第72話 全てを握りし者
経験人数で言えば普通なんだろうけど、経験回数で言えば人一倍あると思う。ゆえに耐性というか、理性も人一倍あるはずだ。
だというのに……。
「ふにゃぁ……」
「……大丈夫かい?」
我を忘れちゃったよ。雨宮さん、しばらくは体を起こすことさえできなさそう。
少しやりすぎな気もするけど、しょうがないじゃん。いつだったか雨宮さんが自己申告してたけど、本当に柔らかかったんだよ。さほど大きくないのに、手が飲み込まれる錯覚に見舞われたよ。
「汗とか凄いし、シャワー浴びる?」
「にゃあ……」
ダメだ、子猫ちゃんになってるよ。もう出す物を出してるけど、そんな可愛い声を出されたら……。
「キスするよ? いいよね? 答えは聞かないよ」
「ちょ、まっ……んっ……」
待てるわけがないよ。キレイな乳を放りだしたまま、ふにゃふにゃボイス垂れ流しだよ? 溜まってなくても、我慢できないって。普通の女性ならまだしも、雨宮さんクラスの美少女だよ? 俺のことをクズ呼ばわりする人がいるとしたら、キミはインポ野郎だ。言いにくいけど、キミは女性を幸せにできないよ。
「はげし……すぎだよ……」
「激しいだって? まだまだこんなもんじゃないよ?」
「鳩山君……ちょっと、こわ……」
何か言おうとしてたけど、問答無用で舌をねじこんだ。晴家さんとの性交より乱暴に責めてるけど、雨宮さんが悪いよ。目の前で水着に着替えるなんて、特殊なプレイされたらタガが外れるって。
「うー……キスなんて今日が初めてなのに……ディープなんて……」
「雨宮さんが可愛すぎるからいけないんだよ」
「んっ……ち……乳房イジりすぎっ……」
そりゃイジるさ。イジらないヤツいる? いないよね。
「タオルケット……かけてくれる?」
「なんで? 寒いの?」
「恥ずかしい……」
そう言いながらも隠す素振りを見せない。いや、隠す気力もないんだろうね。そんな抱き枕みたいなポーズされたら、俺も止め時がわからなくなるよ。
「ねぇ、写真撮っていい?」
「えいっ」
「あだっ!?」
調子に乗りすぎた結果、局部にデコピンをもらったわけだが、わりと冗談抜きで痛かった。加減してよ、もう。
「んふっ……凄い声」
そりゃ不意打ちであんな一発もらったら声も出るよ。ああ、いってぇ……。
「雨宮さん、それはやっちゃいけないよ?」
「別にいいでしょ? 私も強引にされて痛かったし」
いや、その痛さは必要経費じゃない? そりゃまあ、雨宮さんが途中でギブアップしても責め続けたのは、俺の落ち度だけどさ。
「えいえい」
「ちょ、雨宮さん……」
雲倉さんといい、雨宮さんといい、なんで揉んでくるんだろうね? 胸と違って揉み心地なんてよくないと思うんだけど。
「痛くないの? ちょっとの力でめちゃくちゃ痛いって聞いたことあるけど」
えっ、痛めつける目的だったの? なんか悪いことした?
「少し苦しいけど、騒ぐほどじゃ……んみゃっ!?」
「んふふ……ふふっ……うっ……くく……」
わ、笑いすぎじゃない? 今の結構痛かったんだけど?
「今のはダメだよ? 怒るよ?」
「怒ったら、もっと思いっきりギューってするよ?」
「……怒りませんよぉ」
文字通り俺の弱みを握った雨宮さんは本調子に戻ったみたいで、ようやく体を起こした。あの、いつまで握ってるんです?
「初めて見たときはあんなに大騒ぎしてたのに、慣れたもんだね」
「……まだやっぱり恥ずかしいよ? 直視できないもん」
チラチラと見てくるのは可愛いんだけど、見る以上のことしてない? そんなに気に入ったの? あげないよ?
「小さい頃、お父さんのを見たことはあるけど……触ったのは初めてだよ」
「まー、そりゃそうだよね。俺も尻とか胸を触ったのは、中学の頃の同級生が初めてだぎゃっ……!?」
「ふふっ……名古屋の人みたい」
死ぬぅ……。うぅ……いだいよぉ……ひどいよぉ……。俺別に、一切何も悪いことしてないのにぃ、ゴリッてされたよぉ……。
「ほらほら、シャワー行くんだよね? 何寝転がってるの?」
「待って……痛い……」
「はいはい、いいからシャワー行こうねぇ」
この子、色々な意味で強い……。いやぁ、将来は恐妻家かな? 将来の旦那さんが羨ましいような、気の毒なような……。
「んくっ……」
「あっ、ごめん。痛かったの?」
「いや、くすぐったい……」
いかんっ、声が抑えられん……。
「もー、鳩山君の指示通りに洗ってるんだよ?」
「そ、そうだけど……くすぐったくて……」
「ふーん? 大変だねー」
意地悪になったなぁ、雨宮さんも。遠回しに中断を要求してるんだけど、それを察しつつも手を止めてくれない。
「石鹸追加しようねぇ」
「待って、本当にくすぐったくて……」
「はいはい、我慢我慢」
ずいぶんと嬉しそうだ。これは確実に、語尾に〝♪〟がついているよ。
おかしいな、普段晴家さんにも同じことをしてもらってるけど、比較にならないぐらいくすぐったいよ。もしかして案外テクニシャン?
「鳩山君も私の胸、さんざん弄んだでしょ?」
「それとこれとは話が……」
「違いませーん」
「んくく……ギブっ! ギバーップ(ギブアップ)!」
渾身の命乞いは、虚しく風呂場にこだました。本当に隠れドSだよ、この子。
行為中はMだったのに、それ以外はSって……素敵じゃないか。結婚はあんまりしたくないけども。
何はともあれ、このシャワータイムさえ終われば、今日の性交は終わり……のはずだった。
この快感にも近いくすぐったさにより、再び勃起してしまう。それに伴って雨宮さんの心に火がついたらしく、強制的に延長戦が始まった。
あっ……これ、あれだ。雨宮さんの、このハマり方は……日曜日も性交させられるパターンに違いない。俺から仕掛けたはずなのに、完全に主導権握られたなぁ。




