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自己肯定感の低い女子を褒め続けたら人気者になったので距離を置くことにした  作者: シゲ ノゴローZZ
雨宮視点

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第89話 自尊心向上

 うー、鳩山君のせいで変な空気だよ。いや、私のコミュ力が低いせいってのもあるけど、それにしたってあの質問はないよ。普通メイクがどうとか聞く? それとも私の感性がおかしいだけで、女子にそういう話をするのって普通なの?


「それはさておいてだ……」

「……? えっと?」

「さっきの発言は聞き捨てならないよ、雨宮さん」


 え、どれ? どの発言……近いって! なんでいつも顔近づけるの? あんまりのけぞると失礼だから、ちょっとくらいは我慢するけども……。


「ち、近いって……」

「キミはさっき自分を卑下したね? 根暗だの……ブスだの……」

「だって……そのとおりだし……」


 悲しいけど根暗ブスだもん、私。その証拠にコギャル達がイジってきたもん。本当に可愛かったら、可愛いって言われないじゃん。自分より上の存在を褒めるとか、そういうのできない生き物だし。っていうかその話をするのに、なんで顔を近づける必要があるの? 距離感おかしいって! 今更だけど!


「キミは根暗じゃない。おしとやかなんだ」

「そんな……」


 良いように言いすぎでしょ! 逆に虚しくなるからやめてよ! 『デブじゃなくてぽっちゃり系だよ』って慰めるようなもんでしょ、それ。


「令和の大和撫子だよ」

「……」


 ちょっとバカにしてない? 無口な客に『クールですね』って言うキャバ嬢みたいな心境で、物を言ってない?


「雨宮さんは可愛いよ。ブスなんかじゃない」


 きたっ! また可愛いって言われた……。ダメだ、何度言われても顔が赤くなりそうだよ。


「そんなこと……私は全然だし……」

「今すぐトイレで鏡を見てくるんだ。キミは可愛い。整った顔立ちだ」

「鏡とか……毎朝見てるよ……」


 昔は見る度に憂鬱な気持ちになってたよ。いつの間にか全く気にならなくなってたけど。……あれ、そう言えば最近はそうでもないかも。憂鬱でもなければ無関心でもなくて、なんていうか……やたらと寝癖チェックに時間をかけてる気がする。


「どこが気に入らないんだ? どこのパーツが気に入らないんだい?」


 ……むしろお気に入りのパーツがないよ。一番マシなのが耳だもん。


「ええ……? 目とか……」

「キレイじゃん。心の綺麗さが瞳に表れてる」

「えっと……そんな……全然キレイじゃないよ」


 私、結構心の中汚いよ? 私に限ったことじゃないけど、結構失礼なこと考えるタイプだよ? なんだろう……友達がいた頃はそうでもなかったんだけど、友達が減るにつれて心の中で汚い言葉を使うようになった気がする。


「鼻も可愛いよ。許されるのであれば触りたい」


 何言ってるの!? お世辞の方向性おかしくない!?


「さわっ……!? き、汚いよ」


 鼻とか耳って絶対汚いよ。もし寿司職人が自分の鼻を触ってたら、絶対すぐに店から出るもん。


「ちゃんと手を洗ってから触るよ」

「そっちじゃなくて……」


 言うわけないでしょ、鳩山君に対して汚いなんて。そりゃ心の中で思うことはあるかもしれないけども。


「耳も口も頬も、全部可愛いよ。可愛くないところがない。性格も可愛い」

「も、もうやめっ……」


 そんな『牛は捨てるところがないよ』っていう雑学を披露するかのようにサラッと言わないでよ。もー! 徹底的に褒めてくるから思考が変になってきたじゃん!


「手も小さくて可愛いね」

「うぇ!? 手まで褒めてくるんだ……」


 この人ホスト? なんでもかんでも褒めてくるじゃん……。


「色もキレイだし、男の俺と違って柔らかそうだよ」


 うー……事細かく褒めてくるよ。こんなに褒め続けられるとおかしくなっちゃうってば。なんていうか悪い気が全然しない。人から認められるのってこんなに気持ちが良いんだ……。


「そ、それは……男の子と比べたら柔らかいかもしれないけど……」

「血管もあまり見えてない。俺の手なんか、ほら」


 え、血管見えるのってそんなにダメなの? 言われてみたら、私よりもハッキリと血管が浮き出てるけど……何がダメなの? 私結構好きなんだけど、もしかして感性が変なのかな?


「別に血管は……よくない?」

「そうかい? 見えないほうが可愛いと思うよ」


 そりゃまあ可愛さで言えばそうなんだろうけど……。


「嫌じゃなけりゃもう少し見せてくれないかな?」


 この人占い師? 手相でも見ようとしてるの?


「い、いいけど……?」

「ありがとう」


 うわぁ、なんかマジマジと見てくるよ。なんだろう、手なんて恥部でもなんでもないはずなのに、なんだか小っ恥ずかしい。妙にドキドキするというか、何かが満たされるというか。うー……自分の感情が分からないよぉ。手を見られて恥ずかしくなるのもよく分からないし、自尊心のようなものが満たされるのもよく分からない。


「爪もキレイだよ」

「……そうかな?」


 手入れなんて特にしてないけど、キレイなのかな? というか、ちゃんと爪切ってて良かったぁ……。爪が伸びてたら不潔だもんね。


「指毛も生えてないし」

「………………」


 はい? 今のはさすがにないよ? 無理矢理褒めてない? 急にそういうこと言われると冷めるんだけど……もしかしてさっきの爪うんぬんも適当? いや、そもそも私の手がキレイってのがそもそも……。


「白くて細長い指だね。ピアノを弾いてる姿が想像できるよ」

「ど……独特な褒め方だね。ピアノかぁ……」


 たしかに細めだけど、ピアノ弾いてそうなんて初めて言われたよ。どこでそういう褒め方を身につけてくるの? イタリア出身?


「マニキュアとかしないのかい?」

「マ、マニキュア……? 私みたいな女子が……?」


 冗談でしょ? 私がネイルとか絶対イジメられるって! 『それって戦闘用? 自衛手段?』とか言われるって!


「きっと似合うさ。俺が保証する」


 何を根拠に……。言っとくけど私のことを可愛いって言ってる時点で、鳩山君の美的センス終わってると思うよ? でも頼もしいというか、ここまで言い切られるとネガティブな私でもその気になっちゃうよ。


「……ありがとう。鳩山君は本当に変な人だね」

「こちらこそ、話を聞いてくれてありがとう。そして良い笑顔をありがとう」

「…………もう」


 鳩山君ったら、皮肉に対して大人の対応してくるんだもん。それにまた笑顔を褒められちゃったんだけど。笑顔はコンプレックスの一つなのに、鳩山君と喋ってると自分がイイ女のように思えてくるよ。危ないね、色々と。

 ……キレイな手かぁ、えへへ……。


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