第70話 着替えプレイ
雲倉さんってスタイルは立派だけど、中身は案外お子ちゃまなんだよね。デートの前半はあんなに大はしゃぎしてたのに、後半は疲れのせいで無口になっていた。ペース配分ができないほどデートを楽しんでくれたと考えれば、俺も鼻高々ですなぁ。
「善吉君、明日もデートのつもりだったんだけどさぁ」
「え?」
その予定、俺知らないんだけど? 確かに『土日両方空いてるよ』とは言ったが、それはどちらでも対応できるって意味であって、両方使うとは一言も言ってない。まあ別に、嫌ってわけじゃないんだけどね?
「雨宮さんと晴家さんが女子会したいって言うから、そっち行くね」
手刀をこちらに向けながら、デートのキャンセルを告げてきた。そのジェスチャーが謝罪のジェスチャーなのか、女子会に行ってきますのジェスチャーなのかはわからない。いやまあ、別にそれに関してはどっちでもいいんだけど、二日連続でデートをする予定だったのはいただけないな。俺は予定を合わせやすいように計らっただけなのに、先走りすぎだよ。思い込みで突っ走るとろくなことにならないよ?
「俺も行っていい?」
「だーめ! 男子禁制! 来たけりゃ去勢してよ」
「……お留守番します」
残念だなぁ、四人でお話してみたかったのに。まあ、あの三人が打ち解けるまでもう少し時間がかかるだろうし、俺はしばらく待機かな。
雲倉さんとのデートから一週間。今日は雨宮さんとお家デートだ(都合良く両親が旅行に行ってくれてよかった)。これだけ聞くと無節操なクズ男っぽいけど、違うからね? 雨宮さんから誘ってきたわけだし、何も問題はない。
そもそも雨宮さんのデートって、言ってしまえばジョークでしょ? 友達同士でダラダラ遊ぶことをデートって表現してるだけの話で、仮に俺に恋人がいたとしても、なんら問題はない。
「鳩山君、約束守ってくれたかな?」
「うん、納得はしてないけどね」
「えー? 私、そんなに変な注文したかなぁ?」
したよ? 越権行為というか、出過ぎた行為だよ?
今日のデートまで晴家さんとの性交を禁止されてたんだけど、この人恋人? 普通さ、友達相手にそんな縛り設けるかな?
雨宮さん曰く、疲労でデートが楽しめないという事態を防ぐためらしい。おそらく女子会で雲倉さんから色々聞いたんだろうね、恥ずかしい。
「男の子って我慢するの大変なんでしょ? 怒ってる……よね?」
俺の袖を摘みながら上目遣いで許しを乞う雨宮さんが、愛おしくてたまらない。元から怒ってなどいないが、仮に怒っていたとしてもあっさり許してしまうよ。
「俺は雨宮さんとお家デートできるだけで幸せだし、多少のことは帳消しだよ」
「ほ、ほんと? 何しても怒らないの?」
それは拡大解釈すぎない? 多少って言ったよね? まあでも、雨宮さんが無茶苦茶なことをするはずがないし、実質何をしてもOKかな。
「雨宮さんの思うようにしていいよ」
「へ、へー……お言葉に甘えちゃっていいのかな?」
「勿論。今日ぐらいワガママになっていいんだよ」
「えへへ、頼もしい家族だね」
笑顔が眩しすぎる。アニメだったらピカピカのエフェクト出まくってるよ。許されるのであれば、頬ずりしながら頭を撫で回したい。
「じゃあ、さっそくワガママ言ってもいい?」
「うん、なんでも言ってよ」
もうワガママ権を行使するのか、可愛いヤツめ。
「あのね、今年新しい水着買ったの。あ、前に見せたの、実は中学生の頃に買った方なんだ」
そうなんだ……たしかに言われてみれば、露出が高いとかなんとか言ってたわりには、普通の水着だったよね。勿論最高にエロ可愛かったけど。
「あー、言ってたね。でも結局使ってないんだっけ?」
男子に見せるのが嫌という、非常に可愛らしい理由でお蔵入りにしたんだよね。今時こんな可愛い子いる?
「うん、自信がなくて……」
しかもこんな理由だよ? 可愛すぎない?
「自分の魅力をわかってないなぁ」
「もー……言うと思ったよ」
「うぐっ……」
照れ隠しに肘でグリグリしてきた。一挙手一投足可愛いんだけど?
