第73話 忠告
予想通り、日曜日も搾られました。いや、搾り取られたという表現のほうが正しいかもしれない。アレほどSに目覚めた雨宮さんが、日を跨いだ途端に生娘に逆戻りしたんだから、そりゃ搾られるよ。
……はぁ、学校行くのやだなぁ。疲労感もさることながら、学校内じゃ雨宮さんが冷たいってのが辛い。こればっかりは仕方ないんだけどさ。
「アメちゃん大丈夫ー?」
「え? 何がかな? あはは」
「歩き方変だよ? 筋肉痛?」
「あはは、それもあるかなー?」
やはりというか、雨宮さんは俺以上にダメージ受けてるらしい。俺以上に体力なさそうだもんなぁ。
「どしたん? おしっこ我慢してる?」
山中さんのノンデリな問いかけに、スケベな畜生がピクッと反応する。おい、人の女に下心を抱かないでくれ。いや、彼女とかそういうのではないんだけど。
「違う違う、ちょっとお股が痛くて……」
え、それ言っちゃうの? 俺の席まで聞こえる声量で、そんなこと言っちゃうの? 結構多くの生徒に聞こえちゃうよ?
「え、マジ? DVでも受けたん? 仕返ししよっか?」
違うよ山中さん、股間に攻撃なんてしてないよ。むしろ俺がされた側だよ。
「あはは、大人になっちゃっただけだよ……」
めっちゃ赤裸々に語るじゃないですか。なんか山中さんが俺を睨んできてるんだけど、なんで俺? クラスでハブられてる俺が、なんで第一容疑者になるの?
「気に入ってもらえたよ、あはははは」
気に入ったけど! たしかに相性抜群だったけども! それをペラペラ喋る? 周りの男子達、めっちゃソワソワしてるよ? 俺を睨んできてる人もいるし。
「うう、アメちゃあん」
なんで抱きしめてるの? 別に酷いことされたわけじゃないのに、なんで慈愛で包みこんでるの? そしてなんで俺を睨む? 祝福ならまだしも憎悪はおかしくない?
「深雪ちゃん、大丈夫だよ。大丈夫だから」
「そう? なんかあったら言いなよ? もしもの時、代わりにぶっ飛ばしてあげっからさ! ふふっ」
それなりに距離があるはずなのに、関節を鳴らす音がこっちまで聞こえてきた。なんか誤解を受けてる気がするんだけど、気のせいかな? 友達が自分の意志で処女を捧げたってだけの話なのに、なんか性的な被害にすりかわってない?
「雨宮さん、嘘だよな? 雨宮さんは処女だよな?」
「誰? 誰とヤったん? ってか冗談だろ?」
「アメちゃん、俺のことが好きなはずじゃ……」
何を言ってるんだ、コイツらは。雨宮さんの男の趣味は知らないけど、キミらが眼中にないことぐらいわかるよ。なんか悔しそうにしてるけど、元からキミらにチャンスはないよ。いやぁ、優越感を感じますなぁ。
あとはヤケを起こしたアホが手を出さないことを祈るばかりだな。
「ごめんね、私はもう……汚れちゃったの……」
雨宮さん? なんで俺をチラ見しながら言うの? 確定しちゃうじゃん。
「雨宮さん! 俺が上書きしてあげるよ!」
「俺上手いから! 気持ちよくしてあげ……」
「オメーら、アメちゃんに近づくなし」
「うるせーぞブス! お前は上級生のクラスで、男でもあさって……うげぇ!?」
うん、とりあえず山中さんがいれば雨宮さんの無事は保障されそうだな。情けない話だが、二年生の間は彼女に任せよう。
放課後は文化祭の準備があるわけだが、相変わらず居場所がない。といっても俺に限らず、皆も特にやることなさそうだけどね。一応チケット販売の仕事があるんだけど、俺はやらせてもらえない。おそらくだけど、金をちょろまかすんじゃないかっていう疑惑があるんじゃないかな。
む? 女子達が真剣な面持ちで雨宮さんに問い詰めてるぞ?
「アメちゃん、やっぱり相手って……」
「あはは……今は準備の時間だよ?」
「やることないしいいじゃん、別に」
「どうせアイツでしょ? 警察とか相談した?」
え、警察? 同意の上なんだけど、警察沙汰なの?
ひょっとしてだけど、俺が無理矢理犯したことになってる? 俺と雨宮さんが仲の良い友達だってのは、共通認識じゃなかったの?
「私は大丈夫だから……ね?」
「いやいや、しんどそうじゃん」
違うんですよ、ヤりすぎただけなんです。どっちかと言えば俺が搾られた側なんですよ。そりゃ最初に手を出したのは俺だけど、雨宮さんが誘ってきたわけだから、実質俺が手を出されたということになる。
「じゃ、じゃあ……ちょっと早いけど帰っていいかな?」
お? 早退するの? 早退理由が二日連続でヤったことなのって、どうなの?
「んあ? まあ、放課後だし自由じゃない? 一人で帰れる?」
「うん、ありがとう! じゃあまた明日!」
心配をかけまいと、足早に教室を出ていった。一瞬俺の方を見た気がするけど、これは一緒に帰ろうってサインかな?
「おい、ポッポちゃん」
「……な、何かな?」
やべっ、山中さんが絡んできたぞ。これリンチされるパターン? 俺何もしてないんだけど、この人明らかに怒ってるよな?
「アメちゃんがアンタを庇ってる手前、ああだこうだ言うつもりはないけどさー」
雨宮さんが俺を庇っている? イジメから庇ってくれてるってことかな? たしかに言われてみれば、雨宮さんが休みの時だけイジメ酷かったな。
「う、うん……」
「アタシってバカだからさぁ……アメちゃん泣かせたら、何すっかわかんないよ?」
うん……なんとなくそんな気はしてた。別にレズってわけじゃないだろうけど、妙な友情があるしね。
「アメちゃんが許してくれるからって、大概にしなよ」
「うん……?」
「詳細は知らないけど、どうせ首絞めたりしてんでしょ?」
「は、はいぃ?」
く、首絞めって何? なんで首を絞める必要があるんです? 殺人未遂じゃん。
しかも〝どうせ〟って言ったよね? 俺そんな風に見られてたの? 言い方的に、他にもヤバいことしまくってるような言い方だけど、一切してないからね?
自慢じゃないけど、俺は一度たりとも人道を外れたことがない。男として常に最良の選択をしていると自負している。ちょっと臭いセリフだけど、常にお天道様に顔向けできる生き方さ。
「もしものことがあったら……」
「ないけど……あったら何?」
「アメちゃんに止められようと、アンタのチンポをズタズタにする」
ひー……。
なんで生殖器を潰しにくるの? っていうか〝もしものこと〟って何? そんな曖昧なもので生殖器を潰しにこないでよ。
「忠告はしたからね」
「ああ、うん……どうも……」
「まったく……アタシもなんでこんなヤツを……」
……?
とりあえず帰ろうかな、俺にできる仕事なさそうだし。いやー、なんだったんだろうねえ? なんで山中さんに敵視されてるんだろ?
まあいっか。雨宮さん待ってるだろうし、急ごうか。




