第137話 母公認
「あのっ、お義母さん……」
「んー?」
「……いつも息子さんにお世話になってます」
私ったらなんてコミュ障なんだろう。住所を告げた次の会話がこれだもん。どうしよう、変な子だって思われたら……。
「いえいえ、こちらこそありがとうね。善吉と仲良くしてくれて」
「そんな、とんでもないです……。いつも私ばかり気持ち良くしてもらって……」
「……気持ち良く?」
またやっちゃったよ! せっかくお義母様が大人の対応してくれたのに、痴女みたいな発言しちゃったよ! それどころかお義母様の前で、鳩山君を性犯罪者みたいな扱いしちゃったよ!
「いや、えっと、そういう意味じゃなくてですね……。鳩山君はいつも私を褒めてくれてですね……」
「ふむふむ」
「私……男の子から毎日〝可愛い〟って言われる日が来るなんて思ってもいなかったですよ」
「へー? 善吉から毎日そんなこと言われてるんだ」
「はっ、はい……。私なんかに好意を抱いてくれるなんて……」
「ふーん? へー? 好意を抱かれてるんだ」
うー……私、どう見てもヤバい女じゃない? 彼氏の親の前でいきなりこんなこと言い出すなんて、危険人物じゃん。どうしよう、気持ち悪がられてるよね? 接触禁止命令みたいなの出されたらどうしよう。
「……この髪も彼の影響というか、彼の要望通りでして……」
「へー? あの子がそんなことを……」
「私なんかがこんなオシャレするなんて、分不相応というかアレなんですけど……鳩山君が喜んでくれるから自信が出てきたと言うか……」
「うん、うん」
……うー、胃が痛い。籠絡しようと息巻いてたのに、いざその時が来たらこれだもんね。やっぱり私なんて……。
「貴女は善吉のことどう思ってるの?」
「えっ……それは勿論……………………」
「勿論?」
「…………大事なパートナーだと思ってます」
言っちゃった! ついに言っちゃった! 我ながら気持ち悪い!
「へー? パートナーってのは……人生の?」
「はっ、はい! 初めは彼の熱意に圧倒されてましたけど……是非とも気持ちに応えたいと思ってます」
「熱意ねぇ……。あの子もそういう年頃かぁ」
うー……まずいかな? 息子を取られそうになって焦ってるかな? もしかして姑ムーブされちゃう流れ?
「ただの友達で終わる気はないってことね?」
「それは勿論……。というか既に恋人のようなものでして……」
「なるほどねぇ」
「……やはり私ではダメでしょうか?」
「え? いやいや、そんなことないわよ。貴女はしっかりしてそうだしね」
「あ、ありがとうございます……」
み、認められた? 認められちゃった?
「それにしてもあの子は女の子を見る目があるわね」
「え……?」
私、そんなにイイ女に見えてるの? 高校生の分際でメッシュとかネイルに手を出す女だよ? いや、今の時代普通のことだろうけど、やっぱりこういうのに手を出す子は基本的にバカだよ?
「ハルちゃんも良い子だったわ」
「ハルちゃん……って、えっと、晴家さん……でしたっけ?」
「そーそー。てっきりあの子と付き合ってるものだと思ってたわ」
……あの女、まさかとは思ってたけど、私よりも先にお義母様に媚を売ってたみたいだね。去年鳩山君に色目を使ってたって情報はリサーチ済みだけど、外堀を埋めようとしてたことまでは知らなかったよ。ちょっと怖いけど、明日にでもコンタクトを取ってみようかな?
「あはは……鳩山君は私に夢中ですよ」
「あらあら……。たしかにハルちゃんは、一方的な感じがしたわね」
よしっ! 外堀全然埋まってなかった!
「我が息子ながら罪な男ねぇ」
「あはは……」
「悪い子じゃないのよ? 女の子の友達を作るのが上手いだけで」
「………………友達が多いのは、良いことだと思いますよ」
やっぱりお義母様から見てもそうなんだ。浮気なんてしないだろうけど、女友達はもう二度と作らないでほしいなぁ。ほらっ、鳩山君が浮気する気なんてなくても、女達が強引に迫ってくることもあるじゃない?
「私としてはハルちゃんも貴女も、どっちも応援してあげたいわ」
「えっ……」
「あの子は男の子なんだから、惚れさせた責任は取らないとねぇ」
……何を言ってるんだろう、お義母様ったら。彼は私一筋なんだけど? 晴家さんとやらが一方的に好意寄せてるだけなんだから、無視でいいじゃん。惚れた方の負けでしょ?
「まっ、私は一切邪魔しないから、好きなようにしてちょうだいな」
「……はい、お言葉に甘えて」
何をしても黙認するという言質をいただきました。これは嫁姑問題を起こさないということでよろしいですね? 学生結婚とか学生出産に文句言わないってことでよろしいですね? 本当に好きならどんな手を使ってでも、落としてみせろということですね? いや、落とすも何も既に恋人なんだけど、晴家さんとかいう女狐から完全に奪って初めて勝利だもんね。勝ちます、絶対に。




