Ep.7 怪しいことしてるタイプのダウナーお姉さん
◇雪宮邸
『———というわけで、今回の報酬はこのくらい……おい、雪宮? 聞こえてるか?』
「え? あーうん、聞いてる聞いてる」
『まぁいい、ひとまずお前は少し休め。表に出過ぎだ』
「分かってる分かってる、別に言われなくてもサボるから問題ないって」
『それはそれで問題だが……そうだ、例の妖魔で何か分かったことはあるか? 些細なことでいいから教えてくれ。今後の防衛にも関わる問題だ』
あの妖魔か……
根源、いやアレは少し違う……
まぁいい、あの形態変化については伏せておこう。
「……そうだね、誰かが裏で糸を引いているのは間違いないだろう。彼の言動から考えてそこは確定だ」
『他には?』
「……ないよ」
『そうか。悪いがそろそろこっちも仕事がある。何かわかったら連絡してくれ』
「りょーかい」
佐伯クンとの通話を終了し、そのままベッドへ寝転がる。
さて、どうしたものか。
しばらく休めと言われても……全然休めるが、やはりユウくんの動向は追っておきたい。
そんなことで悩んでいると、ふと近くに気配を感じた。
目元に暖かな肌が触れた。
「ふふふ……だーれだ?」
「サクラ、いつの間に忍び込んだの?」
瑠璃坂サクラ。
桃色の長髪と紫の目、そしてどこか掴みどころのない雰囲気……あとでっっっっかい胸が特徴的な彼女は、私と同じく魔術協会に所属している。形式的には。
「昨日だよ……? 一晩中、ベッドの中に居たのに……どこに行ってたの?」
「知ってるくせに」
「ふふふ……」
にまにまと笑顔を浮かべながら近づいてくるサクラ。
彼女は私の身体に手を回して……
「そうだ、計画の進行は……」
「ふふふ……万事順調、だよ?」
「そっか。なら良かった」
「心配なの……?」
「いや、そうじゃないけどさ。ちょっと予想外の事態が起きたから……順調ならいいよ」
これならなんとか———いや、念には念をだ。
「さらに早めることって出来る?」
「うん……? うん、できるよ……?」
「そう、ならお願い」
「分かった……後でご褒美、ね?」
「そりゃあもちろん」
そう言い残すと、彼女は光の粒となって消えた。
ちょっと今はそういう気分じゃないんでね。
「さて、どうするか。実験でも続けるか、それとも……やる事が多いなぁ。こういう時は現実逃避に限るね」
ということでユウ君をストーキングします。
◇深月市
「やぁ」
「うわ、不審者だ」
「不審者とは失礼な……ダウナーお姉さんなのに」
「ダウナーお姉さんってこんな変な人を指さないだろ!?」
うーん……でも、一般的に流行ってるダウナーお姉さんモノって結構私に近いのでは……?
むしろ私の方が王道だろう。
「言われてみれば確かにそうかもしれない……いやでもアンタそもそもおと「ダウナーお姉さんな」は、はい」
分かればよろしい。
「それじゃあ一緒に散歩しながらダラダラ喋ろうや、ユウくん」
「何を喋るんですか? そもそも僕、あなたのことよく知らないですし……そっちも実際のところ、僕のことよく知らないですよね?」
「いや、私はキミのことをよぉ〜く知っているよ」
「え?」
佐伯クンが一晩でやってくれました……まぁ異世界の情報とかは当たり前のように分からないので、そのあたりは直接聞きたいけど。
「個人情報保護とかは?」
「魔術協会にそんな常識が通用すると思わないことだね」
「古い組織……」
「おいおい、あんまり言ってくれるなよ? いくら魔術協会が古びた組織だからって、そんなこと言われたら爺さんが悲しんじゃうでしょ」
とはいえ、そのあたりは仕方ないところではある。
裏から治安維持してるわけだしね?
「まぁ、それはそうなんでしょうけど……というか、そもそも雪宮さんって一体なんなんですか?」
「ダウナーお姉さんだってこれまでに100回くらい言ったけどなぁ」
「そんなに言ってないです。どういう人間なのか聞いてるんですよ」
「どういう人間か、ね……」
私がどういう奴なのか、と。
まぁ答えてあげてもいい(上から目線)
「私の名前は雪宮ユキ、21歳。茶色のサラサラな長髪と海のように青く澄んだ目、そして白いコートが特徴的なダウナーお姉さんだ。趣味はゲームと映画と小説と人間観察とストーキングで、特にゲームが好きだよ」
「今ストーキングが趣味って言いました?」
「あぁそうだ、魔術や魔導具なんかも好きだね。最近はAIとの連携で何か出来ないかと試しているんだが、そういう方向は微妙でね……やはり魂のルートから行こうとか考えているところだ」
「あの、無視しないでください」
「もうそろそろ義体が完成するんだ。魔導コアとも合わせればついに自律型のアンドロイドが完成する……出来たらお披露目してあげよう」
「なんかとんでもないことしてますね???」
うん、まぁこれで言いたいことは大体言ったかな?
それじゃあ次はユウ君のターンだ。
「はぁ……自己紹介すればいいんですか?」
「あぁ、私はキミのことを知る必要がある」
「ま、まぁ自己紹介くらいならいいですけど……神崎ユウ、17歳。趣味はゲームと漫画、あと動画見たりとか? 最近あったトピックはやっぱり異世界に転移したことですかね」
「……日本における英語の時間のスピーチみたいな内容の無さだね。5点、といったところか」
「そっちから振っておいてその反応!?」
「私が聞きたいのはそういうことじゃない」
にゅっ、とユウ君の方に顔を近づける。
ふふふ、やはり私の美しい顔が近くにあると恥ずかしいのか……ユウ君は少し赤面していた。
「じゃあ何聞きたいんですか」
「異世界の話とか?」
「それを話して何になるんですか……」
「キミは意外と冷笑系だな……私が言えたことじゃないが」
しぶしぶ、といった表情でユウ君は異世界についての話を始めた。
「昼休みに、突然足元が光りだしたんです。それで気づいたら王城に転移していて……」
「うんうん」
「“あなたこそ勇者だ。勝手に呼び出したことはすまないと思っている。だが言わせて欲しい。魔王を打ち倒し、私たちの世界を救ってくれ”と、そう言われました」
「ほぉ」
「僕はそこから2年で魔王を打ち倒しました。それまでに色々と苦難はありましたが、聖剣の力もあってなんとか倒す事ができたんです」
「……どうやってこっちに戻ってきたの?」
私がそう聞くと、彼は意外そうな顔を見せる。
「そこが気になるんですか? 確かに帰還用の魔法はありませんでした。でもある日、王様が僕に言ったんです———帰還用の魔法を見つけた、と」
「なんともご都合な展開だね」
「どうやら宝物庫に隠し部屋があったらしく……そこから帰ってくる事が出来たんです。こっちの世界にもそういう魔法ってあるんですか?」
「一応補足するけど、この世界において“理屈が解体されたもの”は“魔術”と呼び、“未知の理屈で動作するもの”は“魔法”と呼んでいるんだ。あるとしたら魔術の方があり得るだろうね」
世界間移動の魔術。
呼び出しと送り出しだけがあるってのも……妙な話だね?
ま、そこはいいや。
「ありがとう。少しキミのことが知れた……また話を聞かせてくれたまえ」
「なんなんですかその口調」
よかったらぁ!!!
☆☆☆☆☆してくれると嬉しいなァ!!!




