↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自己肯定感の低い女子を褒め続けたら人気者になったので距離を置くことにした  作者: シゲ ノゴローZZ
鳩山視点

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/108

第38話 ストレート宣言

 晴家さんに三時間ほど連れ回されて足がクタクタだが、ようやく帰路に着くことができた。買い込んだのは、お菓子、小説、ゲームといった引きこもりセットだ。

 なるほど……夏休みの布石ってそういうことね。夏休みの間、家デートし続けるってことね。健全だけど不健全だね。

 『一緒に楽しむための神器を買い揃える』って言ってたから、正直怖かった。大人のオモチャでも買い込むのかと、内心ビクビクしてたよ。


「それにしてもお金大丈夫なの? っていうか本重くない? 何冊買ったの?」

「お金に関しては大丈夫さ。重さに関しては、『そろそろ澄まし顔が崩壊する』とだけ言っておこう」


 限界なら早く言ってよ。顔にも声色にも出さないから、平気だと思い込んでたよ。


「こっちの買い物袋と交換しようよ。本よりは軽いと思うし」

「気持ちだけありがたく受け取っておこう。肉親相手でもスマホや財布を預けたりしないだろう? 私にとっての本は、そういうものさ」


 うーむ、わかるようなわからないような……。要するに大切なものだから、自分で運びたいってことね。


「これだけ大量に買うなら、車のほうが良かったんじゃない? ウチの母さんに頼めば出してくれたよ? 何故か知らないけど、キミのこと大好きだから」

「そこまで迷惑はかけられないさ。ただでさえ夏休み中、ご厄介になるんだから」


 ……ご厄介? 遊びに来るだけだよね? なんか、長期間にわたって連泊するかのような言い回しだけどさ。


「善吉君は洗濯物を一緒に回されても平気なタイプかい? 首を縦に振ってくれるとありがたいのだが」

「男子で嫌がる人あんまりいないと思うよ」


 洗濯までするの? 本格的に泊まる気満々じゃないか。一泊二泊なら別にいいんだけど、洗濯するって相当長く……。


「それはよかった……。話は変わるが、余裕があるなら私の汗、額の汗を拭いてくれないか? 尻のポケットにハンカチが入ってる」


 ハンカチとか律儀に持ち歩いてるんだ。服装はともかく、そういうところは女の子してるなぁ。


「いや、俺も両手が塞がってるし……」


 っていうかこんなに買い込む必要あった? 本とゲームもそうだけど、一・五リットルのジュース買い込み過ぎじゃない? 糖尿病RTAでも開く気?


「短時間であれば片手で全部持てるだろう? 私は無理だ」

「そこに腰を下ろしたらいいじゃないか。綺麗とは言い難いけど、それって別に汚れてもいい服でしょ?」


 スウェット……っていうのかな? 薄っぺらいジャージみたいな感じの……しゃがんだだけで破けそうな薄いズボンのことね。


「大量の本を持ったまま変な動きをしたくない。一秒でも早く家に運ばねば……」


 本と言っても、ただのラノベだろ? 数千円もするような本ならまだしも、ラノベなんかそこまで丁重に扱うようなものじゃないのでは?


「早く拭いてくれないか? 可能性は低いが、もしも紙袋の中に汗が落ちた場合……キミに八つ当たりするかもしれない」


 そんな不条理な話があるか? そこまで大事な物なら、小分けにして買えばいいと思うんだが……。


「早くしてくれたまえ。右の尻ポケットに入ってる」

「ああ……見えてるよ」

「ならば早くしてくれ。雨宮さんと違って小尻だから、問題なく取れるはずだ」


 別に雨宮さんも大きくはないと思うよ、キミが細すぎるだけであって。


「まさかとは思うけど、屋外で尻を触らせたいだけじゃ……」

「それもあるが、本当に汗が辛いんだ。巻きで頼む」


 あるんだ……まあ、あるだろうなぁ。


「そりゃまあ、別にいいけども……」


 こっちだって重い荷物持ってるのに、迷惑だなぁ。いっそのこと、休憩がてら座ったらいいのに。


「んっ……」


 ほら、すぐ変な声出すもん。キミ、妙に敏感なんだからさぁ……。


「はい、じっとしてねぇ」

「助かる」


 俺だって汗だくなのに、なんでこんなことを……。手術の時ぐらいだよ、人の汗を拭くのなんて。


「もういいかな?」

「できれば胸の谷間もお願いしたいところだが、あいにく私は痴女じゃないのでね」


 ……谷間? その辺の中年男性より小さい胸で……。


「失礼なことを考えたね? 残念だ、今のでゴムの消費ペースが早くなったよ」 


 鋭いなぁ、相変わらず。そしてその脅し文句、かなり新しいな。流行りはしないだろうけど、流行るポテンシャルはあるよ。有名な配信者や漫画家が使えば、ミームになる可能性がなきにしもあらず。


「いいから早く帰ろうよ。ハンカチは後で返すよ」


 少々不衛生だが、買い物袋にハンカチを放り込み、買い物袋を持ち直す。ああ、重たかったぁ。一時的とはいえ、この量を片手で持つのは辛すぎる。


「キミも汗を拭いたらどうだ? でこに汗疹ができても知らないよ?」

「さすがに人が使ったハンカチは……。いや、決して晴家さんが汚いって意味じゃなくてだね?」

「いい、別に気にしてないよ。逆の立場なら遠慮なく使っていたがね」


 そりゃキミは気にしないだろうよ。人が脱ぎ捨てた靴下を平気で触ることができるタイプなんだもの。俺はちょっと……。


「そうだ、善吉君。キミから猜疑心《さいぎしん》を向けられるのも面白くないから、一つだけ断っておくよ」

「なんでしょうかね……」

「私はなんの画策もないよ。純粋に汗が辛かっただけだ」


 ……? はぁ……そうですか……?


「策を弄するというのも悪くはないが、その手の余興は戦略シミュレーションゲームで充分さ」

「うん……? そうだね……?」

「まあ、信頼もあるね。わざわざ搦め手を使うまでもないと踏んでいるのだよ」


 さっきからなんの話をしているのだろう。たかが汗を拭くという行為のどこに、奸計が挟まる余地があるというのか。

 晴家さんの言動が不可思議なのは今に始まったことじゃないし、深く考えないようにしよう。ただでさえ体力の消費が激しいんだから、せめて脳みそは休ませないと。


「私に対しては裏を読むなんて行為は必要ないんだ。絶対に私を疑わないでくれ」

「うん、まあ、別に疑ってなんかいないけど……」

「それならいいんだ。くどいようだが、私はストレートで攻めるタイプだからな」


 ……暑さと疲労で脳みそやられたのかな? それともなんかのアニメの影響?

 彼女の口ぶりだと身近に謀略家がいるように聞こえるんだが、そんな黒幕みたいな人はいないでしょ。っていうかそもそも身近に人がいないだろう、俺らは。

 『絶対に疑うな』か……。何気ない言葉だが、妙に引っかかるのは何故?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。