第86話 ウザ絡み
「雨宮さん、めっちゃ可愛くなったじゃーん」
「そんな顔してたんだー」
え、え、え? なんかパリピが絡んできたんだけど!? もしかしてこの令和の時代にパー券を売りつけられる? オバケのパー券を売りつけられる? 買わされたところでどうせ行かないから、オバケの方がむしろありがたいんだけど。
「えっ、その……」
「髪めっちゃキレー」
えっ、何このコギャル。女の子同士だからって、こんな気軽に人の髪を触る? 私は貴女の名前すら知らないんだけど……。
「めっちゃタレ目じゃーん」
あっ、喧嘩売られてるんだ私。パー券じゃなくて喧嘩売られてるんだ。こういうこと言われるから前髪伸ばしてたのに……鳩山君がタレ目フェチなせいで……。だいたいねぇ! タレ目ってたるみだから! マイナスでしかないから! 陽キャのイジリポイントでしかないから! 鳩山君が物好きの変態なせいで、私がこんな見世物小屋の晒し者扱い受けてるんだよ! もー……。
「かっわいー」
……絶対バカにしてる。鳩山君は趣味が悪いから本気で私を可愛いと思ってるみたいだけど、この子達は絶対私を見下してる。だってアレじゃん。女子ってキレイな女優さんに対しては『ヒアルロン酸入れてね? 手もババアだし』とか『世間で言われてるほど美人じゃないよねー。っていうか性格悪そうな顔してるし』とかボロクソいうけど、ブス扱いされてる女性芸人に対しては『え? 普通に可愛くない?』って言うじゃん? そのくせに『そうだね、可愛いね、キミに似てるもんね』って言うとブチギレるでしょ? 自分で可愛いって言ったくせに、似てるって言われたらキレるでしょ? それ結局、ブスを持ち上げて悦に浸ってるだけじゃん。自尊心のために私を踏み台にするのやめてほしいなぁ……。
「雨宮ちゃん、ほっそいよねー。羨ましいなぁ」
「はは……そうかな……」
それスタイル悪いって意味だよね? 自分がダイエットを怠ってるだけのくせに、細い子をバカにして自分を正当化してるんだよね? 『私ぐらいの肉付きが男にモテるんだよねー』とか思ってるんでしょ? じゃあ男遊びでもしてなよ。私は別にモテなくていいし、諦めてるから。ブスだけど間食控えて体型保つよ。それの何が悪いのかな? 太っててもいいことなんてないからね?
「雨宮さんって、あんであんな前髪長かったん? 可愛いのに」
「えっと……恥ずかしくて……」
「えー? あんな髪型のほうがハズいってー」
……うるさいなぁ。根暗ヘアーでもいいじゃん。貴女達だって厚化粧しなかったら私とそこまで大差ないくせに。しかも何? パーマかけてない? そんな盛りまくった自分に酔ってたら、酔いが覚めた時死にたくならない? どうせ将来は整形しまくりでしょ? 私はブスでも整形なんてせずに、一人で生きていくよ。貴女達は金だけ持て余したブサイクとか、『お前を守る』とか口だけのアホヤンキーと結婚して幸せになればいいじゃん。どーせ数年後には『男運がない』とか騒ぐんだろーけどさぁ。
「はは……そうだよね……」
「そーだ、連絡先教えてよ」
「いや、えっと……」
「いーじゃん、クラスメイトなんだからさー」
「どっか遊びに行こうよ」
……帰りたい。なんで髪切っただけでこんなウザ絡みされなきゃいけないの? どうせアレでしょ? カラオケとかに連れて行って、ボソボソ歌う私に向かって『頑張れー!』みたいな感じで煽ってくるんでしょ? ほんっと、コギャルって嫌い。校長がトチ狂って昭和みたいにならないかなー。スカート丈とか髪の長さとかガンガン厳しくしてくれないかなー。こういう子達は校則に背いて、先生達から目をつけられるだろうし、是非そうなってほしいよ。内申点下がりまくればいいのに。
「食堂行こー」
「あっ、オッケオッケ」
「じゃーね、雨宮ちゃん」
「……うん」
ふぅ……やっと消えてくれたよ。何が『一緒に遊ぼう』なの? 今私を食堂に誘わなかったのが全ての答えじゃん。いや、私としては誘われなかったのはめちゃくちゃありがたいことなんだけど、バカにされてたのが確定してむかっ腹が立ってきた。というか鳩山君どこ行ったのかな? 先週はお弁当だったよね? 私の横で延々と話しかけてきてたじゃん。いや、正直迷惑だから離席するのは別にいいんだけど……なんか飽きられたみたいで面白くないなー。散々褒め殺ししといて、急に一人ぼっちにするなんていけずだよね。まあ陰キャは陽キャのオモチャってのが、世の常なんだろうけどさぁ。




