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自己肯定感の低い女子を褒め続けたら人気者になったので距離を置くことにした  作者: シゲ ノゴローZZ
鳩山視点

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第57話 社会通念

 どうでもいいことだけど、俺の部屋に上がるのって女の子ばっかりだな。小学生の頃は男子もちょくちょく来てたけど、中学からは女子しか来てない気がする。少なくとも高校に上がってからは間違いない。


「しばらく見ないうちに……だいぶ変わったね」


 久々に俺の部屋に上がった雲倉さんが、キョロキョロと部屋の中を見回す。少し恥ずかしいが、今まで放置していた罪悪感もあるので咎めたりはしない。


「そうかな? 多少、物が増えたり減ったりはあるけど、基本的に変わってないよ」

「ふふっ……そんな自然な変化はどうでもいいよ……ふひっ」


 自然じゃない変化とは……? 家具とか壁の経年劣化? どっちかといえば、物が増えるよりもよっぽど自然な変化では?

 というかその笑い方、いい加減どうにかならないのかな? これはこれで可愛いんだけど、俺以外は気持ち悪がってしまうんじゃないかな。というか俺も、元から好きだから受け入れられてるだけで、初対面がこれだったら距離置いてたかも。そりゃまあ、他のアホ共みたいにイジメたりは絶対にしないけども。


「不自然な変化があるのかい? 一般的な学生と同じような使い方をしてるつもりだけど、キミの部屋と何が違うんだい?」

「一般的な学生……。ふふっ……随分と言い逃れが上手くなったよね」


 ……? この人、晴家さん? 何を言ってるかわからないんだけど。


「確かに一般的な学生……一般的な男女なら……こういうこともあるね」


 クッションやベッドの臭いを嗅ぎながら、なんともいえない表情を向けてきた。その複雑な表情は、どっちかといえば俺のものじゃないかな。なんでキミがその表情をしてるのさ。


「晴家さんや雨宮さんの臭いがする……。よくこれで私を呼べたもんだよ……」


 一応確認するけど、この人は人間でいいんだよね? 実は狐や狸が化けてましたってオチじゃないよね?

 いやいや、落ち着け俺。俺と彼女達の仲が良いことなんて先刻承知だろうし、カマをかけにきてるんだろう。

 友達の家のベッドに寝転ぶなんて、別に珍しいことじゃない。そりゃ潔癖な人なら話は別だけども、俺がそういう人間じゃないことはご存知のはずだし。


「あれ……? このクマちゃん……」


 俺が気の迷いで買った百センチ超えの巨大ぬいぐるみの臭いを、訝しげな表情で嗅ぐ雲倉さん。洗濯していいものかどうかわからないので放置しているが、やはり臭うのだろうか? 臭いものを嗅ぎたくなる気持ちはわからんでもないけど、決して良いことはないからやめたほうが……。


「晴家さんの頭皮の臭いがするね……」

「うぇ?」


 な、何言ってんだこの人? いくら想い人とはいえ、さすがにこればっかりは気持ち悪いんだけど。


「枕にしてたのかな? それとも……」

「それとも?」


 枕以外の何があるんだろう。


「クッションにしたのかな? セックスするときに」

「え?」


 ……………………あっ、言われてみりゃ、そのぬいぐるみ使った気がするわ。


「なんでそこまで……」

「異様に汗の臭いがするからね。汗だく且つ裸の状態でクッションにしたんじゃないかと思ったんだよ。ひひっ……」


 本当にどういう嗅覚してるんだ? 百歩譲って頭皮とか汗の臭いはわかるとして、なんで晴家さんってわかるんだ? 雨宮さんかもしれないし、他の女の子かもしれないじゃん。これもカマかけか? 考えてみりゃ、晴家さんが一番可能性高いし。


「は、ははっ……大した嗅覚だね」

「……否定しないんだねー」


 ……あれっ……もしかしてなんだけどさ……。

 晴家さんとヤってること、雲倉さんに知られちゃまずかった?

 いやいやいや、ちょっと待ってくれ。少しばかり、ほんのちょっとばかり、俺視点というか自分本位で物を考えすぎてたかもしれん。

 雲倉さんが他の男とヤってたらどう思う? 男友達だから仕方ないって割り切れるだろうか? いや……嫉妬で燃え上がるか、逆に冷めきるかのどっちかだよな。実質恋人だと思いながら、他の異性に体を許すって……現代の社会通念から逸脱して……いや、もはや脱輪? え、これ……この状況……。

 ……もう殺されるしかなくなっちゃったよ。


「あ、あのっ! 質問よろしいですかっ!」


 もうここまできたら、勢いでなんとかするしかない。下手《したて》に出なきゃいけない立場なのは重々承知してるけど、ノリで負けたら押し込まれる気がしたんだよ。


「認めます」


 おっ? 意外とノリがいいぞ? おふざけモードに入ってくれたか? 俺の大げさな物言いが上手く作用したか?


「えっと、勘違いだったら申し訳ないんだけど……」

「うん」

「その……ええっと……学生にありがちなことなんだけど……」

「うん」


 その短い相槌やめてくれない? 弱気になっちゃうからさ。

 まあ待て、文句を言っちゃいかん。全面的に俺が悪いし、なんだったら雲倉さんがこんなふうになったことに関しても、僅かながら関わってるかもしれないし。

 よし、当初の予定通り、勢いだけで持っていくぞ。


「キミは薄々気付いてるだろうけど……」

「うん」


 だから相槌やめてよ。最後まで聞いてくださいよ。


「俺はキミのことが前々から好きでさ……」

「………………」


 なんで無言? ここは相槌を打つとこじゃないかな?


「………………」


 頑なに相槌打たないんだけど、この人。

 どうしよう、相槌を待ったせいで俺も続きを話すタイミングを失ったんだけど。

 ん? なんだい、その手は? エッチなジェスチャーかい? 顔というか、耳が若干赤くなってない?


「すぐ……戻る……」

「え? うん、ごゆっくり……?」


 え、どこ行くの? トイレかな?

 あっ、さっきのジェスチャーは〝タイム〟か。確かにTっぽい形だったけど、口で言えばいいじゃないですか。

 ふー……急に離席されたせいで勢い失っちゃったな。ただ、向こうの勢いというか威圧感も消えつつあるし、このまま流れてくれないかな。俺を許せとまでは言わないけど、晴家さんとヤってたことに関してはもうお互いに触れない感じで……。

 っていうか、今後どうすればいいんだ? もうさすがに晴家さんと体の関係を持つわけにはいかないだろうけど、それをどう伝えればいい?

 ああ、晴家さん怒るかなぁ……。怒るだけならいいけど、悲しむかもしれん。もしかしたら疎遠になるかも……。


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