令蓉の薬膳茶
「陛下、本日もお茶をお持ちしましたよ」
令蓉が、劉安の前へ茶杯を置いた。
劉安はその手から茶杯を受け取る。
「いつもすまんな」
「いいえ」
令蓉は静かに微笑んだ。
劉安は茶を一口飲む。
ほんのりと薬草の香りが広がった。
「今日も薬膳か」
「ええ。最近、お忙しいようですから」
「そうか」
劉安は、どこか嬉しそうに目を細めた。
二人が夫婦となってから、長い年月が経っている。
それでも――
劉安の令蓉を見る目には、今なお変わらぬ情があった。
それは、景国城にいる者なら誰もが知っている。
令蓉が体調を崩した時など、政務を置いて寝台の傍らに座り、自ら看病をすることさえあった。
皇帝と皇后。
その立場からすれば、少々過保護と思われるほどだった。
けれど、誰もそれを不思議には思わない。
長年共に歩んできた二人の間に、それだけの情があることを皆が知っていたからだ。
そして令蓉もまた、表立って多くを語ることはないものの、劉安の側を離れたことはなかった。
夜になれば薬膳を調え、自ら茶を届ける。
それが、二人にとっては当たり前の日常だった。
周囲から見れば――
まさに、おしどり夫婦。
けれど。
そんな二人にも、互いには決して見せない顔がある。
皇帝と皇后である限り、そこに利害関係が生まれることは避けられない。
たとえ長年連れ添った夫婦であろうとも――
その立場を捨てることは、決してできないのだから。




