第68話 搾取済み
雲倉さんと久々のデート。当然胸が躍るわけだが……足取りが重い。腰も痛いし、局部も痛い。疲労感は勿論、眠気も凄い。
「そんなにデート楽しみだったの? フラフラじゃーん」
「いてっ」
雲倉さんが、ニヤニヤ笑いながら背中を叩いてきた。どうやら、デートが楽しみすぎて寝不足になったと思い込んでいるようだ。いやぁ、ありがたい話だ。
金曜日押しかけてきた晴家さんに、一晩中搾り取られたなんて言えるわけないもんね。ああ、もう一滴も出ないよ。
「雲倉さんの可愛いコーデを見たら、元気出てきたよ」
「ふふっ、お上手だねー」
「本音だって、あはは」
大げさではあるが、決して嘘ではない。
遊び慣れていそうな見た目に反し、シックで清楚なコーデ。陰キャ時代の名残なんだろうけど、このミスマッチ感が逆にたまらないよ。
「映画でも見ようかと思ったけど、やめとく?」
「え? 別に映画でもいいけど?」
なんか見たい映画あったかな? わりとなんでも見るタイプだから、いつ映画館に行っても楽しめるんだけど。
「途中で寝ちゃうでしょ?」
「あ、あー……ちょっと寝不足だしね」
寝不足っていうか、寝てない。朝からシャワー浴びて、眠気が覚めちゃったんだよね。体は睡眠を求めているけど、眠気が麻痺してる的な? で、今ジワジワと麻痺が治ってきてる。
「大変だねー」
「いや、そこまで……」
「寝不足だし、タマ空っぽだし、辛いでしょ?」
うぇ? 今なんて言った? 空っぽ?
「晴家さんと何回ヤったの?」
「えーっと?」
なんで? なんで知ってるの? どこまで知ってるの? まさか晴家さんが?
「お仕置きしたいところだけど、EDになっても困るから我慢したげるよ」
「あだっ」
豪快に笑いながら、背中をバシバシと叩いてきた。多分、この手の平には怒りがこもっている。
「お買い物の前に体調治す?」
「え、どうやって?」
仮眠タイムかな? 俺の家近いけど、絶対臭いが凄いから行きたくない。だとすると図書館かな? この時間開いてるかな?
いやそれより、結局なんで知ってるの? 晴家さんが自慢したの? 煽りメッセージでも送ったの?
「タマをマッサージすれば治るんでしょ? 公園行こっか」
「雲倉さん!?」
何を言ってるんだい? まともじゃないよ? 公園でそういうことするの、よくないと思うよ? 倫理観どうなってるの?
「ってか女の子なんだから、下品な言葉使っちゃダメだよ。ね?」
「浮気者に説教する権利ないぞー? うりうり」
「だ、ダメだって、こんなところで……」
人通りが少ないとはいえ、屋外で股間を弄らないでほしい。っていうか浮気なんかしてないし。まだ雲倉さんと交際してないから、完全に言いがかりだよ。
「痛くしないから安心しなよ」
別にそんな心配はしてないよ、場所をわきまえろってだけの話でさ。
「とりあえず落ち着こ? ジュース奢るから、ちょっと休憩しない?」
「休憩? エッチだなー」
だから局部を弄るのをやめなさいって。エッチなのはキミだよ、いつの間にこんな痴女になったのさ。
「普通さー? ヤるとしたら、今日のデート後に私とヤるよねー? なんで晴家さん相手にタマ空っぽにしてんの?」
「ちょっ……タプタプするのやめて……」
「質問に答えなよー」
あれ、もしかしてこれ尋問? ちゃんと答えないと痛めに遭うパターン? 俺別に悪いことしてないのに。
「結構溜まってたというか、その……」
「溜まる度に晴家さんとヤるの?」
「そりゃ相手がいるんだから、わざわざ一人で処理しなくない?」
余裕があれば、平日も気軽にヤりたいと思う。そんなことより、こういう話は後日どっちかの家でやろうよ。今日の雲倉さんおかしいよ?
「私のことが好きなんじゃなかったのかなー?」
「……? 好きだけど?」
嫌いなんて一言も言ってなくない? 被害妄想激しくない?
「っていうかさー、なんで晴家さんのほう行ったの?」
「え?」
「去年の話だけど、最初私と仲良かったじゃん?」
「ああ、うん。その後もずっと仲良かったと思うけど」
仲良くなった順番で言えば、雲倉さん、晴家さんの順番だけど、それがどうかしたのかな? そういやこの二人、去年はほぼ喋ってないよね。友達の友達って距離詰めにくいのかな? 同じクラスならよくない?
「私のほうが先に仲良くなったのにねぇ。気付いた時には、晴家さんとエッチしてたもんねぇ」
「まあ、雰囲気的にね? 流されたっていうか……」
同年代なんだけど、大人の魅力があったというか、ヤるしかない流れだったというか……。まあ、なんにせよ俺は悪くないよ。勿論晴家さんも悪くない。
「納得できないなー、色々とさー」
「とりあえず公園行かない? こんな住宅街のど真ん中でイチャコラしてたら、近所迷惑っていうか」
「うるさいなー。これだけ触ってるのに全然おっきくならないし、キレそう」
キレる要素ある? どっちかと言えば、キレるのは俺じゃない?
「雲倉さん、こういうことは二人っきりの空間でやろうよ」
「むっ……! ついにお誘い? 緊張するなー」
いや、別に誘ったつもりは……まあいいや。正式に交際するまで性交は控えようと思ってたけど、雲倉さんがどうしてもっていうならいいか。
「とりあえず今度ね? もう出るものないし」
「んー、タマの弾が充填されるには時間がかかるだろうし、日を改めるのはいいんだけどさー」
「けど? っていうかいい加減、揉むのやめよ? 天下の往来だよ?」
この人、経験者? 妙に揉むのが上手いというか、力加減が絶妙なんだけど。
「なんていうかさー? 『仕方ないからヤってやる』って雰囲気があるというか、心の底から私を求めてないっていうかー」
えっ、めんどっ……。
ヤれたらそれでよくない? 今の心境がどうであれ、どうせヤってるうちに愛が育まれていくんだし。
「晴家さんめぇ……。これを狙って搾り取ったのかぁ? くそぉー……早くぅ……早く充填されろー」
「んっ……。くすぐったいって……」
「うるさいなぁ、痛くないならいいじゃんよぉ」
久々のデートだってのに、なんなんですかね。純粋に遊びたかったのに、すぐエロ方面に走るんだから。思春期ってイヤねぇ……。
で、結局なんで知ってんの? 後で晴家さんに確認してみるかぁ。




