第135話 運命の日(なんでもない日)
「じゃあ先生、後はお願いしますね」
「任せてちょうだい。わざわざありがとうね」
……そりゃそうだよね。保健室が開いてるってことは、先生もいるよね。当たり前のことなのに、浮かれてて気付かなかったや。ほら、鳩山君も明らかにテンション下がってるよ。
もういっそのこと放課後まで寝てやろうかと思ったけど、罪悪感が凄い(何より鳩山君に会いたい)ので小一時間程で教室に戻った。肩透かしを受けてガッカリしてるけど、お姫様抱っこという神イベントだけを噛み締めて生きていこう。
「鳩山君、私も気付かなかったから偉そうなことは言えないんだけど……そりゃ保険医がいるよね」
やっぱりエッチなことはお家でするべきなんだよ。学校は学校で背徳感があっていいけど、保健室で二人っきりとかそういうシチュエーション現実にはないから。いやまあ、あるにあるだろうけども、エッチなことをできるほどの長時間は中々取れないと思うよ。鍵をかけるわけにもいかないし。
「でも鳩山君の気持ちは受け取ったよ。……凄く……嬉しかった……」
高校生活はまだ半分ぐらい残ってるし、大学も事故らなければ四年ある。私みたいな陰キャはともかく、まともな大学生なら同性の友達は勿論、数多くの異性とあんなことやこんなことがあるはず(鳩山君ならなおさらだろうね)。フリーの方が良い思いができるだろうに、全ての未来を投げ捨てて私だけを愛するなんて……貴方は本物の男だよ。私とヤっちゃえば、女の子と海に行ったり、合コンに参加することはできなくなる。よほどの覚悟がないとできないことだよ(鳩山君はしっかりと責任を取るタイプだろうしね)。
「別にこれぐらい何度だってするさ」
「な、何度もする……?」
ま、まだ諦めてないの? 学校でヤることを諦めてないの?
「キミが嫌じゃなけりゃ、また抱くよ」
「い、嫌じゃないよっ! 勿論っ!」
お、お姫様抱っこの話だよね? びっくりしたぁ……このタイミングで抱くって言われたら誤解しちゃうじゃん。そ、そりゃまあ……あっちの意味でも抱く気満々なんだろうけどさ。
「それより顔が赤いけど大丈夫なのかい?」
「えっと……その……」
貴方のせいだよ? 分かっててやってるよね?
「やっぱり保健室のベッドより、雨宮さんのベッドのほうがいいかもね」
「……は、鳩山君……そこまで私のことを……?」
何がなんでもヤる気だよ、鳩山君ってば。これって今日ヤるって意味だよね? 肩透かしでテンション下がったけど、ヤるという決意は鈍ってないんだね。今更仕切り直せないところまで来てるんだね? 本気だ……私に対して本気で向き合ってくれてるよ。
「勿論だよ。その顔を見たら……そりゃね」
「わ、私の顔を見て……? そ、そんなに?」
私のことどれだけ好きなの、貴方は。可愛さのあまり性欲を抑えきれないってことだよね? 好きという気持ちが溢れ出て、抑えが利かないってことだよね?
「うん。可能であれば今すぐにでもベッドに連れ込みたいね」
「あわわわ……」
鳩山君がおかしくなっちゃった! 理性が完全に壊れてる! 普段はまったく手を出してこないのに、一秒でも早くヤりたいって状態になってる!
「雨宮さん、今日ってご両親いるのかい?」
「……!? そ、それって……」
「うん、そうだよ」
はい、今日ヤること確定です。家に上がる気満々です。
「い、いないよ! 夜までいないよ!」
初めては私の部屋かぁ。絶対お母さんにバレるよね? 血とか臭いでさ。お父さんにバレなきゃ大丈夫なんだろうけど、今はそんなことどうでもいい。
……私、全く分からないんだよね。裸で抱き合ったりとかキスしたりとか、そういうことをするってことぐらいしか分からない。あっ、いや、勿論アレをココに挿れるのは分かるよ? 分かるけど想像ができないというか……作法的なことが分からないよ。まあ、鳩山君も分からないはずだし……お互い探り探りって感じかな? 鳩山君は男の子だし、多少の知識はあるよね? 経験はないだろうけど、そういう動画とかは一度ぐらい見たことあるでしょ? 私も漫画ぐらいならちょっとだけ……。
待って、待って、本当にするの? そりゃまあ、したいんだけどさ、さすがに怖くなってきたよ。覚悟を決めたつもりだったけど、肩透かしを食らったせいで覚悟が薄れたというか……。
「んー、じゃあ俺の親に頼んで車出してもらおうか?」
「く、く、車……!?」
車の中でするの!? たしかにそういうプレイがあるらしいけど、私達はまだ高校生だよ? ましてや親の前だなんて……。
「遠慮しなくてもいいよ? 俺の親はそういうの気にしないタイプだし」
気にしないの!?
……ははっ、さすがに勘違いだよね。うん、普通に考えてそうだよ。テンパりすぎて変な勘違いしてたよ。ただ送迎してもらうだけね、うん。
……いやっ、それもおかしいでしょ! ヤるために送迎してもらうっておかしくない!? 親にラブホまで送ってもらうとかありえないでしょ? それと変わんないって! というか、まだ覚悟が決まってないよ。そりゃいずれはお義母様を籠絡するつもりだけど、まだなんの準備もできてないんだよ? こんなノープランで会ったところで、外堀は埋めれないよ。
「く、車はさすがに……それにお義母様の前で……」
「ハハハ、大歓迎だと思うよ? 可愛い娘が欲しいって、いつも言ってるし」
「む、義娘っ!?」
もう埋まってました! 母親という一番堅固な砦が既に壊れていました!
……ってことは会い得? 下手に奸計をめぐらせるより、素の状態で接したほうが良い感じ? よ、よしっ……。お義母様に会うのは緊張するけど、その後のイベントの方がもっと緊張する。だからこれぐらいはアッサリと乗り越えないとね。
今日は大きく進展する日だね。お義母様への挨拶と婚前交渉、この二つを成功させれば結婚は確定。席替え間近で朝から憂鬱だったけど、まさに地獄から天国だね。そう考えると今から行われるのは、天国の階段を登るための試練ってところかな。じゃあ緊張しててもしょうがないね。




