第132話 初(ではない)すれ違い
帰り道、公園に寄って話し合いを始めた。ボール遊びはおろか鬼ごっこでも苦情がくる時代だから、閑古鳥が鳴いてるね。都合がいいや。
「鳩山君、一応確認するんだけどさ……私のこと面倒な女とか思ってない?」
「え? 別に思ってないけど?」
うん、鳩山君ならそう言うだろうね。内心では面倒だと思っていても、絶対口にはしないよね。
「じゃあなんで気が変わったの?」
「……? どういうことだい?」
私の質問の仕方が悪かったみたいで上手く通じてないみたい。今のは『この前までは、私を自分好みに染めて自分だけの物にしようとしてたのに、急に投げやりになったのはなんで?』って意味なんだけど、分かりにくかったかな?
「鳩山君、さっき言ったよね? 『髪型とか、俺の好みに合わせる必要はないよ』みたいなことをさ」
「そりゃまあ……キミの髪だし」
私の髪だからこそなんだけど? 鳩山君を喜ばせられないんだったら、こんな物なんの価値もないよ。
「私が可愛い髪になったら、鳩山君も嬉しいでしょ?」
「そりゃ嬉しいさ。ただでさえ可愛いのに、これ以上可愛くなったら毎日がより楽しくなるよ」
ほらほらほら、鳩山君は私のこと大好きなんだよ。私の勘違いとかじゃないよ、私を生きがいにすることで面倒な学校を乗り越えるって言ってるんだから。
……じゃあなんで大好きな私を手放そうとするの?
「またそういうこと言って……私なんて全然可愛くないのに……」
「キミはまだ自分の魅力に気付かないのかい?」
「……鳩山君が物好きなだけだって」
「何を言ってるんだい? 立て続けに告白されてるじゃないか」
「だからそれは嘘告で……うー……何を言っても無駄かな……」
おかわり欲しさについつい否定しちゃう。私としては永遠にこのやり取りを繰り広げたいけど、そろそろウザがられそうで怖いな。
「鳩山君の要望通りメッシュを増やしたけど、本当に似合ってる?」
「要望……?」
「え? 何?」
「いや、なんでも……。うん、似合ってるよ。おしとやかさと活発さが兼ね備えられてて無敵だね」
「もー、褒めすぎだって」
メッシュごときで活発感が出るかどうかはさておき、ここまで褒めてもらえると髪をイジったかいがあったよ。髪を痛める覚悟でブリーチまで施したけど、大正解だったみたい。
「次はどういう変化がほしい?」
「だからそれはキミが自分で……」
「貴方の意見を聞きたいの! 好みを聞きたいの!」
「…………前にも言ったかもしれないけど、俺はオシャレに疎いんだよ」
分からないなりに意見を出してほしいって言ってるのに、なんで分かってくれないんだろう? 意地悪だね、意外と。
「どうしても俺の意見を取り入れるっていうなら、少し時間がほしい」
「……? どういうこと?」
「俺的にはどんなキミも素敵だけど、アドバイスを送るなら知識をつけてから送りたいんだ。だから勉強する時間をくれないかな?」
「……それってその……そういうことだよね?」
「ああ、そういうことだよ」
そっかぁ、そういうことかぁ……。私の全てを受け入れてくれる上に、私のためにプライベートの時間を割いて猛勉強してくれるんだ。流行なんてコロコロ変わるわけだし、勉強に終わりはないよね? つまり一生私の側でコーディネートをし続けるという解釈でいいんだよね? 『そういうことだよ』って言ってくれたし。
よしっ、じゃあ追加でおねだりしてみようかな。
「髪だけじゃなくて私服についても意見がほしいなぁ」
「……女の子の服なんて分からないことばかりだけど、頑張って勉強するよ」
私のこと好きすぎるでしょ、鳩山君。
ふぅ、よかった。見放されたもんだと思って不安になってたけど、私のことを真剣に愛しているがゆえの立ち振舞だったんだね。いやぁ、こじれなくてよかったよ。すれ違いを防ぐためにも本音を話し合うのって大事なんだね。今日まで一度もすれ違わずにやってこれたから、話し合いの重要性に気付いてなかったよ。




