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義妹の命令で『魔性の悪女』を演じていたら、婚約者にも捨てられました ~放蕩令息は魔性の悪女をお望みです~  作者: 杓子ねこ


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4.再会とお近づき 前編

 ネリガン公爵邸での晩餐会から間をおかず、フレデリカはふたたび社交の場へ姿を見せることになった。

 

 今夜もまた、煌びやかな広間で大勢からの視線と囁き声を浴び、縮こまりそうになる胸を張ってフレデリカは妖艶にほほえむ。

 

(うううう、先週も晩餐会に出たのに……)

 

 これまでなら、新しい遊び相手を得たエイベルは二か月は満足していてくれるはずだった。

 そのあいだフレデリカは人前に出なくてすむのだが、今回は違った。

 

 ジェリクを見送ったあと、エイベルは眉根を寄せて言ったのだ。

 

『伯爵なのはいいけど、もう結婚してるしおじさんじゃない! あたしは結婚相手をさがしてほしいのよ!』

 

(――いや、それはそうなんだけどおおおお!!)

 

 そもそもフレデリカは『魔性の悪女』。そんな女に声をかけてくる男なんてみんな浮気上等のろくでもないやつに決まっている。

 

 最初のうちは、真面目に結婚を考えてくれそうな貴族令息たちもいた。

 彼らと遊んでは「あたしにはつりあわないわ」と捨ててきたのはエイベルだ。そのうえ「お義姉様にぶたれるからもう会えないの」とフレデリカのせいにする。

 男漁りをして遊び歩いているのはエイベルなのに、「どこそこの令息がフレデリカに弄ばれた」という噂が立つ。

 そんな姉が当主となる子爵家から妹を娶りたいと、まともな令息なら考えない。

 

 こうして、エイベルの手によって、〝魔性の悪女〟フレデリカはできあがり、同時にエイベルの結婚相手さがしは難航することになった。

 

 今夜だって、馬車からおりるとき、フレデリカはこっそりエイベルに言ってみた。

 

『エイベル、結婚相手なんだもの、自分でさがせばいいじゃない。あなたはとってもかわいいんだから……』

 

 しかし、その言葉はエイベルには禁句。

 

『うるさいわね!! まともな男からは相手にされない自分の無能を棚にあげないで!!』

 

 駄々をこねる子どものように、顔を真っ赤にしたエイベルが手をのばす。髪をひっぱられそうになって、フレデリカは急いで広間へ入った。

 

(余計なことを言ってしまったわね)

 

 派手な紅をぬった唇にグラスをつけつつ、フレデリカは内心で肩を落とした。

 エイベルは離れたところでセルシオに付き添われて料理をとっているのだが、突き刺すような視線がいまだにフレデリカから離れない。

 

 エイベルいわく、原因の一端はフレデリカにもある。だから、フレデリカが自分のために骨を折るのは当然なのだそうだ。

 

 フレデリカは社交デビューと同時に数々の視線を集め、ヴェルチェ家に花束や贈りものが届くこともめずらしくなかった。

 エイベルは自分も社交デビューさえすればそんな扱いを受けるのだと信じていたらしい。

 

 だが現実には、かわいらしい容姿のエイベルは令息たちからダンスを申し込まれることも多かったものの、フレデリカほどではなかった。花束や贈りものも届かなかった。

 フレデリカがいる晩餐会では、いくら隣に立っていようと視線はすべてフレデリカへ流れてしまう。エイベルなど眼中にないというように。

 

 社交の苦手なフレデリカは最低限の式典や晩餐会にしか出ないようにしているのに、それも謎多き美女として受けとられ、フレデリカへの注目を集める始末。

 

 エイベルにとっては、フレデリカに声をかけてきた男を奪い、けなして捨てることが、フレデリカに傷つけられた自尊心を満たす行為でもあるのだ。

 

(こんなことを続けていても意味がないと思うけれど)

 

 ではどうすればいいのかと尋ねられても、フレデリカにも答えがない。

 フレデリカがいれば話題に事欠かないからと、見世物のように招待状を送ってくる貴族も多い。そのたびにエイベルは出会いを期待する。

 エイベルに逆らえば、怒ったサラに厳しい罰を与えられる。言うとおりに従うしかない。

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