「私の体ってだらしないし……他の皆と比べられたら負けるし……」
「いや、他の皆と比べたらダントツ優勝だと思うけど?」
「うー……絶対、鳩山君だけだって」
『もうやめてくれ』と言わんばかりに、両手で顔を覆う。これもう抱きしめても許されるよね? 最高裁判所も俺に無罪判決を出すよね?
「恥ずかしがってるキミも可愛いよ」
「うー……」
「キミの可愛くない部分を挙げろと言われたら、どう答えるべきか……。んー……内臓かなぁ?」
「うう……よくわからないけど、褒め殺しを受けてることはわかるよ」
恥ずかしさが頂点を超えたのか、足取りがフラフラになっている。これは人命救助とか緊急回避という名目で、抱きかかえていいんじゃないか? 今後の関係に関わりそうだから、堪えるけどさ。
「と、とにかく! そこまで言ったからには目を逸らさないでよ? いいね?」
「え、どういうこと?」
「もー! 鳩山君にだけ水着を見せるってことだよ! 言わせないでよ!」
羞恥心で理性が壊れたのか、普段の彼女からは想像できない声量と勢いだ。
え、水着見せてくれるの? い、家の中で? プールとかならまだしも、家の中で水着ってめちゃくちゃ恥ずかしくない?
「絶対バカにしないでよ? お腹とか、お尻とか、お肉ついてるけど、絶対に笑わないでよ?」
「いや、笑わないよ。えっ、本当に水着姿を見せてくれるの?」
「本当だよ、本当。着替えるけど、逃げないでよ? 嫌かもしれないけど、ちゃんと見てね?」
嫌なわけがないし、逃げる意味がわからない。本来だったら地面に頭をこすりつけてでも見たいぐらいなんだが、なんで向こうからお願いしてきてるんだろう。もったいないから? せっかく買ったのに、一度も着ずに捨てるのがもったいないから?
うーん、それなら女子会で着れば良かったんじゃないの? 女の子同士ならさほど恥ずかしくないだろうしさ。
勿論言わないよ。下手なことを言ってチャンスを逃しても困るし、ここはひたすら首を縦に振る場面だ。
「じゃあ、そのまま座っててね?」
「う、うん。押さないで」
強引にソファに座らされた。羞恥心ってパワーにもバフがかかるんですね。
「み、見えそうだったら止めてね? 絶対……絶対だよ?」
「え? どういう……」
え、この人何してんの? 確か……ラップタオル……だっけ? 小学生が水着を着る時に体を隠すヤツ。アレを巻いてるんだけど、えっ、どういうこと? 別の部屋で着替えればいい話なのに……。
「うー……顔から湯気が出そう……」
「そりゃね!?」
顔を真っ赤にしながらゴソゴソ動く雨宮さん。音と表情だけで、想像力が掻き立てられてしまう。えっ、マジで何が起きてるの? これ夢?
「こ、これ……下はともかく上難しいね……」
うわぁ、めっちゃ着替えにくそう。
別に上って全部脱ぐ必要なくない? スクール水着とかならまだしも、ビキニタイプなんでしょ? そこに置いてるから、ネタバレ食らっちゃってるし。
「んっ……。み、見えそうだったら止めてよ? 本当に」
「ま、任せてちょうだいよ!」
下着だけ外せばいいんじゃないの? 無理にシャツ脱がなくていいのでは? でも教えてあげない。紳士といえど、この状況で水を差すことはできない。
「あっ、やっぱり下から脱いだほうがいいよねっ……」
「そっ、そうかい? そうだね……」
「うー……なんかいけないことをしてる気分……」
……えっろ! 脱いだスカートが床に落ちるシーンって、なんでこんなにもエロいんだろうか。それ以上に、パンツを脱ぐシーンって……なんでこんなにそそるんだろうか。晴家さんのおかげで見慣れてるはずなのに、ラップタオルのせいで逆にエロくなっている。バレてないと思うけど、既に半勃ちだよ。
「見えてないよね!? 見えてないよね!?」
「うん、大丈夫だよ」
そりゃまあ、局部は見えないよ。でも脱いだ下着は必然的に見えてるよ? 多分気付いてないんだろうけど……わざわざ言う必要はないよね。聞かれてもないことをペラペラと喋るのは、紳士のすることじゃないからね!
……なんか水着のお披露目より凄いこと始まってるよね。脳の処理がようやく追いついてきたけど、今とんでもないことしてるよね? 多分当事者の雨宮さんは、まだ脳がパニクってるんだろうけど。
……まずい、抜きたい……。今からでも晴家さんに処理してもらいたい……。




