Ep.8 終臨歴4年、1月9日。最後の砦にて。
◇???
それは、異なる世界すら見渡す眼を持つ大悪魔が見た光景。
巨獣がひしめく異様な世界は発展を遂げ、機械と魔法の力ですべてを支配した。
だがしかし……それを滅ぼしたのもまた機械だった。
『ハンター、聞こえるか? また機械兵が破壊された、もう残機が少ない。それに奴が処刑した人数も一千万を超えた。次の作戦を……』
「聞こえてるよ。分かってる、だが……もうあたし達には無理だ。奴はそもそも戦える存在じゃねぇ」
ドローンから送信された戦場の動画には、無数のマネキンのような存在が映っていた。
それらは圧倒的な速度で機械兵たちを翻弄し、破壊している。
「もう……諦めるしかねぇ」
『お前らしくないな? お前は最後まで諦めないと思っていたが』
「諦めなかった結果がこれだ。わざわざあたしが反抗しなきゃこうはならなかったかもしれねぇ」
奴らの目的はあたしだしな、とハンターと呼ばれた者……顔に6つの傷を刻んだ白髪と青目の女が付け加える。
「そりゃあたしだって長生きしたい……いや、むしろ永遠に生きたい。けどそのために他の奴らが死ぬんだったら……あたしが死ぬべきだろ?」
『お前が死ねば悲しむ者は大勢いる』
「大勢? もう残ってる人類は1万人を切ってるっていうのにか?」
『……』
だがしかし、自らを犠牲にして終わりというのは少々いただけない。
自分が死ぬくらいなら相手も巻き込んで自爆する———それがハンターと呼ばれた彼女の考え方である。
彼女は机の上に置いてあったナイフを掴み、通信している相手に向けて口を開いた。
「最後に本気で戦ってやる。それで負けたら……仕方ねぇ」
『……お前が死ねば、私は悲しい』
「しゃーねーだろ人類滅んじゃうんだから。それに……」
『それに?』
「あたしがやれなかったとしても、誰かが奴をどうにかしてくれる」
『それはどういう……』
「じゃあな、来世で会おう」
通話相手が何かを口に出す前に、彼女は通信を終了した。
そしてそのままの足取りで拠点の地下へと向かった。
「うーん、まだ動くかな……お、大丈夫そう」
そうして彼女は、地下に眠っていた一機のアンドロイドを起動した。
『ハロー、マスター。ご命令を』
「……このデータをすべて保存しろ。メモリーに全部だ。それと、なるべくこれまでの記憶も維持しろ」
『了解いたしました』
彼女はそのアンドロイドと手を合わせ、自らの持つデータをすべて送信した。
『保存が完了いたしました。次のタスクはなんでしょうか?』
「そうだな……あたしのために死ね、って言ったら怒るか?」
『いいえ。私はマスターに従います』
「……ありがとう」
ハンターはその場で立ち上がり、部屋の隅にあった機械を起動する。
「うまく動くかは分からない。理論だけだし、まだ実験もできていない。有機物は耐えられないけど、無機物なら耐えられるかも知れない」
そうして彼女が、その機械から遠隔で魔法陣を起動する。
彼女と、その仲間たちで考案し、制作した世界間移動の魔法陣。
「その記憶を保持するんだ。そしてこの魔法陣で移動した先でそれを伝えてくれ。上手くいけば、その世界で最も頼りになる奴の元に行けるはずだ」
『しかし、この方法では成功率が……』
「あたしのために死んでくれ。成功する可能性は低い。お前はほとんどのメモリーとデータを失い、機能の中枢すら消え去るかもしれない。だがやってくれ。あたしのために」
『了解しました』
そう言われたアンドロイドが、自ら魔法陣の上へと足を運ぶ。
魔法陣が光を帯び始めた。
『マスター』
「なに?」
『私はマスターのこと、好きでした』
「……そっか」
2人とも、目は逸さなかった。
『行ってきます』
「行ってらっしゃい」
そして、その機械人形は姿を消した。
残ったのは焼け焦げた魔法陣だけ。
「さて、うまくやってくれよ?」
ハンターは小さく呟いた。
それからゆっくりと踵を返し、地上へと続く階段を登り始める。
上からは機械が軋む音が聞こえてくる。どうやらすぐそこまで来ているらしい。
「さて……」
彼女はナイフを握り直す。
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
砦の扉が開かれ、そこから無数の敵が現れた。
「さぁ……お前ら全員ぶっ殺してやるよ!! あっははははぁ!!」
ナイフを黒い光が覆い、彼女の身体は超高速で軌道を描く。
マネキンのような敵たちは、一瞬でその半数が砕かれ———残りの半分の首が飛んだ。
「ははははは! おいおい、これで終わりかぁ!? あぁ!?」
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
次元の壁を破壊して増援が現れた。
先程は100体程度だったマネキン型の自律機械が、今度は200体ほど。
「〝カオスナイフ〟ッ!!」
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
黒い稲妻が周囲の全てを覆い尽くし、またもやすべての敵が消し飛んだ。
「脆い、脆すぎるぞゴミ共が!!」
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
だが、増援はまだ増えていく。
次元の扉はさらに広がり、次は数千体の敵が彼女の頭上へ降り注いだ。
遠くから魔力の砲撃を放つ者もいる。
「上等だよ、あぁ!? 全員掛かってきやがれ!」
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
そして、彼女は無謀な戦いへと飛び込んだ。
もう一方では———
◇???
「親方! 空から美少女ロボが!」
「おいおい、そんなことあるわけ……うわ、マジ? ユキちゃん最近変なの拾いすぎじゃない?」
「サキちゃん、この子解析しようよ。ほぼ全壊してるけど……きっと私たちならいける。そう、ダウナーお姉さん2人の力があれば、ね」
「アタシってダウナーお姉さん枠なの? サクラとか狂夜とかじゃない? そういうのってさ」
次回:Chapter 2開始
よかったら☆☆☆☆☆してってね!
マジで喜ぶので




