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弱者の牙  作者: 酔月 猫丸
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第1話 現状確認

…どれほど時間が立ったのだろう。


『私』という存在が誕生してからは、かなりの月日が経ったようにも思える。


最初はろくに回らなかった思考もだいぶマシになり、自分の周りや自分を認識する余裕も生まれてきた。


『私』は陽の光がよく当たる崖に隣接した空き地に直接刺さっており私の周囲20メートルほどには草しか生えていない。私は自分で言うのも何だが特に言うこともない普通の両刃の片手剣だと思う。


『私』がこうして今人間のような思考回路を持っているのも目の前で骨になり植物が生えてきている『元主』の『もっと弱き者の力になりたい』という遺志から生まれたかららしいが…


そのせいで、幸か不幸か『元主』の記憶を知識として持っているが、あまり共感出来ないでいる。


おそらく剣と人とではそもそもの精神構造が違うのだろう。それでも生まれる理由になるほど強力な遺志だけあったようで、不思議と『弱きものを助けたい』という思いがある。


そして私もそう思ってしまうことを不愉快にも思わないでいる。


死の間際まで他者のために在りたいと思えるその狂気とも言えるあり方を美しいと思い、憧れてしまったのかもしれないな。


その願いを叶えるにはまず力がいる、弱き者を守る力が


『私』という存在が確立しきる前から『力を与える』という方針は決めていた。


ただ、そこからが行き詰まっている。


おそらく強大な魔力を貸し与えたとしても相手の『器』が耐えられずに死んでしまう。


過剰な身体能力を付与しても肉体が負荷に耐えられず、負荷を耐えれるように魔力で防壁をはろうにも魔力に『器』が耐えきれず、耐えきれる範囲にした場合大した強化は望めない


『狂化』させた場合もある程度までは行けるがそれでも『英雄』などの上位存在には対抗できないだろう…


さらにどの方法も今の自分には不可能である。


正直できることがなく、今は自分の周囲に存在する魔素を取り込み魔力量を増やし、自分の存在の格を上げていくくらいしかすることがないのが現状だった。


私の周りに生えている草木も大きくなっておりおそらくだが、数年はそれを繰り返している。


今日もまた何も変わらない日が始まるのかと思っていたのだが、強大な影が私の方へと向かってきていた。


…これは、何かあるかもしれないな、なんて考えつつ私はその影を眺めるのだった。

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