第59話 復活のK
偏見かもしれないけど、女子ってこういう時だけやたらと行動力あるよなぁ。昨日の今日で女子会決行するって言うんだから、暇そうで羨ましい限りだよ。一人でできることならまだしも、三人が急に集まるって中々だよ? しかもあの三人って特に面識ないだろうし。
晴家さんからは『キミのせいで先程から胃が痛い』だの『ゲーム感覚で命を粗末に扱うんじゃない』だの、よくわからないメッセージを賜った。
雨宮さんを見習ってくれよ。彼女は『楽しみだよ』という旨のメッセージをくれたというのに、晴家さんがくれたのは怪文書だもの。
まあ、わかるよ? 晴家さんって普段は一匹狼っていうか、飄々としてるけど、基本的に陰キャなわけじゃん? 初めて雨宮さんと遊んだ時も結構ストレス溜まってただろうし、女子会なんてハードル高いわな。まさか胃を痛めるレベルとは、思ってもいなかったけど。
そういや会場はどこなんだろ。一昔前はラブホで女子会をするのが流行ってたらしいけど、実際どうなんだろうね。まあ、あの子ら未成年だから関係ないか。
お? 晴家さんから画像つきのメッセージが……。
『糖分過多』
短文すぎてもはや怪文書だが、画像とセットなおかげで簡単に理解することができた。なるほど……これはキツいわ。
『カフェで女子会してるんだね』
俺も向こうに合わせて短文を返し、スマホをベッドに投げ捨てた。すぐに返信がくるかもしれないけど、しばらく無視だ無視。女子会の空気が晴家さんに合わないのはわかるけど、逃げてばっかじゃ成長しないからね。心を鬼にしよう。
それにしても女子会って平和なんだなぁ。食べ切れるのかどうかわからない量、むしろ食べきっちゃいけない量のスイーツの写真が送られてきたよ。そこに写っていた晴家さんは、なんやかんや笑顔だったし、楽しんでるようで何よりだ。
誰だよ、女子会は女死会とか言ったヤツは。普通に平和じゃん。誰が死ぬんだよ。
再びスマホから通知音が聞こえてきたけど、しばらく放置しとこう。さてと、適当に読書なりゲームなりして、休日を満喫するかぁ。
ふー、気付いたら寝てたらしい。なんか晴家さんからちょくちょくメッセージ着てたみたいだけど、ほとんど取り消されてるな。
残ってたメッセージといえば『こういう休日も悪くないね』とか『しばらくお菓子は禁止だね』みたいな当たり障りのないメッセージぐらいだ。ここまで中身のない物ばかりだと、取り消されたメッセージが気になってくるね。
とりあえず『寝てた。楽しそうで何よりだよ』と返しておいた。そういや女子会って何時間ぐらいやってたんだろ? 写真を見た感じ、普通の喫茶店に見えたけど、そんなに長居できないよね? まあ、どうでもいいんだけど。
俺としては、昼寝のせいで今晩眠れないかもしれないってことのほうが、よほど重要だよ。あーあ、寝不足で登校したくないんだけどなぁ。
あー、眠い。定期的に欠伸しながら登校なんてみっともないけど、どうせ俺の顔なんざ誰も見てないから、気にするまでもないか。人から無視されるのは辛いことだけど、考えようによってはありがたいのかもね。ほら、みすぼらしい貧乏人ならその辺に遠慮なく腰を下ろせる的な。
「めっちゃ可愛くね?」
「懐かしいなー」
ん? なんか雲倉さんのクラスが騒がしいな。別のクラスのヤツらが、教室を覗いてるぞ。転校生でもきたのか? いや、転校生だったら普通は朝礼の時に紹介するだろうし、今いるはずがないか。
まっ、どうでも……ん?
「雲倉さん……?」
思わず声が漏れ出た。それに伴い、近くにいた生徒で飛び退くように距離を空けてきたが、もはや気にならない。
気付いた時には教室に足を踏み入れていた。痴漢扱いが怖いので、人だかりに触れない程度の距離で中心を眺める。
「あっ」
人だかりの大半は主に俺より背の低い女子なので、中心人物は大して時間もかけず俺に気付いた。
俺と中心人物の接触をよく思わない女子達が嫌そうな顔をするが、ガン無視で距離を詰めてきた。
「おはよー! 昨日は楽しかったよ」
「そりゃよかった。俺がいなくて正解だったでしょ?」
女子会に男がいたら興ざめっていうか、変に遠慮しちゃうもんな。いや、んなことよりさ……。
「雰囲気変わった……というか、戻ったね?」
「ちょっとー! 前より可愛くなったって言うところでしょー?」
腰に手を当て、ムッとした表情を近づけてきた。髪型だけじゃなくて、中身も昔の雲倉さんに戻ったなー。マジで何があったの?
「美容院なんて当日に予約取れるもんなの?」
「え? 普通の床屋だよ? 高校生が美容院とか贅沢すぎるし」
うわぁ、これが元が良い人間の余裕ってヤツか。
「えー、マジ? その辺の散髪屋でそんなサラサラなんの?」
「あんなにボサボサだったのに、よく戻れたねー」
「どんな裏技使ったん? 教えて」
俺の存在など眼中にないのか、女子達が間に割って入る。名前も知らない女子にケツで突き飛ばされたが、これは怒っていいところだろうか?
「安物のシャンプーを使うのやめたってだけだよ」
「高級なの使ってんの? どこの? ってかわざわざ安もん使ってたん?」
「そんなすぐ変わるもん? マジで何したん?」
「普通のケアだってー」
陰キャ期間が長かったとは思えないほど、まともに受け答えができている。大変喜ばしいことだけど……なんか疎外感というか、物寂しさ? 俺だけ取り残されてるというか……。
あー、後は晴家さんだけか。晴家さんだけだよ、この孤独感を共有できるのは。
とりあえず自分の教室に向かうか。当分は女子達が邪魔で、学校ではまともに会話できなさそうだし。
………………この勢いで彼氏とか作らないよな? 俺、捨てられるとかないよね?




