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第十一章 技術提供と日中交渉

関東大震災からの復興は、ゼロの存在によって、予想以上に早く進むことになった。

自給自足のための農業技術が、被災地への支援に活用された。

レイは、復興のための物資輸送計画にも、情報提供という形で関わっていった。

これらの支援を通じて、政府内でのレイへの信頼は、さらに確かなものになっていった。


復興が進む一方で、政府内では、レイという存在をどう活用していくか、長期的な方針の検討が始まっていた。

外務省の工藤一郎は、その検討チームの1人だった。

「レイが持つ知識を、外交に生かさないのは、得策ではないと思います。」

工藤の発言に、会議に出席していた他の役人たちは、戸惑いの表情を見せた。


「技術を外に出すのですか。」

「すべてを出すわけではありません。ただ、中華民国との関係を考えると、技術提供を通じた関係強化には、大きな意味があります。」

工藤の構想は、日本から中華民国へ、工業技術や医療、農業技術を提供し、その見返りに、資源と市場へのアクセスを得るというものだった。

レイも、この構想には早い段階から関心を示していた。


「中華民国との関係が良くなれば、この先、起きるはずだった衝突を避けられる可能性があります。」

レイがそう説明すると、工藤は静かに頷いた。

「あなたの知っている未来とは、違う道を作りたい、ということですね。」

「そうなの。全部を変えられるとは思ってない。でも、変えられる部分は、変えたいの。」


1923年から1925年にかけて、日本と中華民国の間で、技術提供を軸にした非公式の交渉が、少しずつ進められていった。

中華民国側は、工業技術や医療支援を強く望んでいた。

その見返りとして話し合われたのが、ウラン、タングステン、レアメタルといった資源と、市場へのアクセスだった。

中国側はそもそも、ウランやタングステン、レアメタルといった言葉さえも聞いたことがない。


交渉の中で、レイは、ある資源の調達に関する課題に気づいていた。

ウランの安定した調達には、新疆地域への接触が必要になる。

しかし、1922年時点の新疆は、軍閥の楊増新による半独立的な支配下にあり、ソビエト連邦との関係が、非常に深い地域だった。


「新疆に手を出すなら、ソ連を刺激する可能性がありますよ。」

レイが工藤にそう伝えると、工藤は難しい表情を見せた。

「今すぐに動く必要はありません。ただ、いずれこの問題に向き合う時が来る、ということだけは、覚えておいてください。」

レイの言葉は、まだ具体的な答えを持たない、将来への警告だった。

それでも、その警告は、確かに工藤の記憶に残ることになった。


技術提供を軸にした日中の関係は、ゆっくりとだが、着実に前進していった。

表向きには、ごく限定的な経済協力としてしか伝えられていなかったが、その奥では、これまでの歴史にはなかった、新しい関係の形が、静かに作られ始めていた。

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