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自己肯定感の低い女子を褒め続けたら人気者になったので距離を置くことにした  作者: シゲ ノゴローZZ
鳩山視点

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第25話 雪解け

 おかしい、何かがおかしいぞ。もしかしたら知らず知らずのうちに異世界、いや、平行世界に紛れ込んでしまったのかもしれない。


「おはよう! 明日からいよいよテストだな! 頑張ろう!」

「ん? ああ……そうだな」


 だってクラスメイトほぼ全員冷たいんだぜ? 今まで誰とでも仲良く会話できていたのに、知らぬ間に距離を置かれてるんだぜ? 世界が改変されたのか、はたまた俺が嫌われている世界線に紛れ込んだのか、それとも悪い夢を見ているのか。


「勉強の調子はどうだい? 俺でよければ教えるけど」

「………………いや、別にいいわ。んじゃ」


 あまりにも冷たすぎるぞ。もうすぐ夏休みだというのに、俺の周りだけ白銀の世界だぞ。鍋……今夜は鍋にしようかな……俺に献立決める権利はないけど……。

 はぁ……俺って案外嫌われてたのかな? っていうか俺って……救いのないゴミなんじゃないか……? ろくでもない人間な気がしてきた……。


「あ、あ、雨宮さん、おはよう。調子はどうだい?」


 先日のことを思い出して、ついつい萎縮してしまった。我ながら情けない限りだ。


「おはよう! 鳩山君こそ、体調大丈夫? 顔色悪いよ?」


 て、天使か……? 否、太陽だ。雪が……俺を凍死させようと襲いかかってきた雪が瞬く間に溶けていく……。


「熱は……ないみたいだね」


 自分の額と俺の額の温度を比べ、笑顔を浮かべる。お、俺なんかの身を案じてくれてるのか? なんで俺なんかに優しく……。


「あ、ありがとう。俺は大丈夫だよ……」

「そう? 本当に?」


 俺の空元気を見破ったらしく、顔を覗き込んできた。そこまで身長差がないので、必然的にお互いの顔がかなりの近距離まで近づいた。


「あっ、赤くなったよ? 大丈夫? 保健室行く?」

「あ、あはは……。雨宮さんが……」

「……私が?」

「いや、なんでもないよ、あはははは」


 おかしいな、俺が俺じゃないみたいだ。今までの俺なら『雨宮さんが可愛いから照れちゃっただけさ』とか、その類の言葉を返していたはずだ。でも口に出すことができなかった。

 何故かって? だって……俺なんかにそんな言葉をかけられたくないだろ? 今の雨宮さんは、俺なんかじゃ釣り合わないぐらいイイ女なんだから。


「ふふふ、変な鳩山君。あっ、いつもか」

「そ、そうだよ。俺は変人さ」


 何を言ってるんだ俺は? 今の返し、変じゃないか?

 うー……なんか妙に緊張するぞ。周りの視線がヤケに気になるんだけど、どういうことだ? 今までこんなことなかったぞ? 視線恐怖症? とかいうヤツか? どこの病院にかかればいいんだ? 内科? 外科? 肛門科? 皮膚科? いや、歯医者が正解か? いや、何を言ってるんだ俺は、本格的におかしくなったのか?


「やっぱり保健室行く? 連れて行ってあげるよ?」


 本気で俺の身を案じているらしく、俺の手を両手で包みこんでくれた。温かい……女性ゆえに体温は低いが、それにも関わらず温かい……。心? 心がポカポカするというヤツなのか? これが……。


「えっと……えっと……」

「んー? それともー」


 しどろもどろになる俺を見て、急に意地悪な笑みを浮かべる。絶対初めて見る表情だが、なんというか妖艶だ。


「人気がないところがいいかな?」


 仕草の意図はわからないが、人差し指で口の前に立てながら言ってきた。これは一体どういう……もしかして……いや……雨宮さんがそんな……。


「うう……ま、間に合ってるよ!」

「あっ……」


 胸のときめきと、いたたまれなさに思わず逃走してしまったよ。でもホームルーム直前だったので速攻で連れ戻され、かなり恥ずかしかった。穴があったら入りたいとはこのことか。




 いやー、気分がいいなぁ。恥ずかしいこともあったけど、心が救われたというか洗われた気分だ。ゴミになったような気分だったけど、今の俺は主人公だ。俺がいてこその世界だ、ここは。そう思えるほど気分が……いてっ!


「あっ、ごめ……なんだ、お前か」

「むっ?」


 ぶつかってきた男子生徒が意味不明な言葉を残して、足早に去っていった。かなり気分が悪いんだが、それ以上に気味が悪い。

 何故かって? 明らかにワザとぶつかってきたからだよ。俺になんの恨みがあるというのだ? 俺はあんな男知らないんだが?


「なぁ、俺の肩になんかついてないか見てくれ」

「あん? 何?」

「いやー、例のヤツにぶつかっちまってよぉ、何か変なのついてないか見てくれよ」

「おいおい、そんな体でこっち来んなよ。エンガチョ、エンガチョ」

「ハハハ、それ相当に古いぞ」


 ……ぶつかってきた男がわざわざ俺に聞こえる声量で何やら言ってるが、無視するに限るな。あんな小学生みたいなことして、恥ずかしくないのかね? 本人からしてみれば、してやったりと言ったところだろうが、ハタから見れば滑稽だぞ? 高校生にもなって恥ずかしいねぇ。

 ……いや、ちょっと待てよ。例のヤツって何さ?


「うわっ、廊下に突っ立ってるよ」

「やめときなって、聞こえたら襲われるわよ」

「えー? マジー?」

「アイツ、ブスでもいけるらしいから」

「誰がブスだっての!」


 ……なんで廊下を歩くだけで侮辱されるんだ? 頼まれたって、お前らなんか襲わないよ。大体、ブスでもいけるってのは、どこ情報だよ。

 もしかして晴家はるいえさんとヤったことを指してるのか? いや、それはありえないはずだ。俺と彼女の関係は誰も知らないし、そもそも彼女は美形だ。少なくとも今の二匹よりはよっぽど……。

 いや、いかんいかん! 腹立たしいことがあったとはいえ、人を匹に換算するなんて最低だ。どんなに辛いことがあっても、そこまで落ちぶれちゃいけない。

 ……テスト期間だけど、晴家さんに声かけてみようかな。記憶が確かなら、今年は四組だったよな。

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