第74話 三連チャン
ウチの生徒、全然いないなー。平日のフードコートなんて、常にウチの生徒がたむろしてるはずなんだけど。
……俺ら二人ぐらいじゃないの? 文化祭の準備をサボったの。
「やることないから帰っただけの話なのに、罪悪感を感じるよね」
「そうかな? 私は鳩山君のおかげで悪い子になっちゃったし、今更これぐらいで悪びれないよ」
それは言いがかりでは? 俺変な遊び教えたっけ? どっちかといえばクラスの皆じゃないかな?
「雨宮さんは色々仕事してるからいいかもだけど、俺なんにもしてないよ? させてもらえなかったって言ったほうが、正確かな?」
仕事貰えないのって辛いんだなって、しみじみ思うね。窓際族って、メンタルという意味では最強かもしれないね。俺にはとても無理だわ。
「大したことしてないってぇ」
俺に気を遣ってか、ヘラヘラと笑う雨宮さん。捻くれた考え方かもしれんけど、その大したことさえ任されない自分が情けない。
「そっか……。俺、結構教室抜けてたけど……その……」
「んー? あー、そうだったかな?」
え、そのレベル? 俺のことを一番気にかけてくれている雨宮さんが、気付かないレベルなの? 教室にいた時間より、雲倉さんのクラスに行ってた時間のほうが遥かに長いよ? だって、あっちは居心地いいもん。皆、普通に喋ってくれるもん。
「誰も気にしてないから、鳩山君も気にしなくていいよ?」
「あっ……うん」
わざと? わざとですか? それ逆に傷つくヤツでは? 実際、傷ついたよ? 悪気がないことを知ってるから、耐えられたけども。
話題の変更も兼ねて、あの件について聞いてみるか。局部破損の危機だし。
「あっ、そう言えばさ、山中さんがさ……ちょっと気になることをだね……」
「ねぇ? 放課後デート中だよね?」
言い終えると同時に、クシャっとドリンクのカップを握り潰す。中身がこぼれなくてよかったけど、お行儀悪いよ? というか単純に怖いんだけど?
とりあえずデート中だという事実が発覚したのは大きい。変なすれ違いが起きる前に気づけてよかったよ。
「デート中に他の女の子の名前出すなんて、さすが悪いことを教えてくれた先生」
後者については全く心当たりがないんだけど、ひとまず前者については謝罪しておこう。自分が悪くなくても、こういう時は頭を下げるのが吉だよ。色んな女の子と遊んできた俺にはよくわかる。
「ごめんね? 雨宮さんが教室を出た直後に、声をかけられてさ」
「ふーん? へー? よかったねぇ? 鳩山君は深雪ちゃんに気があるもんね?」
え、どこ情報? 出典が気になるんだけど。もしかしてワザッ……。
「私もギャルになろうかなぁ」
えっ、普通にちょっと見たいんだけど。いわゆる白ギャルだよね? マニキュアとメッシュの時点で、既に白ギャルな気もするけど。
「それはどういう風の吹き回しで?」
「気まぐれとかじゃなくて、鳩山君に求められたいだけだよ?」
認め……求め……え? 何?
「鳩山君は慣れてるから、既に元の日常に戻ってこれてるかもしれないけど、私は土日のことを思い出すだけで胸がドキドキするの」
「……俺もだよ?」
「え? 鳩山君も?」
なんで意外そうなの? そりゃ女の子とのイチャイチャは慣れてるけど、本格的な性交は晴家さんぐらいだよ? 軽いのはまあ……そこそこあるけども。
「こんなところで話すことじゃないかもしれないけど、ベッドでぐったりする雨宮さんを思い出すだけで……ね?」
「んふっ……もう! こんなところでズボンを窮屈にしないでよ……バカッ」
ごめん、不可抗力です。仕方ないさ、男だもの。
「うー……あんなあられもない姿を……」
「妖艶だったよ?」
「……エッチ」
えー? 極めて紳士的な褒め言葉を投げかけたつもりなんだけど?
でも……その表情で『エッチ』って罵倒されるのたまらないよ。可愛い。
「でも初めてにしては洗い慣れてたよね?」
「あ、あれは……その……」
「その?」
「……鳩山君に喜んでもらいたくて……」
良い子すぎないですか? モテだしてから告白を断り続けてるみたいだけど、大正解だよ。今の雨宮さんに見合う男なんて、そうそういないよ。イイ女すぎて、逆に売れ残りそうで心配だね。
「もうね? ほんとね? 無我夢中だったんだよ?」
「と言いますと?」
「だってほら、自分についてないでしょ? 勿論、深雪ちゃん達にも」
一瞬変な想像しちゃったから、不意打ちでそういうこと言わないでほしい。ふたなりだっけ? やめてね?
「私は水着を披露していっぱいいっぱいだったのにさ、いきなりおヘソをイジってきてさ……そこからもエッチな目で見てきて……」
「イジったとは人聞きが悪いね」
ちょっと息を吹きかけただけじゃないか。本当ならツンツンしたかったし、お腹の肉もプニプニしたかったよ。
「もうわけがわからなくなってるのに、そこでいきなり……」
「いきなり?」
「チン…………アレを出してきてさぁ」
それに関しては本当にごめん。でも出すでしょ? 俺が出したというより、出さされたんだよ。あのまま顔にこすりつけなかっただけ、紳士的だと思うよ?
「ノーマルモードでさえ見慣れてないのに、あんなに上向いた状態のを……」
「えっとね、もう出すしかないと思って……」
「何その使命感? 想像の百倍ぐらい凶悪なモノが出てきて、悲鳴あげそうになったよ? 臭いも独特で、クラクラしたし」
マタタビ? 俺の局部マタタビ?
「そんなに凶悪かな……」
「凶悪だよ! お父さんのはあんなんじゃなかったもん!」
声が大きいです、抑えてください。っていうかお父さん、小さいんだ……。俺も普通レベルだってのに……。まあ、子供の頃の記憶だろうから、どこまで正確かは知らないけども。
「見るのも見られるのも初めてで……でも恥ずかしさよりも、なんていうかこう、抑えきれない衝動のようなものが……」
「ストップ、ストップ。ここフードコートですよ?」
近くの席には誰もいないけど、だからといって屋外でするような話じゃない。雨宮さんって意外とブレーキ壊れてるから、どんどん声大きくなってきてるし。
「……鳩山君、さっき私を傷つけたよね?」
「え、なんのこと?」
「深雪ちゃんの話したじゃん……」
ストローをガジガジと噛みながら、ジト目を向けてきた。何を要求されるか知らないけど、下手に逆らうと俺もストローの二の舞いになりかねない。
「傷つけたなら、癒やさなきゃダメだよね?」
「……今日?」
「傷の手当は早いほうがいいでしょ?」
お互いに体ガタガタだってのに、恐ろしい人ですわ。
……まあ、俺もムラムラしてたからいいんだけどね。




