず、助ける」
それは。
自分自身への誓いだった。




